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欧州リスク③英国の路線はEU残留か離脱か?

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英国はヨーロッパ大陸から離れた地理に加え、歴史的にも「栄光ある孤立」(Splendid Isolation)を外交方針にしてきました。 EUには加盟しているものの、共通通貨ユーロを導入しない、またEUの様々な方針に異を唱えるなど、独自路線を展開しています。
国民の間ではEU離脱を希望する声も高まっており、2年以内の国民投票で残留・離脱の方針が決定される見通しです。

 現状では残留の可能性が高いと見られていますが、国民の選択が注目されるところです。

欧州リスク連載第3回にあたる今回は、英国の今後を探ってみましょう。

 

▼目次

今こそ英国外交の底力が発揮されるとき

巧みで老練な外交術と、影響力

英国は長年、大英帝国として世界に君臨してきました。
すでにその栄光は過去のもの…という印象もありますが、やはり「遺産」は依然大きく、現在も秀でた外交力を有しています。
(用語説明)「栄光ある孤立」栄光ある孤立(Splendid Isolation)とは、19世紀後半における大英帝国の非同盟政策を象徴する言葉です。

英国は1896年ボーア戦争の不振とドイツ帝国の外交攻勢に悩まされていました。
そこで当時の植民地大臣ジョセフ・チェンバレンが英国民を鼓舞する演説を行った際の言葉です。
一種の流行語となったこの言葉は、いつしか当時のイギリス外交を象徴する言葉となりました。現在においても、しばしば英国外交の本質を示すものとして引用されます。
この英国の影響力と老練さをあらわす具体例が、

2015年3月のアジアインフラ投資銀行(AIIB)の創立メンバー加盟申請です。

当時、英国は米国の反対を無視して、3月12日に駆け込み的に参加表明をしました。

結果、それまで態度を決めかねていた各国はいっせいに追随します。最終的に関係国のうち日米以外のすべての国々が加盟することになりました。

当初英国は米国と共同歩調をとり、参加を見送ると見られてきました。ところが最終的には、「経済利益」を優先させ米国と袂を分かったのです。

建前と本音を使い分ける英国外交の本質と、世界への影響力を改めて示したと言うところでしょう。

得意の外交でEU相手にどう立ち回るのか

2015年5月7日には総選挙が行われ、予想に反して保守党が過半数を占めました。そして保守党の公約に従い、EUに残留するか離脱するかについて国民投票が行われることになりました。

この問題に対する各党の考え方を整理すると、労働党はじめ野党は軒並みEU残留を支持し、保守党のみが離脱を主張しています。

ただキャメロン首相(保守党)の本音はEU残留にあると言われています。首相は今後国民投票が実施されるまでの期間で、EU残留を条件に、EU側から最大限の優遇措置を引き出すための交渉を行うと見られています。

現状では残留が多数派を占めるとされていますが、はたして国民投票はどのような結果となるのでしょうか。

また英国は得意の外交で、EU相手にどのような交渉を進め、有利な条件を引き出すのでしょうか。

英国のEU残留・離脱のメリットとデメリット

EU離脱といえば、ギリシャに関してしばしば言及されてきました。この場合は、債務削減を課せられたことで、国民の不満が高まったことが原因です。

一方英国でも、また異なる理由でEU離脱を望む国民の声が強くなっています。
その背景には、
・独自通貨に象徴されるように、もともと主権・独立性へのこだわりが強い。
・EU主導による政策、官僚主義への不満を抱えている。

 ⇒国民感情として「栄光ある孤立」に傾斜しがち。

・就労目的の移民増加が一部問題になっており、
 「人の移動の自由」という欧州連合(EU)の原則に抵抗がある。
・EUから離脱した場合、財政赤字の上限などEUに課されている様々な規制が無くなる。

…といった点が挙げられます。

欧州の金融センター、シティ・オブ・ロンドン

とはいえ、EU加盟により恩恵を受けていることも事実です。

欧州の金融センターとして繁栄するシティ・オブ・ロンドンには、欧州単一市場の恩恵を受けるため約250の外資系金融機関が業務を集約させています。

この中で欧米の主要銀行は、なんと国民投票の結果も見えない現段階から、英国での業務縮小や本店の移動の検討を進めているともいいます。

EU離脱の場合、シティの凋落は必至といえます。英国の損失は甚大となるでしょう。

他にも、貿易面でEUの構成国として多大なメリットを受けている事実は無視できません。

おわりに

EUに残留するか離脱するかは国民次第です。

ただ国民投票では個々人の利益が優先されることから、必ずしも国益を反映しない点には要注意です。

またEUとしても、主要メンバーである英国が離脱した場合、大きな打撃を被って欧州統合の理念が揺らぐことは避けられないでしょう。
risk_profile ●コラム筆者プロフィール●

名前:テムジン
リスクマネジメント界のチンギス・ハンです。
一言:迷える子羊たちに、世界各国のカントリーリスクを
分かりやすく説明します。

 

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