海外マーケティング支援を行っている合同会社トロの芳賀 淳です。
商談の準備、ばっちりですか。実のある商談とするべく、海外出張ならではの作業にも注意を払いましょう。
時間の読みは結構外れる(特に新興国)
1.商談先への移動
商談先が都市部のオフィスビルに入居している、という出張ばかりではありません。電車や地下鉄などの公共交通機関を利用するにせよ、想定より移動時間がかかることを前提に商談先に向かいましょう。
公共交通機関を利用できない地方の工場などを訪問する場合は、終日運転手付きレンタカーを手配するのがよいでしょう。
1) 公共交通機関(電車、地下鉄、バス)
前日までに宿から商談先までの移動経路を確認しておきます。
頻繁に移動する場合は終日割引券や3日割引券などを予め購入しておくとよいでしょう。当日移動しながらスマホで位置情報を確認することは余りスマートではありませんね。「その土地に不慣れである」というメッセージも周囲に発してしまいます。
2)運転手付きレンタカーやタクシーでの移動
英語が通じにくい所に行く場合が大半と思います。
そういう時に備えて朝から晩まで、何時にどこの会社を訪問するか、という行程表を作成して印刷しておきます。
事前に手配するレンタカーの場合は行程表を送付しておき、運転手に1日の移動行程を理解してもらいます。タクシーの場合は「ここに行きたい」ということで会社と住所を見せます(大概、「見せてくれ」ということで紙は一瞬運転手の手に)。行程表には電話番号も必ず記載します。新興国の工業団地内に行く場合には、ほぼ確実に運転手は迷うので、迷ったときに備えて訪問先の電話番号も記載しておきます。迷ったときには運転手から訪問先に電話をかけて、行き方を確認するようにします。
車で迷子になる時間も読み(1訪問先当たり20-30分は余裕を持つ)、移動したいものです。アポイントの時間に関しては、都市部のオフィスビルの場合は日本での時間感覚と似たものでよいでしょう。車での移動の場合はかなり大らかな時間軸になることが多いです。しかし約束の時間に遅れそうな場合にはなるべく早めに訪問先に電話連絡しましょう(xxx付近で渋滞にはまっています等の理由と共に連絡)。
2.商談先にて
商談先に着きました。次の準備はできてますか?出る前に再確認しておきましょう。
1) 資料
英語で作成した資料は必要部数ありますか?
プレゼンで使う資料のPDFファイルはノートPCやタブレットに入っていますか?
場合によっては予めデータを商談先に送付しておくこともありますね。
2) 安全保障貿易管理(機微な情報の非居住者向け開示)
管理の対象は貨物だけでなく情報も含まれます。今回の出張で使う情報が安全保障貿易管理の対象になる場合は事前に経済産業大臣の許可を得ておきます。
安全保障貿易管理について(経済産業省、この資料のP13-P16は必読です)
https://www.meti.go.jp/policy/anpo/seminer/shiryo/setsumei_anpokanri.pdf
安全保障貿易管理のHP(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/policy/anpo/
3)秘密保持契約(NDA=Non Disclosure Agreement)
商談先によっては、商談前に秘密保持契約(NDA)を結んでからでないと具体的な情報を含んだ商談を行わない、という場合があります。商談前にこうした手続きを終えておきましょう。双方の参加者が書類に署名することで契約は成立します。
3. 商談中、商談後
1) 商談は熱のこもったものになるでしょう。双方がきちんと相手の主張を理解できるよう、ホワイトボードなどを用意してもらいましょう。ややこしい説明では絵図を使う方が効果的なこともあるので、大いに活用しましょう。
2) 先方がホワイトボードなどを用意できない場合に備えて、A4サイズのミニホワイトボードをディスカウントショップなどで購入し、出張時に持参することも考えます。それもない時は紙を使っての筆談も交えます。何でもありで商談を進めます。
3) ホワイトボードには今回の商談議題を書きます(価格とか、追加発注の生産枠確保とか)。そうした議題を1つずつ話し合い、合意した内容には結論を書いてゆきます。商談終了時にはホワイトボードに全ての議題とその結論が書かれている(はずな)ので、それを写真に撮って印刷し、参加者全員が合意した旨の署名をしておくとよいでしょう。それだけでは法的拘束力はないので、後日正式な議事録として作成し、参加者には再度署名してもらいます。
まとめ
商談先へは余裕を持って移動しましょう。車での移動では運転手に一日の行程表を渡しておくとよいでしょう。行程表には時刻、行き先住所、行き先電話番号を必ず記載しておきます。商談を始める前に、安全保障貿易管理、守秘義務契約、資料をきちんと手配します。商談ではホワイトボードなども活用し、双方の理解を確かめます。全ての議題と結論を参加者が確認し、早めに正式な議事録を作成しましょう。
次のシリーズは、外国企業との交渉術(英語表現など)です。
▼バックナンバー
第1回 【海外出張、ここに注意】出発から機内まで
第2回 【海外出張、ここに注意】現地到着、入国、やれやれ
第3回 【海外出張、ここに注意】空港からの移動、宿での確認、外出は身軽に
【プロフィール】
合同会社トロ 代表社員 芳賀 淳(はが あつし)
大手総合電機、精密機械メーカーにてベトナム他での海外販路開拓や現地法人設立などの海外業務に携わった後、合同会社トロを設立。豊富な海外業務・貿易実務経験を活かしたコンサルティングサービスを、ジェトロや中小機構などの公的支援機関および民間企業向けに提供している。
URL: https://sub.toro-llc.co.jp/