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「明日から紙幣は使えません!」インドで実際起きた『紙幣ショック』(公認会計士 野瀬大樹)

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先週11月8日夜8時、インドでは政府から突然発表がありました。

「500ルピー札と1000ルピー札は今後使えないこととします。タイミングは4時間後。」

私はちょうどその時レストランで晩御飯を食べており、その支払いはギリギリ間に合ったのですが、翌日からは大混乱。銀行は政府命令で翌日は臨時休業、その翌日からはまるで取り付け騒ぎのような大混乱になりました。

▼目次

なぜこのような措置がとられたのか

主な目的は「ブラックマネー対策」です。インドでは現金取引による脱税が非常に多いと言われています。例えば私が何か事務所備品を買う時にインボイスを要求しても相手のインド人業者に「それは無理だ」と言われることが多いです。それでもインボイスを出すように要求すると、その納税分を上乗せした金額でインボイスが届きます。

そのような脱税により、現金をため込んでいる人たちをあぶりだす目的で、ある日突然有無を言わさず紙幣を使用禁止にしたのです。もちろん、銀行に持ち込んで預金にしたり、両替したりすることはできるのですが、あまりに巨額の現金を持ち込むと税務署に連絡が行くという仕組みになっている訳です。

実際の影響

銀行は長蛇の列で、一日に両替できる金額も数千ルピーまでと定められていますので、従来現金取引が基本だった商売には大打撃です。町のオートリキシャ(三輪タクシーのこと)や小さなレストランは閑古鳥が鳴いていました。

また、銀行口座をもっていない低所得層も死活問題です。ため込んだお金を現金でもっていたにも関わらず、銀行で4~5時間並んで両替しないと今日の生活もままならないという状態になったので、当初の2~3日はかなりの混乱がありました。

インド人の反応

狙っていたのかは分かりませんが、発表されたのがアメリカ大統領選挙の結果とかぶったので(ちなみにインドはトランプ新大統領に好意的)、市場の反応は驚くほど静かですし、実はむしろ好意的ですらあります。貧富の差が非常に激しいインドという国では、しこたま脱税や賄賂でお金をため込んでいる富裕層や公務員には反感もあるらしく、「そういう奴らが困るのであれば、それは良いこと」と考える人が多いようです。聞いた話では住宅ですら現金で買う人がいるくらい現金を家にため込んでいる人がいるそうです。

トランプしかり、インドの紙幣ショックしかり、既存の既得権益層への反感というのは世界のトレンドなのかもしれませんね。

まとめ

 インドでは11月9日より500ルピー紙幣と1000ルピー紙幣が使用禁止に。新しく発行される2000ルピー紙幣への切り替えが突然始まった。ただ市場の混乱は限定的と予想されている。

プロフィール

野瀬 大樹(のせ ひろき) 公認会計士・税理士

大手監査法人勤務の後、NAC国際会計グループに参画、インドのニューデリーにて主に日系企業をサポートするコンサルティング会社NAC Nose India Pvt. Ltd.を設立し、同代表に就任。インド各地にて、会計・税務・給与計算に加え、各種管理業務に関わるコンサルティングサービスを提供している。

事務所HP:http://in.nacglobal.net/

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