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英文売買契約書(Sales Contract)の基礎と実務  ~第1回 Sales Contract(英文売買契約)の特徴~(弁護士 江藤真理子)

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皆様、英文売買契約について、どんなイメージをお持ちでしょうか。契約書作成の仕事を頂いて本業にしている私でも、英語になるだけで、ぐっと荷が重くなります。日々の業務があるビジネスパーソンにとっては、「契約書」だけでもビジネス文書とは違い、まして「英語」になると、負担は3倍、4倍増し、ではないでしょうか。少しでも、みなさんの肩の荷が(せめて気持ちだけでも)軽くなるように、英文売買契約に慣れ親しむことを目的に、「英文売買契約書の基礎と実務」についてお話しさせていただくことになりました

▼目次

1 海外事業者との英文売買契約を締結するにあたって…

第1回目は、英文売買契約(Sales Contract)の特徴的な面に触れたいと思います。最近では、日本の法人どうしでも、会社の方針により契約書を英語で作成する場合も稀ではなくなりつつありますが、日本語以外の言語で契約書を作成する場合の多くは、海外事業者との契約の場面であると思います。

そうすると、まず、海外所在の相手方(売買契約の売主又は買主)がいかなる法的性質の団体か、そもそも実在するのか、契約締結権限者はだれになるのか、の確認で手間取ることがあります。(もっとも、最近では国際化が進み、反対に、相手方から日本企業に対して、「貴社の登記や定款を見せてほしい、英語版で出してくれ」、と要望されるケースもあるようです。)

確認の基礎は、日本法人を相手とする場合と同様ですが、当該国の法的制度としていかなる法人の種類があって、その法人の実態の確認方法としてどのような方法があるのか、情報収集して確認していくことになります。

2 貿易取引の特徴=インコタームズの理解

海外事業者との売買契約となると、要するにそれは「貿易」、輸出入ということになります。そこで欠かせないのが「インコタームズ(Incoterms)」への理解です。

これは、国際的な売買取引における、買主と売主の義務をわかりやすくまとめた国際規則のことで、International Commercial Terms(国際商業規則)の略です。国際商業会議所が制定したもので、「FOB」とか、「CIF」というアルファベット3文字で、重要な取引条件を表していて、今や貿易取引には欠かせません。

インコタームズが制定されたのは1936年で、80年以上前のことですが、貿易取引条件の解釈を統一させ、トラブルの原因を取り除くことに一役買っています。インコタームズは、過去に繰り返し改正されていますが、インコタームズ2010が最新版です。10年に一度程度改正されていますので、またそろそろ改正があるかもしれません。

インコタームズの利用により、運送、保険、通関手続の手配をどちらがやるのか、その費用負担をどうするのか、その合意内容を簡潔に明確にすることができます。しかし、売買目的物、代金額、支払方法、目的物の所有権移転時期、契約違反があったときの定め等はインコタームズでは一切触れられません。したがって、これらをカバーするためにも、売買契約を作成しましょう、ということになる(私の仕事もなくならない)わけです。

3 ウィーン売買条約

最後にもう一つだけ触れます。「ウィーン売買条約」(正式名称は「国際物品売買契約に関する国連条約(United Nations Convention on Contracts for the International Sale of Goods: CISG)」)です。

ウィーン売買条約は、国際売買(貿易取引)の条件に関する条約で、契約や損害賠償の基本的な原則を定めています。日本でも、2009年8月から発効していますので、同条約の加盟国所在の相手方との売買契約を締結した場合に、契約上の諸条件をウィーン売買条約の定めに委ねることが可能になりました。

国際契約の締結においては、どの国の法律に準拠するか、が大きな論点になります。相手方の国の法律は全くわからないのが普通ですから、なるべく避けたいと考えるのがごく自然化と思います。しかし、それは相手方も同じ。そこで、ウィーン売買条約を適用することとすれば、準拠法選択という観点では、双方に公平な結果となります。

もちろん、日本の民法・商法とは異なる点もあるので注意は必要です。しかし、日本語でウィーン売買契約を解説したサイトや本もありますので、ビジネスパーソンでも、ある程度のイメージを掴むことは可能です。

慣れてくると、インコタームズ、ウィーン売買条約も全く恐れる必要はありません。
ウィーン売買条約については、当事者の合意で適用しないこととすることが可能なので、まだまだ利用は低調のような気がしています。ビジネスパーソンの皆さんの感覚ではいかがでしょうか。今後ますます利用が増えれば、利用しやすくなるかと思います。事例の蓄積が期待されます。

次回は2番でご紹介したインコタームズについて、少し踏み込んでお話しさせていただく予定です。

第2回  Incoterms(インコタームズ)とは

<著者プロフィール>

TMI総合法律事務所 弁護士 江藤真理子氏

東京大学法学部卒業。三井物産審査部海外審査管理室勤務を経て、2003年弁護士登録。企業法務を専門としており、国内・海外取引関係(海外進出の助言、契約書作成から紛争時の対応まで)以外にも、企業側からの雇用契約関係の助言にも対応している。

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