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米国の休暇制度問題(弁護士 瀧澤渚)

      2017/01/31

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意外と知られていないことですが,アメリカは,先進国の中で唯一,有給休暇制度が法律上保障されておりません。有給休暇は福利厚生としての位置づけとなっており,企業が有給休暇制度を導入している場合や,高所得者層であって,雇用契約上,有給休暇を取得できる権利を有している場合にのみ,取得できることとなっています。そのため,体調の優れないときでも,有給を取得できず,休養か,給料かの2択を迫られる労働者は多く存在しています。

しかし,昨年(2015年)は,そのようなアメリカの制度の問題点に光が当てられた年となりました。

まず,1月に,オバマ大統領は,米国議会が,年7日のPaid Sick Leave(有給病気休暇)を認める法律を通過させるべきだとの意見を表明しました。

また,7月には,カリフォルニア州において,Paid Sick Leaveが義務化され,本人・家族の病気治療等のために欠勤した場合でも,給与が支給されることとなりました。

このPaid Sick Leaveの付与の対象は,カリフォルニアで働く従業員であって,年に30日以上勤務した者とされており,使用者は,全従業員に対し,30時間の勤務につき1時間のPaid Sick Leaveを付与することが義務付けられることとなりました。

さらに,9月には,オバマ大統領が,連邦政府契約事業者に対しPaid Sick Leaveの義務付けを行う大統領令に署名しました。

このように,Paid Sick Leaveという限定的な形ではあるものの,アメリカで有給休暇の法制化に向けた動きが盛んになってきています。オバマ大統領は,2016年10月に入っても,議会に対し,法律で有給病気休暇を認めるよう議会に促す動きを見せており,アメリカで従業員を擁する企業はフォローが必要です。

他方で,アメリカでは,数年前から,IT企業を中心に,取得日数無限定の有給休暇制度を採用する企業が出始めています。当該制度は,一見,労働者にとって夢のような制度のように見受けられます。当初は,取得日数を無限定とした結果従業員の業務効率が上がる等,同制度のプラスの効果がアピールされていましたが,最近では,結局,同僚間での競争や遠慮等から,無限定とされる前よりも有給取得日数が減っている場合もある等の問題点も指摘されています。日本ではこのような無限定の有給休暇制度はあまり見聞きしないところですが,実際に,米国親会社の日本子会社等で,導入が検討される事例もあり,今後日本でも導入する企業が出てくるかもしれません。日本では,近年,「働き方の変革」への社会的関心が高まってきておりますが,グローバル化の波も,少しずつ,日本の労働分野に押し寄せてきているようです。

(プロフィール)

弁護士法人堂島法律事務所(東京事務所) 弁護士 瀧澤 渚氏
慶應義塾大学大学院法務研究科修了。2014年弁護士登録。外資法律事務所勤務の後、2016年より堂島法律事務所所属。企業法務・労務を中心に、英米法等の海外法務にも精通。

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