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フランス労働法改正(弁護士 瀧澤渚)

      2017/01/31

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35時間労働,夏の長いバカンス。働く労働者にとっては夢のようにも思える制度を持つフランスが,先夏,労働法典の改正に踏み切りました。

背景にあったのは,失業率の高さでした。2015年のフランスの失業率は,全体で10.4%,若者に限れば約25%。これは,欧州主要国の中でもとりわけ高い数字です。そのような状況の打破のため,フランスは,雇用の促進や創出を目的として労働法改正を進めており, 2016721日,ついに,改正労働法が成立しました。

改正のポイントは以下の通り。

労働時間規制

35時間という労働時間規制は維持されたものの,労使で合意することにより,最大46時間まで週の労働時間を延長することができるようになりました。

解雇基準の明確化

企業が経営不振に陥った場合の解雇(経済的理由による解雇)について,明確な基準が設けられました。

受注額又は売上高が前年同期比で,連続して著しく減少(“baisse significative des commandes ou du chiffre d’affaires”)した場合,経営不振を理由とする解雇の適用対象になるとされました。

具体的には,(i)従業員数が11人未満の企業は一四半期,(ii)従業員数が11人以上50人未満の会社は二四半期,(iii)従業員数が50人以上300人未満の会社は三四半期,(iv)従業員数が300人以上の場合は四半期連続して,そのような減少があるかを検討することとされました。

改正によって基準が明確になったことにより,企業は,解雇をしやすくなったといえるでしょう。

解雇の有効性の検討における,地理的要素

当初,今回の労働法改正の改正案には,裁判所が国際的な企業が行った経済的理由による解雇の有効性を判断する場合に,当該企業(フランス法人)の業績のみを考慮することを要求する条文を置いていました。これまで,フランスでは,判例により,経済的理由による解雇の有効性は,当該企業のグループ全体の財務状況に基づいて判断するものとされていました。そのため,国際的企業においては,グループ全体としてみれば好調であれば,いくら国内の法人の業績が悪くても解雇が容易でないというジレンマがありました。

そのため,この規定が導入されるかは,今回の改正で注目されたポイントの一つでしたが,国内での反発も大きかったことから,結局,本制度は導入されず,削除されることとなりました。

まとめ

以上,前回に引き続き,海外の労働ニュースについて取り上げました。昨今,日本でも,労働法制関係の改正は多いですが,このように見ていると,グローバル化やIT化に伴う働き方の変化に,法律を追いつかせようという試みが各国でなされていることがわかります。その意味では,海外の労働法制改正も他人事ではなく,近い将来,日本にも,諸外国の制度が輸入されることが十分あり得ます。海外子会社の人事管理,という以外にも,「働き方」を考えるきっかけになれば幸いです。

(プロフィール)

弁護士法人堂島法律事務所(東京事務所) 弁護士 瀧澤 渚氏
慶應義塾大学大学院法務研究科修了。2014年弁護士登録。外資法律事務所勤務の後、2016年より堂島法律事務所所属。企業法務・労務を中心に、英米法等の海外法務にも精通。

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