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海外M&Aに関する契約その1(海外M&Aの概観)

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こんにちは、弁護士の外海周二です。

今回から3回に分けて、日本企業が海外企業に対して買収や出資をするなどの、いわゆる海外M&Aを行う場合に締結する契約についてお話ししたいと思います。

1回目の今回は、海外M&Aにはどのようなものがあるか、そしてどのようなプロセスでM&Aを行うかについて、概要をご説明します。

▼目次

海外M&Aのパターン

日本企業が海外M&Aを行うパターンとしては、まず、外国企業の株式を買収して子会社化するケースがあります。この場合、株式の100%を取得する場合と、一部だけを取得して地元企業や他の外国企業と合弁を組む場合とがあります。

また、外国企業が新規株式を発行し、日本企業がそれを引き受けることにより出資するという形で外国企業の株式を取得する場合もあります。

それ以外にも、日本企業の現地子会社が現地企業から事業譲渡を受けるということもM&Aの一つのパターンとして考えられますが、もともと現地子会社を持っている企業でなければ、上記のように株式を取得する方法が一般的だと思います。

海外M&Aのプロセス

外国企業に対するM&Aは、売り手と買い手が何らかの接点を持ち、トップ同士で合意に達するということもあれば、M&A仲介事業者による紹介をきっかけに行われるケースもあります。

いずれの場合でも、M&Aを完了させるまでに行うべきプロセスは多いので、いわゆるFinancial Advisor(FA)がプロセス全体を取り仕切ることが多く行われています。

M&Aに際しては、対象となる会社が買収等に値する会社であるかどうかを精査する必要があるため、法務、会計、ビジネスの専門家による会社の査定、いわゆるデュー・デリジェンスが行われることが一般的です。

この結果を受けて最終的に当事者がM&Aを実行するかどうかを決定するわけですが、デュー・デリジェンスを行う前に、当事者間で基本合意書を交わし、独占交渉権を認めることも多く、この場合、売り手は、一定期間又は一定の条件が成就するまでは、他の当事者と買収等の交渉を行うことはできません。

デュー・デリジェンスの結果、M&Aが実行されることになった場合には、株式売買契約や、株式引受契約等が締結されます。この場合、契約締結日から一定期間後を実行日とすることが多く、実行日において、当事者間で、必要な手続を履践したことを証する文書等を交付し、代金の支払いを行う、いわゆるクロージングが実施され、M&Aは完了します。

海外M&Aに必要な契約

まず、M&Aを検討するにあたり、当事者間で「秘密保持契約書」を締結することが一般的です。

その上で、買収に必要なデュー・デリジェンスをその後行うことを前提として、買い手が売り手に対して、買収の意向を表明する「Letter of Intent(LOI)」を差し入れたり、両者間で「Memorandum of Understanding(MOU)」などの名称で基本合意をして、一定期間買い手に独占交渉権を与えるなどの手当を行うことがあります。
その際、買い手と売り手との間で、その時点において合理的と考えられる取引金額について合意することがありますが、多くの場合、それは拘束力のない合意として扱われます。

デュー・デリジェンスが終了し、M&Aを実行することになれば、株式を売り手が買い手に売却するための「株式売買契約」や、会社が新株を買い手に発行するための「株式引受契約」が締結されます。
この場合、非上場会社において買い手が100%の株主にならない場合には、既存株主との間で「株主間契約」が新たに締結されたり、既存の株主間契約の当事者たる地位を売り手から承継することが多いです。

次回は、海外M&Aの実行に至るまでのプロセスとして、LOIやMOUといった名称で締結されることのある基本合意書及び法務デュー・デリジェンスについて、海外M&Aならではの注意点も交えてご説明いたします。

▼バックナンバー
第1回 販売代理店契約その1
第2回 販売代理店契約その2
第3回 製造委託契約
第4回 外国企業との合弁契約その1(合弁契約とは)
第5回 外国企業との合弁契約その2(合弁会社運営に際しての法的問題点)
第6回 外国企業との合弁契約その3(合弁解消の方法)

<著者プロフィール>

外海法律事務所 弁護士 外海周二氏

東京大学法学部卒。2003年弁護士登録。米国ボストン大学ロースクールにてLL.M(法学修士)を取得し、米国ニューヨーク州弁護士の資格を保有。シンガポールの現地法律事務所で1年間勤務した経験を持ち、日本企業の海外進出支援及び海外取引契約の作成などに数多く携わっている。
http://www.tonogai-law.com/

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