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外国企業との合弁契約その3(合弁解消の方法)

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こんにちは、弁護士の外海周二です。

合弁契約3回目の今回は、パートナーとの合弁を解消する場合の問題点や解決方法について、詳しくご説明します。

▼目次

合弁解消の困難性

合弁事業は、いったん開始されると、これを解消することは容易ではありません。なぜなら、投下資本を回収することなく事業を中止すること対しては、合弁相手の抵抗が予想されることに加え、株式の持分を相手方に引き取ってもらうことや、購入してくれる第三者を探すことが一般的に困難だからです。非上場企業である合弁会社の株式は、その処分にも困ることが多いのです。

そのため、合弁契約では、一定の場合には合弁を解消するという条項をあらかじめ設けておくことが一般的です。合弁解消事由としては、例えば、3年連続の赤字、事業のキーパーソンの死亡、合弁当事者による重大な契約違反などがあります。
また、合弁の解消には、株式を第三者に売却することで合弁から抜けるという場合も含まれます(この場合、株式を購入した第三者が既存の当事者と合弁を継続します)。

以下、それぞれの場合について、合弁契約でどのように取り決められるべきなのか、見ていきたいと思います。

株式を第三者に譲渡する場合の取り決め

優先的に持分を取得できる権利

まず、合弁当事者が、その持株を第三者に売却して合弁事業から抜けたいと考えることがあります。しかし、このようなことを自由に認めると、この企業だからこそ事業を共同で行おうと思っていた相手方にとっては、大きな不利益となります。
したがって、合弁契約では、まず、当事者による株式譲渡は相手方の同意なく行うことはできないという原則を規定することが通常です。その上で、一方当事者が持株を第三者に売却したいと考える場合には、まず合弁の相手方に同じ条件で売却を打診しなければならないという規定を設けることが一般的です。これは相手方から見れば、優先的に持分を取得することのできる権利ということができます。

売却参加権/タグアロング(Tag-Along)

相手方がこの権利を行使しなかった場合には、持分を売却したい当事者は、株式を第三者に売却することができるようになりますが、この時、相手方に、自分の持株も一緒に売却するよう求める権利を認める場合があります。これは、売却参加権ともタグアロング(Tag-Along)の権利とも呼ばれるもので、合弁パートナーが脱退するのであれば自社も合弁を続ける意味がないので一緒に抜けたいと考える当事者の利益を実現するためのものです。

強制売却権/ドラッグアロング(Drag-Along)

さらに、持分を第三者に譲渡する当事者に、合弁相手に対してその持分も一緒に売却することを強制できる権利を認める場合があります。これは、強制売却権ともドラッグアロング(Drag-Along)の権利とも呼ばれるもので、相手方からすれば、強制的に合弁から追い出されることになるので強力な権利です。これは、一般的に、株式の一部だけでは買い手がつきにくいことから、合弁の出口戦略として、合弁企業全部を第三者に売却できる道を用意しておくという意味があります。このような強力な権利は、合弁のイニシアチブを握る主要株主にのみ認められるケースが多いです。

上記の権利のうち、売却参加権は、売却しようとしている当事者の相手方の権利、強制売却権は、売却しようとしている当事者自身の権利である点が大きく違いますので、混同しないよう注意が必要です。

合弁解消時の株式の帰属についての取り決め

合弁当事者がその持株を第三者に売却したいと考える場合のほかに、当事者間で合弁を解消すべき事由が規定されている場合、どのようにして解消されるのでしょうか。

まず、赤字が続く等により合弁事業そのものをやめる場合には、単純に会社を解散、清算して残余財産を当事者に分配するということになります。

一方、合弁当事者による重大な契約違反など、この相手と合弁を続けることができないとして契約解除をしたいような場合には、持ち合っている株式を処理する取り決めが必要です。

この場合、まず、一方当事者が他方当事者の株式を購入するということが考えられます。契約違反が解除の理由となっている場合には、違反当事者の持株を他方当事者が安く購入する権利が与えられたり、違反当事者が他方当事者の持株を高く購入する義務を負ったりする決め方もあります。

また、デッドロック(前回記事ご参照)がどうしても解消しない場合など、特定の当事者に帰責事由がない場合などには、互いが相手の持株を取得したいと考える場合に入札を行い、高い金額を提示した方がその価格で相手の株式を取得できるとしたり、互いに持株を相手に売りたいと考える場合に入札を行い、低い金額を提示した方がその価格で持株を相手に売却できるとする、という方法もあります。

もちろん、両者が協力して全株式を第三者に売却する選択肢も持っておけば、よい買主が現れて双方が投資を回収できることもあります。

いずれにしても、合弁契約においては、あらゆる事態を想定し、いざという場合に当事者の被る損失が最小化できるように手当しておくことが重要です。

まとめ

以上のように、合弁解消というネガティブな想定に基づく契約条項は、前向きな気持ちになっている契約締結時には、曖昧にしたまま議論が避けられることがありますが、紛争が先鋭化する合弁解消時の処理こそ、冷静な時にしっかり規定しておくことが重要です。

次回からの3回は、海外M&Aに関する契約についてお話ししたいと思います。

▼バックナンバー
第1回 販売代理店契約その1
第2回 販売代理店契約その2
第3回 製造委託契約
第4回 外国企業との合弁契約その1(合弁契約とは)
第5回 外国企業との合弁契約その2(合弁会社運営に際しての法的問題点)

<著者プロフィール>

外海法律事務所 弁護士 外海周二氏

東京大学法学部卒。2003年弁護士登録。米国ボストン大学ロースクールにてLL.M(法学修士)を取得し、米国ニューヨーク州弁護士の資格を保有。シンガポールの現地法律事務所で1年間勤務した経験を持ち、日本企業の海外進出支援及び海外取引契約の作成などに数多く携わっている。
http://www.tonogai-law.com/

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