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新興国リスク【第5回】ロシアリスク??最近よく聞く「地政学リスク」とは

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ロシアはBRICsの一角として存在感を高めてきました。しかし現在は国際商品市況の下落に直撃され、さらにクリミア併合に対する欧米の経済制裁に政治・経済両面において孤立感を強めています。

劣勢挽回に向けて現在ロシアは中国に接近し、40年に及ぶ原油供給の長期契約を締結するなど両国の関係緊密化を図っています。一方で米国が主導する平和に綻びが目立つことから、地政学リスクとしてのロシアの存在が注目されます。
今回は「地政学リスク」について、ロシアを題材にケーススタディで解説します。

前回の記事はこちら⇒新興国リスク【第4回】ASEANの中核国インドネシアに高まる成長期待

 

▼目次

そもそも「地政学リスク」とは?

ドイツで研究が進んだ学問「地政学」

近頃「地政学リスク」との言葉を耳にする機会が増えました。そもそも「地政学」とは地理的な環境が国家に与える影響を政治、軍事、経済、歴史など様々な視点から研究するものとされています。
ドイツ語でゲオポリテク(Geopolitik)、英語でジオポリティクス(Geopolitics)と言われていますが、もっぱらドイツ語で言うゲオポリテクが一般に使われています。

その理由はこの学問は古代ギリシャの歴史学者ヘロドトスが著した「歴史」に起源が求められるのですが、近代以降周辺との戦争状態が長く続いたドイツで研究が進められた為とされています。
さらに20世紀に入るとナチスが英米主導の既存秩序に対する挑戦を正当化し、勝利する手段としてこの学問を進化させたことも大きく影響したと考えられています。

「世界の警察」アメリカの台頭

第二次世界大戦が終了すると、世界に米国の軍事力を背景にした「米国の平和(パクス・アメリカーナ)」がもたらされました。この結果、大戦遂行にドイツが活用した「地政学」は過去の学問として追いやられたように見えました。

再度脚光を浴びることになったきっかけは、21世紀に入ると「パクス・アメリカーナ」に綻びが広がりはじめたことです。世界各地域において国境線をめぐる紛争が熾烈になるとともに、世界リスクの考察、つまり「地政学的リスク」を把握する試みが一般化してきました。

再び注目を集める「地政学リスク」

そして今日、南シナ海・東シナ海で中国が海洋権益を主張し、ウクライナではロシアがクリミアを併合するなど国際情勢は大きくうねりを見せています。まるで大国が実力行使で領土問題を解決する時代が再来したようです。

また世界経済のグローバル化が進み、一地域の紛争が様々な過程を経て他地域に波及することが日常化しています。従って国際金融市場は地政学リスクへの感応度を高めています。またその意味でロシアは地政学リスクの最右翼で最も注視すべき国と言って差支えないでしょう。

ロシアと地政学リスク

前置きが長くなってしまいましたが、具体例について見てみましょう。

強いリーダー像を示すプーチン大統領

ソ連が崩壊から四半世紀近くたった今も、国民の間には大きくて強いロシアへの回帰願望は根強く、この国民の思いがプーチン政権を支えています。
このロシアを率いるのがプーチン大統領で、しばしば世界で最も強いリーダーだと言われています。
精悍な面持ちそしてみなぎる力強さを感じさせる風貌は、好き嫌いを別にしても強いインパクトを与えています。

実際、同氏は2000年に大統領に就任して以降、一時期首相になったものの再度大統領に復帰し、過去15年間ロシア国内外において「強いロシア」を掲げて君臨してきました。

ロシア経済の中国との結びつき

このプーチン大統領率いるロシア経済は現在、中国への依存度を高めています。その背景は以下のとおりです。

欧州においてEU(欧州連合)NATO(北大西洋条約機構)は、軍事・経済を一体化させて東方へ拡大しつつあります。そしてロシアとその核心的利益ともいうべきウクライナで激突し、今日の緊迫化に至っています。

米国・EUはウクライナ問題に対して対ロ経済制裁を始め、その結果ロシアの国内経済は物不足、インフレ、そして通貨安と、困窮を極めています。
このような経緯で、ロシアはその打開策として中国へ接近し、ユーラシア大陸中央において連携を強めているのです。
中央アジア諸国を含めて中国との経済連携の強化を図るなど、地政学リスクとしてのロシアの存在感はさらに高まることになるでしょう。

 まとめ

ロシアは18世紀から不凍港を求めて南下政策を進めました。西は黒海から地中海へ、南はインド洋へ、そして東は日本海から太平洋へと進出を図りました。
その結果至る所で英国との間で争いを重ね、その争いはチェスになぞらえて「グレートゲーム」と言われています。今後もロシアの南下政策は不変で、欧米としのぎを削る「地政学リスク」の象徴であり続けるでしょう。

 

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