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新興国リスク【第4回】ASEANの中核国インドネシアに高まる成長期待

      2016/03/01

 政府の産業政策が、インドネシアの経済成長のカギを握る―?

インドネシアは、一人当たりGDPが4,000ドル未満2014年:約3,500ドルと依然発展途上にありますが、ASEANの中核国としての更なる発展が期待されています。

その要因の一つは、豊富な天然資源人的資源(総人口が2.4億人と多く、その平均年齢が30歳未満と若い労働力に溢れている)に恵まれ、潜在的成長力を有していることです。

また、国民所得の増加に伴って中間層が出現しつつあり、国内消費市場の拡大が見込まれることも海外資本にとっての魅力と言えるでしょう。

さらに、現在、世界で最も成長する地域として注目を集めるASEAN(東南アジア諸国連合)の本部がジャカルタに置かれていることも見逃せません。

今回は、急速な成長の途上にあるインドネシアの実情を探ってみましょう。

前回の記事はこちら⇒新興国リスク【第3回】

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インドネシアの潜在的成長力の背景

インドネシアの潜在的成長力の根源と言えば、①天然資源の豊富さ②労働力・消費人口の多さが挙げられるでしょう。両者について簡単にまとめると、

 1.天然資源

・ヤシ油やゴム生産は世界1、2位を占める

・天然ガスもアジア太平洋地域では最大の産出国となっている

 2.労働力・消費人口

・人口は世界4位を誇る

・人口構成は現在ピラミッド型となっている(14歳以下の人口の割合が高く 65歳以上の人口の割合が低い)

・国連の人口推計によれば、総人口は2070年まで増え続け、また生産年齢人口(15-64歳)も2055年まで右肩上がりと予想されている。

⇒つまり、今後40年間は経済活動の担い手が増え続けることとなり、豊富な労働力と消費人口の多さに下支えされ、経済成長と消費市場拡大のチャンスは大きい。

実際、上記の天然資源・人的資源に裏打ちされた経済力の強さで、1997年のアジア通貨危機、2008年のリーマンショックを乗り越え、中国、インドに次ぐ高い成長率(この10年で概ね5~6%)を示してきました。

また、成長過程にあるインドネシアでは、若くて低コストの労働力を背景に都市化が進み中間層が拡大しています。中間層の拡大に伴う消費市場の拡大は、インドネシア経済の中期的な発展を進める可能性を示唆していると言えます。

2014年の経済成長は5%水準へとやや減速していますが、依然ASEAN加盟国の中では際立っており、同国のジョコ・ウィドド大統領は

「3年後(18年)には7%成長は可能だ」

との強気の発言も行っています。

インドネシアの政治的安定度

現在、そのジョコ大統領の手腕に期待が高まっています。

インドネシアは、1965年以降、32年間にわたるスハルト一族の開発独裁と、その崩壊に伴う政情の不安定化を経験しました。

その後、2004年のユドヨノ政権の発足とその政権下での安定を経て、14年10月にジョコ大統領が就任しました。

現在、インフラ投資(渋滞緩和を目的とした道路の新設、電力不足解消を目的とした発電所の建設など)に重きを置くジョコ大統領の政策は、市場ではおおむね好意的に受け止められています。

ただ、「財政を圧迫する燃料補給金を減らす」として2014年11月に行った燃料費補給カット(実質的な燃料の値上げ)以後、投資や家計消費に減退感が見られるのも事実です。

また、ジョコ大統領の出身母体である闘争民主党は国会議席の2割程度を占めるに止まっており、国会運営に苦戦するとの見方もくすぶっています。

上記の理由から、財政問題も含めて、構造改革(※)の先行き不透明感には注意を要するでしょう。

※2015年8月に内閣改造を発表し、5閣僚(うち、経済関係の閣僚が4名)が後退。景気低迷打開をはかる狙いがあるとの見方あり。

中進国の罠

ジョコ大統領がインフラ投資に重点を置いていることからも分かるように、インドネシアが先進国へと成長を遂げるためには、同国が持つ潜在的成長力を最大限に生かす基盤の整備が必要です。

ところで、世界銀行は、1人あたり国民所得が約1,000~12,000ドルの国を「中進国(中所得国)」と定義しています。

冒頭で述べた通り、インドネシアの2014年の1人あたり国民所得は約3,500ドルであり、世界銀行の定義する「中進国」にあたります。

近年、中進国から先進国へと成長を遂げることの難しさを象徴する「中進国の罠(中所得国の罠、middle-income trapという用語がメディアでよく取り上げられるようになりました。

これは、自国の人件費の増加、新興国の追い上げや先進国の技術力による競争力の相対的な低下、等の要因により、中進国となった国の経済成長の速度が鈍化する現象を指します。

いま、中進国として経済成長の途上にあるインドネシアが「中進国の罠」に陥ることなく成長を遂げるためには、労働力の質の向上や社会インフラの整備など、ハード・ソフト両面のインフラ整備が必須と言えるでしょう。

まとめ

インドネシアは労働力と天然資源に恵まれていることから潜在成長力では秀でていると言えます。

ただ、その一方で、油井の老朽化や労働力の質など、ハード・ソフト両面のインフラ整備については課題を抱えているのも事実です。

今後、政府のハード・ソフト両面でのインフラ整備など産業政策こそ、インドネシアが「中進国の罠」にはまらずに成長を加速できるかどうかのカギを握ることになるでしょう。

 

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