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英文契約書の構成(各論②解除条項)(弁護士 瀧澤渚)

      2017/02/06

これまで,英文契約書作成・交渉時の全体的な注意点や,英文契約書の構成など,一般的な部分を広く見,前回から,個別の条項を取り上げ,掘り下げて,注意点等を見てきました。そこで,今回は,解除条項を取り上げ,これについて見ていきたいと思います。契約書によって認められる解除権を,約定解除権といいますが,契約締結当初には,契約を解除することにはならないのだからと解除条項をしっかりと見ないで契約してしまうケースが多々見られます。しかし,この点を甘く見積もったことにより,のちのち,解除したいのに解除できないというジレンマに陥るケースは少なくありません。解除条項がしっかりしていないと,たとえば,海外に物を売る場合であれば,相手方が支払不能に陥っているような場合にも契約を解除できず,こちらは,代金回収の見込みがないのに,商品を納入しなければならないということにもなりかねません。このようなことが起こらないためにも,今回はどのような点に注意して解除条項をチェックをすべきか見ていきましょう。

解除事由

契約書においては,解除の理由となる事由を列挙し,列挙された事由に該当する事態が生じた場合には,他方当事者が,当該契約を解除することができる,と定められることが多くあります。

解除事由としては,倒産,破産,信用状態の悪化,支払不能,手形不渡り,会社解散,清算,重要な組織変更,重要な契約違反等がよく見られます。また,最近では,支配株主等の変更が起こった場合等も,解除事由として列挙されることがあります。もし,M&Aやグループ会社内の統廃合等により,株主の変更が生じた場合には,このような事項に抵触することになりますので,場合によっては,そのような条項に注意しておく必要があるでしょう。

以上が解除事由の主要なところですが,過不足のチェックにあたっては,社内の過去の契約書や,契約書本のサンプル等と照らし合わせ,過不足なく必要な事由が盛り込まれているかという点をチェックしてください。なお,契約の内容や性質によって,どのような場合に解除の必要が出てくるか異なり得ますので,なるべく同じような類型の契約の契約書サンプルを確認するのが適切でしょう。加えて,サンプルには記載がないが,当該契約においては記載しておいた方がよい特殊な事由がないかにも頭を巡らせ,記載できると,なお望ましいものといえます。

加えて,解除事由をあらわした文言が明確かどうかも確認してください。解除条項が記載されていても,表現が漠然としており,どういった場合に当該事由に該当するのかがはっきりしないような場合,それに該当すると思われる事由が生じ,解除を主張しても,当該条項に該当するか否かというところで争いになり,すんなり解除が主張できないということが生じ得ます。このように,明確な表現を用いておくということも,紛争予防の観点からは重要です。

解除権者

契約の当事者間に力の差がある場合等においては,当事者の一方にのみ,約定解除権を認める記載がされることがあります。

力の差によりどうしても合意が得られない場合は事実上仕方ないとしても,そうでない場合においては,基本的には,もし,取引先から,こちらの解除権について記載されていない契約書が渡された場合,こちらにも解除権を認める旨修正して返すべきでしょう。

まとめ

・解除条項の内容はきちんと確認しましょう。

・解除事由は漏れなく,分かりやすく記載しましょう。

・自社に約定解除権が認められる内容になっているか,確認しましょう。

☆契約書英語レッスン☆

契約書には,見慣れない表現がちらほら登場します。今回は,その中でも,英語以外の言語(ラテン語など)由来の表現をいくつかご紹介します。参考までに,[ ]内は発音記号です。

・Force Majeure [fɔːs maˈʒəː]

意味:「不可抗力」

自然災害,戦争,その他,当事者によるコントロールが不可能な事象を指します。当事者がコントロールできない事象が生じ,それによって契約に形式的に違反する状態が生じたとしても,契約違反とはしない,という趣旨の条項の中で登場することが多いです。

・Pro rata [prəʊ ˈrɑːtə]

意味:「按分比例により」「割合に応じて」

・Per Annum [pər ˈanəm]

意味:「一年につき」

・In lieu of [luː/ ljuː]

意味:「~の代わりに」

・Bona fide [bəʊnə ˈfʌɪdi]

意味:「善意の」「真正な」

善意の,とは,法律用語で,「知らない」ことをいいます。

<プロフィール>

弁護士法人堂島法律事務所(東京事務所) 弁護士 瀧澤 渚氏

慶應義塾大学大学院法務研究科修了。2014年弁護士登録。外資法律事務所勤務の後、2016年より堂島法律事務所所属。企業法務・労務を中心に、英米法等の海外法務にも精通。

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