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英文売買契約書(Sales Contract)の基礎と実務  ~第3回 ウィーン売買条約にご注意を!~(弁護士 江藤真理子)

      2018/03/31

第3回は、ウィーン売買条約について取り上げます。(第1回第2回はコチラ)皆様は、ウィーン売買条約を適用する売買契約を利用したことがあるでしょうか。私が仕事上依頼を受ける英文売買契約書は、先方所在国の法律か、当方所在国の法律か、あるいはアジア企業同士であれば、シンガポール法を準拠法とするのがまだまだほとんどというのが実感です。

日本企業であれば、慣れ親しんだ日本法が有利ですし、日本法以外にするときでも、英国法やシンガポール法を準拠法とした経験を有することはよくあると思いますので、受諾に抵抗がなく、なかなかウィーン売買条約を使おう、という気にならないのが本音でしょうか。とはいえ、前回ご紹介したIncotermsの成功例があるように、せめて商取引だけでも、法律が真に万国共通になれば便利なため、同条約の広がりが加速する可能性もあることから、今回ご紹介したいと思います。

ウィーン売買条約とは?

「ウィーン売買条約」の正式名称は「国際物品売買契約に関する国際連合条約(United Nations Convention on Contracts for the International Sale of Goods)」)です。よく、CISGと略称されています。

Incotermsは売買当事者の義務と危険負担の移転時期しか規定していませんが、CISGの規定内容は広く、契約の成立や契約違反時の救済(損害賠償)なども定めています。日本でも、2009年8月から条約が発効したので、日本企業も、同条約の締約国所在の相手方と売買をする際に、CISGを使うことが可能になりました。相手国の法律を準拠法とすると、「紛争時に不利になるのではないか」と不安になるのが常ですので、CISGを選択すれば、準拠法選択という観点では、双方に公平な結果をもたらします。

相手国もCISG締約国なら自動的に適用

まず、「どのような契約にCISGが適用されるのか」が問題になりますが、基本的なパターンとして、CISGの締約国企業同士の物品の国際売買契約であれば、自動的にCISGが適用されます。したがって、ビジネスパーソンのみなさんとしては、契約相手がCISG締約国企業かどうか、注意するとよいでしょう。さらに、物品の国際売買契約上、準拠法の定めがなく、国際私法の考え方により日本法が適用されることになると、相手企業がCISG非締約国企業でも、自動的にCISGが適用になる点も要注意です。

CISGの適用は排除できる

とはいえ、冒頭で触れたように、実務ではまだまだ当事者所在国の法がよく準拠法になっています。というのも、売買契約において、「CISGは適用しない」と明示するか、明示がなくてもCISGの適用を排除するのが共通の意思であるときは(単に準拠法を定めただけでも、黙示的にCISGを排除したと認められうるところです。)、売買契約の当事者の合意でCISGを不適用にすることが可能だからです。

日本法よりCISGが有利なことはあるの?

そうすると、次に気になるのは、日本法を準拠法とすることが可能なときに、CISGの適用を選択してもいいか、つまり、買主ならCISGの方が有利ということがあるのか、という単純な疑問かもしれません。

残念ながら、買主ならCISGの方が有利(又はその逆)、というような単純な関係にはありません。日本法との違いも細かい点を入れるとかなりあります。したがって、やはり、こちらに選択権があるなら日本法を準拠法としたほうがいいでしょう。

日本法とどう違うの?

さらには、具体的に日本法とどう違うのか、という点も気になるところです。よくいわれているのが、まず契約の成立関係です。日本の民法ですと、契約当事者のいずれかが「承諾する」と通知を発すると契約が成立します(発信主義)。しかし、CISGでは、承諾の意思表示が到達したときに契約成立です(到達主義)。

他に重要な違いとしてよく指摘されるのは、売買目的物が契約で合意したものに適合していなかったときの責任です。日本の商法526条には、買主の目的物の検査義務などが規定されていますが、CISGでは、買主のクレーム期間が2年間とされていて、長くなっていますので、売主にとっては不利といえます。他方で、物品が不適合だった際、買主は不適合を発見したときから合理的期間内に通知しなければならないとされていますので、この点は買主に不利だと指摘されています。

なかなかCISGを使いこなすのは難しいかもしれませんが、相手方が締約国企業かどうかを気にしてみることから始められるとよろしいかと思います。

⇒第4回 売買の合意(売買の予約)と商品の特定

▼バックナンバー
第1回 Sales Contract(英文売買契約)の特徴
第2回 Incoterms(インコタームズ)とは

<著者プロフィール>

TMI総合法律事務所 弁護士 江藤真理子氏

東京大学法学部卒業。三井物産審査部海外審査管理室勤務を経て、2003年弁護士登録。企業法務を専門としており、国内・海外取引関係(海外進出の助言、契約書作成から紛争時の対応まで)以外にも、企業側からの雇用契約関係の助言にも対応している。

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