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海外取引契約の実務 ~販売代理店契約その2(契約条項に関する注意点)~

      2018/11/06

こんにちは、弁護士の外海周二です。

今回は、販売代理店契約の個別の条項に関して、法的に問題となる事項について掘り下げて検討したいと思います。

販売代理店契約の解約が制約される場合

販売代理店契約は、ある程度長期間にわたる契約関係の存続を想定した継続的契約であり、販売店は、販売権を与えられた商品を販売するために、人員の確保や販売促進の施策などに、一定の投資を行います。
したがって、これまで販売代理店契約が毎回更新され、次も更新されると期待して投資したにもかかわらず、突然契約が打ち切りになってしまうと、想定外の損失を被る可能性があります。そのため、長年更新し続けていた販売代理店契約を、契約期間満了とともに更新しなかった場合に、販売店との間でトラブルになることがあります。

よくあるのが、これまで地元企業に独占販売権を与えていた国に自社の販売会社を設立し、地元企業との販売代理店契約を更新しないケースです。あるいは、別の企業に販売店契約を切り替えるために、従来の販売店との契約を終了させるケースもあります。いずれも、従来の販売店からすれば、これまでの取引関係を切られることは、企業としての死活問題ですので、かなりの抵抗をされることが予想されます。

実際に、裁判で紛争となることもあり、その場合に、代理店から、解約が無効であると主張されたり、解約に伴い一定期間の営業補償金を請求されることがあります。過去の裁判例では、期間1年の自動更新条項付きの特約店契約を28年間継続した後、契約で認められた30日前の解約予告をもって契約を解約したケースで、解除権の行使には、取引関係を継続しがたいような不信行為の存在等やむを得ない事由が必要であるとして、解約が無効とされたものがあります(東京高裁平成6年9月14日判決)。

契約で認められている解約権が上記の裁判例のように制限されるのは、一般的には、契約の継続期間がかなりの長期にわたっており、販売店が、契約が当然に更新されるものと期待することが合理的であると認められるような場合です。
したがって、販売店を使って自社製品を海外で販売しようとする企業としては、契約更新を自動更新ではなく合意更新にしたり、解約をする場合でも相当な期間を置いて解約を予告するなど、販売店にとって不意打ちにならないようにすることが重要と考えます。

販売店の事業活動の制限が禁止される場合

販売代理店契約では、「販売地域」が指定されるなど、販売店による製品の販売活動に一定の制約が課されることが一般的です。このような販売店の事業活動を制限するような契約内容が許されるのかについては、独占禁止法との関係で検討が必要になります。

販売店、特に、一定地域における製品の販売を独占している総代理店の事業活動を不当に制限すると、その地域の市場における競争が阻害される可能性があるので、そのような取引制限は、独占禁止法によって禁止されます。

例えば、販売店による販売価格を製品供給者が拘束することは、基本的に許されません。一度販売店に販売した製品を、販売店がいくらで再販売するかは自由であり、価格拘束は、市場における競争を直接的に阻害する行為として、禁止されています。

競合製品の取扱いを制限することについては、製品供給者がその地域の市場で有力な事業者でない限り、あまり問題にはなりません。ただし、契約終了後においても競合製品の取扱いを禁止するといった場合は、それが秘密情報の流用防止など正当な理由があり、それに必要な範囲内での制限でない限り、原則として独禁法違反となります。

販売地域を一定の範囲に制限することは、販売代理店契約では一般的ですが、基本的には、製品供給者がその地域の市場で有力な事業者であり、販売地域を制限することによって市場において競争者との競争が妨げられ、販売店が価格支配力を持つことになるような場合でなければ、あまり問題にはなりません。

このように、独占禁止法との関係では、販売店による事業活動の制限が、それが市場における競争を阻害するかどうかが問題になりますので、競合製品が流通している地域で、日本企業が新規参入しようとして販売店を置くような場合では、再販売価格を指定するような露骨なことをしない限りは、問題は少ないと思います。

以上は、日本の独禁法の考え方ですが、海外で販売代理店契約を締結する場合には、その地域の競争法に違反しないことが必要です。個々の国の競争法についてはここでは言及しませんが、日本の独禁法の考え方は、参考になると思います。

まとめ

以上のように、今回は、契約で定めた内容が、その規定どおりに作用しない場合として、販売代理店契約の解約が制約される場合と、販売店の事業活動の制限が禁止される場合について検討しました。契約で合意すれば何でもできるわけではないということは、販売代理店契約を作成する場合に頭に入れておいていただければと思います。

次回は、製造委託契約についてお話ししたいと思います。

▼バックナンバー
第1回 販売代理店契約その1

<著者プロフィール>

外海法律事務所 弁護士 外海周二氏

東京大学法学部卒。2003年弁護士登録。米国ボストン大学ロースクールにてLL.M(法学修士)を取得し、米国ニューヨーク州弁護士の資格を保有。シンガポールの現地法律事務所で1年間勤務した経験を持ち、日本企業の海外進出支援及び海外取引契約の作成などに数多く携わっている。
http://www.tonogai-law.com/

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