これまでのシリーズでは、取引を行う際の情報取得の重要性、およびその情報に客観性を持たせることの重要性を学んできました。
海外との取引のパターンには、海外の現地で取引する場合と、日本を拠点に輸出や輸入を行う貿易取引がありますが、取引先の情報収集の重要性は、取引先の企業が属する国や、取引の形態の違いによって変わるものではありません。
今回は海外取引の中でも、比較的リスクの高い新興国との取引における信用調査のポイントについて学んでいきましょう。
◇本記事で学ぶ内容◇
・新興国において取引を行なう際にまずやるべきことがわかる
・信用調査において、取引先(契約先)を特定することの重要性が分かる
前回の記事はこちら→第1章(2)信用情報の収集について(間接情報編)
▼目次
あなたは契約先がどの会社なのか、きちんと把握していますか?
前回までの連載において、間接情報として銀行信用照会(bank reference)、同業者信用照会(trade reference)、商業興信所調査(credit report)に関して学びました。また、直接情報として、過去の取引履歴に関しても重要であると学びましたが、自社の現地法人や、事務所がある場合には、過去の取引内容だけでなく、現在の取引先の状況を、会社で直接情報収集することも重要になります。
取引先の信用調査を行うに先立って、取引先の所在地の管理監督当局から登記情報(commercial registry)のコピー(日本の商業登記簿謄本に相当)を取得し、正式な会社名、住所、設立年月日、資本金、代表者等の基本的事項を確認しましょう。
特に、発展途上国の企業と取引を行う際には、流通や物流体制等のインフラの未整備から、複数の会社が契約に関わってくる場合や、交渉を行っている相手と最終的な契約者が異なる場合があることから、初期の段階で契約先を特定することが極めて重要です。会社設立登記のコピーを取得し、事前に取引の契約当事者を特定し、存在を確認することは与信を行う上での基本動作と言えるでしょう。
信用調査会社(興信所)のレポートを利用して、公的情報を把握しよう
現地に拠点を有していない場合など、公的情報へのアクセスが困難な場合があります。そのような時には、信用調査会社(興信所)レポートの取得を検討すると良いでしょう。
有償ですが、直近の公的情報や企業情報、財務情報などを得ることが可能です。笑えない話ですが、レポートを取得したところ、既にその取引先は会社清算しており、同名の別の会社と契約を結んでいたということもあり得ます。
以下に代表的な各国の信用調査会社を表にまとめましたので、参考にしてください。
地域 | 国 | 主な商業興信所 |
アジア | 中国
韓国 シンガポール Hong Kong タイ インドネシア アジア全般 |
Sinotrust
Saehan DP imformation AGA INRA CISI ACP |
米州 | 米国・カナダ
中南米諸国 |
D&B
D&B |
欧州 | 英国
フランス ドイツ・東欧諸国 中東 |
Experian
D&B,Coface Credit Reform・D&B Rime |
国や地域によっては企業の情報開示姿勢が悪く、満足のいく情報が得られない事があります。そのような場合は、自分の会社で情報を取得する必要があります。よって、現地の銀行や同業者等と常日ごろからコンタクトを取るよう心がけ、情報源を増やしていくことが重要になります。
◇レポート関連お記事はこちら◇
→【海外企業信用調査レポートの紹介②】コファス海外与信調査レポート
まとめ
・外部機関の信用調査と、自社による直接の情報収集をうまく組み合わせ、総合的な取引判断ができるようにしましょう。
・海外における銀行、同業者と常日頃から密接なコンタクトを心がけ、情報の補完を行えるよう心がけましょう。現地ネットワークに入り込むには、現地採用のナショナル・スタッフを活用するなども一考かもしれません。
☆次回は「信用調査レポートの見方」について学んでいきます。