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【インコタームズ よく使うFOB】FOBとFCAの違いは? 気をつけることは?

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海外マーケティング支援を行っている合同会社トロの芳賀 淳です。

最もよく使う受渡条件の1つに「売り手国の指定船積み港湾で貨物を引き渡す」ものがあります。これをインコタームズ2020ではFOBあるいはFCAと言います。

でもFOBとFCAって似ていて分かりにくい。コンテナ船や航空便での輸送ではFCAを利用することを推奨されていても結局のところ貿易の関連業者や買い手はFOBを使い続けている。

現状は確かにご指摘のとおりですが、FOBとFCAの違いを理解し、実務でどのようなことに注意したらよいかを確認しておきましょう。

FOBは貨物が甲板に積み込まれるまで、FCAはコンテナヤードのゲートを通過するまで

コンテナヤードとは?

港湾に位置し海上コンテナを一時保管する施設で、コンテナ船が船積み・荷卸しのため接岸する岸壁に隣接しています。貿易貨物を集積する場所であることから保税(Bond)地区です。

コンテナヤードにはコンテナを保管する広い場所、そのコンテナを船積みのために岸壁まで移動する門型クレーン(トランスファークレーンと言います)、岸壁に接岸したコンテナ船にコンテナを積込む、あるいは船からコンテナを荷卸しするためのガントリークレーンが接地されています。稼働していない時のガントリークレーンはキリンそっくりです。ガントリークレーンの運転席は地上およそ35mの位置にあります。これはビルの9階くらいの高さに相当します。熟練したガントリークレーンの操作者となると1時間に40本ものコンテナを船に積込む、あるいは荷卸しすることができるようです。

冷凍・冷蔵が必要な食品などの輸送には冷凍・冷蔵コンテナ(リーファーコンテナ)を使用します。リーファーコンテナには冷凍冷蔵機器が内蔵されているのでコンテナヤードでもきちんとした温度管理ができます。当然、リーファーコンテナ用電源(通常440V)もコンテナヤードには整備されています。

コンテナ船が接岸する岸壁をバース、バースの陸側でコンテナの積込みや荷卸し及び移動・保管などの各種作業を行う場所をターミナルと言います。1つのターミナルからは複数のバースに船積みや荷卸しができるようになっており、特定船会社が各ターミナルを契約して使用します。ターミナルでの実際の荷役は船会社が委託したターミナルオペレーター(フォワーダー、乙仲)が行います。

貿易関係者はCY(コンテナヤード)という用語を使いますが、イコール=コンテナターミナルと理解しても特に問題はありません。厳密にはヤードはターミナルに含まれます。

コンテナターミナル各施設の紹介 https://www.tptc.co.jp/guide/container/institution

航空輸送の場合、コンテナヤードに相当するのは空港の業務用貨物施設だと思ってください。尚、航空機を利用する乗客からは業務用貨物施設を見ることは通常できません。

 

 FCAの方がFOBよりいいのか?

FOB、CFR、CIFは在来船用の受渡条件ゆえ、コンテナや航空輸送の場合にはFCA、CPT、CIPの利用が推奨されています。もっとも、税関の輸出通関ではFOB価格、輸入通関ではCIF価格、EPA/FTAにおける原産地規則ではFOB価格を基準とした付加価値基準が採用されている現状では、コンテナや航空輸送向けインコタームズが広く使われているとは言いにくい状況です。

売り手から見たFCA使用のメリットとして2点あげることができます。

1)運送人(コンテナヤード)に引渡した時点で買い手への引き渡しが完了するので、コンテナヤード内の貨物損害は買い手の責任となる。一方、FOBの場合は船の甲板に積込むまでが売り手の責任ゆえ、コンテナヤードの中での損害は売り手責任となる。

2)FOBの場合、買い手が手配する外航貨物海上保険は貨物が船の甲板に積込まれてから有効となる。すなわち、コンテナヤード内の損害については売り手が「輸出FOB保険」を掛ける必要がある。

FCAにおいては買い手が手配する外航貨物海上保険(ICCのAもしくはB)で輸出国における船積み中の保管や輸送中の事故についても補償される。

*上記コンテナヤードのイラスト下部で示した赤い矢印が買い手手配の外航貨物海上保険で補償される範囲です。FCAとCPTはコンテナヤードまでカバーされていますが、FOBとCFRは船積み以降が補償範囲です。

FOBは長い間使われてきた引渡し条件ゆえFCAに変更することには抵抗があるでしょうが、コンテナ船や航空輸送の時代にはより適したインコタームズを利用するのがよさそうです。

外航貨物海上保険ICC-(A)(B)(C)の補償について
https://www.ms-ins.com/business/cargo/gaiko/assumption.html

輸送費を売り手が負担するCFRとCPTの場合も同様に考えて下さい。

 

次回は、CIFとCIPの外航貨物海上保険をインコタームズ2020になってから計算しましたか?ということについて説明します。

 まとめ

コンテナヤードの施設を知ることでFOBとFCAの違いを理解できます。FOBは船積みまで、FCAはコンテナヤードの入り口まで、が売り手の責任範囲です。コンテナ輸送ではなるべくFCAを使用して効率よく貿易取引を行いましょう。CFRとCPTの関係も同様に理解してください。

 

【プロフィール】
合同会社トロ 代表社員 芳賀 淳(はが あつし) 

大手総合電機、精密機械メーカーにてベトナム他での海外販路開拓や現地法人設立などの海外業務に携わった後、合同会社トロを設立。豊富な海外業務・貿易実務経験を活かしたコンサルティングサービスを、ジェトロや中小機構などの公的支援機関および民間企業向けに提供している。 

URL: https://sub.toro-llc.co.jp/ 

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