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海外M&Aに関する契約その3(M&Aの契約及びクロージング)

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こんにちは、弁護士の外海周二です。

海外M&Aに関する契約第3回の今回は、M&Aで締結される最終契約についてお話しします。

M&Aで締結される契約

M&Aにおいて、デューデリジェンスを経て当事者が取引を実施することを決定した場合、法的拘束力を持つ最終契約が締結されます。株式を買収するケースでは、旧株主(売主)と買収企業(買主)との間で株式売買契約が締結されます。

株式売買契約では、株式譲渡の実行と売買代金の支払いを行う、いわゆるクロージング(Closing)は、契約締結日ではなく、そこから一定期間を空けてクロージング日(Closing Date)を設定し、そのクロージング日に行われることが一般的です。

クロージングは、一定の前提条件が満たされた場合に限り実行されるものと規定され、売主、買主が一定の事実について表明保証する内容が真実であることも、前提条件の一つとなります。この中で、特に売主は、買収対象となる株式の完全な所有権を有していることや、対象会社の会社の現況等について表明保証することになります。デューデリジェンスの過程で発見された問題点につき、売主の表明保証の対象外にするなどの調整もなされます。売主の表明保証事項が買収後に真実でなかったことが判明した場合には、売主は、買主に対し損害賠償する義務を負います。

また、契約締結日からクロージング日までの間に、売主が、株主としての権利を行使して対象会社の価値が下がるようなことを行ったのでは、売買の目的が達成されないため、売主は、クロージング日までの間、勝手に重要な取引を行わない、資産の売却などを行わない、といった内容の誓約をすることになります。

さらに、両当事者は、クロージング日において、株式譲渡を有効なものとし、株主が有効に買主に移転するために必要な全ての手続を完了している必要がありますので、社内手続(株主総会決議など)を完了すること等が誓約事項になると共に、クロージング日における交付文書として、決議を証する議事録や株主名簿書換請求の書面など、対象国の会社法に基づき求められる手続に必要な書類を用意することも、クロージングの前提条件になります。

株式売買契約では、仮にクロージング後に表明保証違反等の契約違反があったとしても、契約を解除して株式を売主に返すということは通常想定せず、解除権はクロージング前に限定されることが一般的です。クロージング後の買主の保護は、もっぱら損害賠償によってなされることになります。そしてこの場合も、損害賠償額の上限を定めたり(例えば代金の50%など)、賠償請求期間の制限を設けたりすることがあります(クロージング後1年以内など)。こうした条件は、売主と買主との交渉になりますので、どのような条件で合意するかはケースバイケースです。

なお、買主が対象会社の株式の一部を買収する場合には、他の既存株主との間で株主間契約書を締結することが多いです。その場合、他の既存株主と買収企業との関係は、合弁ということになりますが、株主間契約書の内容は、第4回~第6回でお話ししました合弁契約書の内容と類似しますので、そちらをご参照ください。

クロージング

M&Aのクロージングは、クロージング日において、対象会社のオフィスや法律事務所などに関係当事者が集まって行われることが一般的です。その際、契約書においてクロージング時に交付するものとされる書類を双方が持参し、それを交換します。支払いについては、小切手を用いる場合には、それもその場で交付します。振込みの場合は、同時履行を確保するために、買主がエスクロー口座という中立の預り金口座に代金をいったん振り込み、相手方から必要な書類等を受け取った後にその口座から売主にお金が支払われるという手順を取ることもあります。

まとめ

9回にわたって連載させていただきました海外取引に関する契約書の解説は、今回で終了となります。少しでも皆様の今後のお仕事の参考になれば幸いです。

▼バックナンバー
第1回 販売代理店契約その1
第2回 販売代理店契約その2
第3回 製造委託契約
第4回 外国企業との合弁契約その1(合弁契約とは)
第5回 外国企業との合弁契約その2(合弁会社運営に際しての法的問題点)
第6回 外国企業との合弁契約その3(合弁解消の方法)
第7回 海外M&Aに関する契約その1(海外M&Aの概観)
第8回 海外M&Aに関する契約その2(M&A実行に至るまでのプロセス)

<著者プロフィール>

外海法律事務所 弁護士 外海周二氏

東京大学法学部卒。2003年弁護士登録。米国ボストン大学ロースクールにてLL.M(法学修士)を取得し、米国ニューヨーク州弁護士の資格を保有。シンガポールの現地法律事務所で1年間勤務した経験を持ち、日本企業の海外進出支援及び海外取引契約の作成などに数多く携わっている。
http://www.tonogai-law.com/

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