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日本企業の直面するトラブル3:ローカル企業相手の債権回収(公認会計士 野瀬大樹)

      2017/10/19

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前回まではインドの税法を中心にお話ししたのですが、今回はもっと差し迫った問題、「債権回収について」です。

自動車部品会社のように、取引のほとんどが親会社など日系企業であればよいのですが、12億人を超えるインドの需要を狙ってインドに進出した企業にとって頭の痛い問題がこの「債権回収」です。

では、どうしてこの「債権回収」がインドでは問題になるのでしょうか?

新興国では当たり前の話かもしれませんが、例えば、インドでインド企業の100万ルピーのモノ・サービスを売ったとしても、100万ルピーがそのまま綺麗に振り込まれないケースは少なくありません(間接税の問題は除く)。今回はその原因について考えていきたいと思います。

「わざと支払いを遅らせる」という文化

日本の場合、ベンダーからの請求書に振り込み期日が記載されていれば、その期日を100%守るのが経理部の仕事ですが、インドの場合、むしろ逆にアレコレ理由をつけて支払いを遅らせることで経理が評価される傾向にあります。

「インボイスが届いていない」「まだ商品を開封していない」「追加でこういうサービスもつけないと払いたくない」などなど、様々な理由で支払いを遅らせてくるのですが、これも金利が高い国ならではのことです。インドの定期預金の金利は8%近くあり、7日間から定期預金が組めるので、皆少しでも支払いを遅らせて金利を得ようとするようです。

対策として、インボイスは原本以外に上司もCCに入れ、メールでも送るなどが必要になります。

売上計上基準の違い

これは日本でもある話なのですが、こちらはインボイスの日付で売上計上し、その日付から入金見込み日を計算するのですが、客先は商品を使い始めたり、検収が終わってから支払予定日を計算しているため、入金予定日が遅れるケースも散見されます。これは、監査時の確認状(※1)金額の相違にもつながりますので、注意が必要です。

原因の一つとして、以前にも少し触れましたが、インドビジネスでのセクショナリズムの問題があります。営業担当は自分の営業成績しか興味がなく、実際はまだ客先から正式な受け入れがなくても、納品が完了したと報告するケースが日本よりも顕著です。このあたりを防ぐ内部統制の仕組みもインドでは未発達ですので、今年よりインドでも始まった内部統制監査で確認しておく必要があるでしょう(※2)。

※1: 取引先との債権・債務残高の確認を行うためのもの

※2:(参考)インドの財務報告にかかわる内部統制制度(2016年3月)JETRO

https://www.jetro.go.jp/world/reports/2016/02/6e536a37c5c3e174.html

源泉税の見解の相違

これも実務上よくある話です。インドは源泉税の仕組みが複雑ですので、取引先との間で支払い金額から何%の税金を引くかという議論がよくなされます。見解の相違により、こちらでは10%引かれると思っていても、客先で40%引かれて振り込まれることなどがあります。しかも、時にはその差し引いた源泉税を税務当局に納税していない悪質なケースも散見されるため、その差額が未回収の売掛金として貸借対照表に残ってしまうのです。

まとめ

インドでの債権回収は難しい。

「そもそも支払いは遅らせるもの」という文化がある点を考慮して、3割~5割は前金でもらうという措置も必要。また源泉税の処理は見解が分かれやすいので、取引を始める前にしっかり詰めておくことが大切。

 <プロフィール>

野瀬 大樹(のせ ひろき) 公認会計士・税理士

大手監査法人勤務の後、NAC国際会計グループに参画、インドのニューデリーにて主に日系企業をサポートするコンサルティング会社NAC Nose India Pvt. Ltd.を設立し、同代表に就任。インド各地にて、会計・税務・給与計算に加え、各種管理業務に関わるコンサルティングサービスを提供している。

事務所HP:http://in.nacglobal.net/

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