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【現地法人における人材マネジメント コミュニケーション2】人前で部下を叱ることはタブー?

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海外マーケティング支援を行っている合同会社トロの芳賀 淳です。

X国では、人前で部下を叱ってはいけないと聞いた。Y国では、お客さんのいる会議で部下を叱ったり指導することは何らおかしくない、と聞いた。

それって、所変われば品変わる、ですか? はい、その通りです。国(社会)や文化の違いで叱り方も考えなければなりません。もちろん、X国の人だからと杓子定規に見なす必要はなく、X国社会ではそのような価値観が強いという理解が重要です。

 部下を叱るのも上司の仕事、さてどうする

 アジアの国々では人前で部下を叱るのはタブー。その認識は正しいと言えます。しかし人前でなければ直接厳しい言葉で叱責してよいのか、それともあくまで婉曲に伝えるのがよいのか、国や社会によって好ましい方法が異なります。

参考図書として、1)異文化理解力(エリン・メイヤー著 英治出版) 2)経営戦略としての異文化適応力(宮森千嘉子・宮林隆吉共著 日本能率協会マネジメントセンター)を挙げます。いずれも様々な切り口で異文化との接し方を説明しているので、参考になる箇所が多々ある書籍です。

その中から噛み砕いて、いかにして部下に言いにくいことを言うか、ということをお伝えします。

 アジア・中東・中南米地域

これら地域は、物事をぼかして伝える、空気を読む、社会です。こうした国や地域では、直接指摘することは好まれません。もちろん叱責を含め、伝えにくいことは1対1で行うのが基本です。もし人前で叱責したりすると、恨まれる、あるいは叱責された人が辞職を申し出る、ということにつながる可能性があります。伝えにくいことは少しずつ何度も伝え、当人が改善あるいは成長する気長さも求められます。場合によっては上司の部屋で伝えるよりも、ランチやお茶に誘ってさりげなく伝えることも有効です。飲み物や食事に誘うのは日本人にはわかりやすい方法ですね。

ただし、現地人同士の間では厳しい伝え方も是とされることがあります。その社会が階層的(ボスの言い分が絶対)であれば、現地人管理者による部下への直接的な物言いが許されることもあります。こういう状況では、日本人はあくまでも現地人管理者を経由したコミュニケーションの黒子に徹することが求められます。

 アングロサクソン系地域(豪を除く)

はっきり物をいうイメージの強い英米系ですが、意外とオブラートに包んだ物の言い方をする人が多い面も持っています。伝えにくいことも前向きな言葉や表現を使って伝える、という神業?も見られます。良いことと悪いことの双方を伝えなければならない時、まず良いことを伝え、次に悪いことを伝える、ということを好みます。場合によってはジョークを交えながら言いにくいことを伝えます。

 欧州大陸地域(豪を含む)

欧州大陸ははっきりと直球で悪いことも伝える社会と言えます。特にゲルマン・北欧系ははっきりとした物言いをする人が多いので、その言葉通りに受け取ってかまわない社会です。こうした社会で仕事をする場合ははっきりと思った通り伝えればよいのか!と思いがちですが、あくまでこちらは外国人なので多少は婉曲的な言い方をする方がよさそうです。

欧米の中では空気を読む文化と言えるラテン系(フランス、イタリア、スペイン)も、意外とはっきり伝える社会です。

アジアにもはっきりした物言いの人はいる、北欧にもぼかした物の言い方をする人もいます。しかし社会全体では上で述べたような傾向があるということを理解し、部下の成長を後押しし、よいチーム作りに励んでください。

次回は、コンプライアンスについてお話します。法令遵守に対してどのような配慮をすればよいでしょうか。従業員をどこまで縛れるのか、何を意識付けすればよいのか、非常に難しい事項です。

 まとめ

どういうコミュニケーションの特徴を持った社会であるかによって、伝えにくいことを直接言うのか、ぼかした言い方にするのかを選びます。アジアでは1対1で部下に悪い点などを伝え、欧州大陸地域ははっきり伝えても特に問題にならない社会です。英米では伝えにくいことをジョークなどに交えて伝える社会なので、どこの国・地域で仕事をするかによってコミュニケーションの方法を考えるようにします。

【プロフィール】
合同会社トロ 代表社員 芳賀 淳(はが あつし) 

大手総合電機、精密機械メーカーにてベトナム他での海外販路開拓や現地法人設立などの海外業務に携わった後、合同会社トロを設立。豊富な海外業務・貿易実務経験を活かしたコンサルティングサービスを、ジェトロや中小機構などの公的支援機関および民間企業向けに提供している。 

URL: https://sub.toro-llc.co.jp/ 

 

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