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海外取引契約の実務 ~製造委託契約(契約条項に関する注意点)~

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こんにちは、弁護士の外海周二です。

今回は、日本企業が海外メーカーに製品の製造を委託する場合に締結する、製造委託契約に関する法的な留意点についてお話ししたいと思います。

製造委託契約において規定される条項

製造委託契約は、日本企業が、賃金の安い開発途上国の製造企業に自社製品の製造を委託する場合によく使われます。
相手企業が自ら開発、製造している製品を単に購入するだけの売買契約とは異なり、委託者が仕様を決定して製造を指示すること、製品に委託者の商標を使用させることなどの特徴がありますので、売買契約とは違った留意点があります。

製造委託契約は、契約期間の定めのある基本契約を締結した上で、必要なときに個別に発注書を発行して必要なだけ製造を委託するというのが一般的です。

基本契約である製造委託契約には、個別契約が成立する要件(注文書に対する請書発送時など)、引渡条件(Incotermsに基づくC.I.Fなどの各種条件)、受入れ検査の実施、支払条件、品質保証、製造物責任、商標の利用許諾、知的財産権に関する規定、立入り検査の実施、契約期間、解除条項、秘密保持条項、その他一般条項が考えられます。

知的財産権に関する規定

製造委託契約では、委託者は、受託者に対し、自らの商標を製品に付けて製造するよう委託することが一般的です。そうすると、委託者は、受託者に対して商標利用に関する許諾をすることになります。

委託者としては、商標利用の許諾に際し、製品の製造を目的とする場合に限って使用することができるとする利用目的の制限を設け、それ以外には絶対に使用されないようにしておく必要があります。また、当該商標の商標権が委託者に帰属することを明らかにし、受託者が無断でその商標及び類似商標を現地国その他の地域で出願をしてはならないようにします。

製品の仕様に関し、商標以外の知的財産権(特許権、意匠権など)がある場合にも、上記と同様にその管理は厳格にする必要があります。
また、製造過程において生じた知的財産権の帰属についても、全て委託者に帰属する、委託者と受託者との共有とする、といった規定を設けておいた方がよいと思います。

最後に、受託者の国において知的財産権侵害を主張され、第三者との間で紛争が生じた場合には、受託者はただちに委託者に通知し、知的財産権を保護するために必要な協力をする旨の規定を設けておくと安心です。

また、受託者が委託者の知的財産権を無断で使用して勝手に製品を第三者に販売するという事態が生じることがありますが、委託者に、受託者の工場を立入り検査する権限を持たせることは、有効な対策となります。

製造物責任に関する規定

委託者が製品を消費者に販売する場合に、製品の瑕疵などにより人の生命、身体又は財産に被害を生じさせると、被害を受けた第三者に対して、製造物責任法(Product Liability Law、”PL法”)に基づく責任が発生します。
この責任は、委託者自身が製造をしておらず、製品の瑕疵が受託者の過失によるものであったとしても、委託者は、製品を海外から輸入している限り、輸入者の責任として、これを免れることができません。

委託者が第三者に対して製造物責任を負った場合に、製造委託契約における瑕疵担保責任の有効期間内であれば、受託者に対して瑕疵担保責任を問うことができますが、製造物責任は、最大で、製造物を引き渡した時から10年間存続する可能性がありますので、委託者が第三者から製造物責任を追及された時には、受託者に対する瑕疵担保責任が消滅していることが十分に考えられます。

そこで、製造委託契約においては、委託者が製造物責任に基づく損害賠償をした場合に、その負担をどのように分担するかを決定する規定を設けておく必要があります。
基本的には、製造に関わっていない委託者に特段の帰責事由がない限りは、受託者が委託者の負担した損害賠償額を全額補償するという内容でよいと思います。
委託者が第三者との間で製造物責任に関する紛争が生じた場合に、受託者が紛争解決のために必要なあらゆる協力をする、という規定も入れておくと安心です。

瑕疵担保の規定で十分と考えて製造物責任に関する規定を設けていないと、委託者は、思わぬ損害を被ってしまうことがあるので注意が必要です。

まとめ

以上のように、製造委託契約は、日本企業にとって比較的身近な海外取引契約ですが、自社の知的財産権が流出するリスクや、製品の瑕疵により第三者から責任を追及されるリスクをどのようにコントロールするかという観点から、契約内容を慎重に検討する必要があります。
今回の記事をご参考にしていただければと思います。

次回からは、3回に分けて、合弁契約についてお話ししたいと思います。

▼バックナンバー
第1回 販売代理店契約その1
第2回 販売代理店契約その2

<著者プロフィール>

外海法律事務所 弁護士 外海周二氏

東京大学法学部卒。2003年弁護士登録。米国ボストン大学ロースクールにてLL.M(法学修士)を取得し、米国ニューヨーク州弁護士の資格を保有。シンガポールの現地法律事務所で1年間勤務した経験を持ち、日本企業の海外進出支援及び海外取引契約の作成などに数多く携わっている。
http://www.tonogai-law.com/

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