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【海外事業のリスク管理】#02 代金回収リスクへの対応

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こんにちは、弁護士の外海周二です。

シリーズ「海外事業のリスク管理」の第2回は、日本企業が海外企業に対して商品を輸出販売する際の代金回収リスクをどのよう回避するかの対応策についてお話ししたいと思います。

代金回収リスクについて

海外に商品を輸出、販売する場合、その代金が回収できなくなることは、事業の存続に関わる重要な問題です。そこで、代金回収リスクを回避するための方策を、いくつかご紹介したいと思います。

まず、当然のことですが、代金を先払いしてもらうことができれば、代金回収リスクはありません。しかし、取引相手との力関係もありますが、代金を先払いで受け取ることができるケースはそうそう多くはないでしょう。

したがって、商品を出荷した後、買主が支払いを行わないケースにおいて、買主に代わって代金を支払ってもらう手立てを用意する必要があります。以下、いくつかの方策を検討したいと思います。

L/C(Letter of Credit:信用状)

L/C(信用状)を使った決済とは、簡単に言えば、支払義務者である商品の輸入者の取引銀行が、商品の船荷書類の提出を条件として、輸出者に対して支払いを約束するという取引です。

L/Cを使った取引では、まず、輸入者の取引銀行(外国のL/C発行銀行)が輸出者の取引銀行(日本の銀行)に対してL/Cを発行し、輸出者は、商品を船積みして船会社から受け取る船荷証券等の書類を日本の取引銀行に渡すのと引き換えに商品の代金を受け取ります。船荷証券等を受け取った日本の取引銀行は外国にあるL/C発行銀行に証券等を送付し、輸入者はL/C発行銀行から受領した船積書類等で商品を受け取り、L/C発行銀行に代金相当額を支払います(その資金は最終的に日本の取引銀行に対して支払われます)。

この決済方法は、取引銀行による与信行為になりますので、輸出者は信用状を開設するための審査を受ける必要があり、それなりに信用力があることが必要です。また、L/C発行銀行の国際信用度が低い場合には、日本の取引銀行が船荷証券等の買取りに応じないこともあります。

ファクタリング

ファクタリングは、民間のファクタリング会社が、売主の代金債権を買い取り、売主に代わって買主から代金を取り立てる取引です。

国際ファクタリングの場合、日本のファクタリング会社は、通常外国企業の信用力を把握することができないため、輸入者の国で提携する外国のファクタリング会社に対して輸出者から買い取った債権を譲渡し、外国のファクタリング会社が輸入者から代金を回収することになります。そのため、日本のファクタリング会社は輸入者の信用リスクを負わず、最終的には、外国のファクタリング会社が回収リスクを負担することになります。

ファクタリングにおいては、L/Cと異なり、輸出者の信用力は問題とされず、輸入者の信用力があれば取引が可能となります。もっとも、国際ファクタリングを取り扱う金融機関が限られており、コストもやや高めになるというデメリットもあります。

貿易保険

貿易保険は、民間の保険では救済することができないようなカントリーリスクに伴う損失等を補てんすることができる公的な制度です。日本においては、政府が出資する独立行政法人日本貿易保険(NEXI)が貿易保険を取り扱っています。
(最近は、手続きの簡便さや多彩な商品性から民間の保険会社が提供する取引信用保険の利用も拡大しています)

貿易保険では、取引先の倒産等の信用危険をカバーできるだけでなく、輸出先の国での新規制発動による輸出不能、戦争、テロ、自然災害等の非常危険(カントリーリスク)をカバーすることができます。また、上記リスクにより船積できないことによる損失(船積前のリスク)をカバーできるという点も、L/Cやファクタリングにはない特徴です。

保険の種類として、リスクある取引のみの個別保険、複数の輸出国・取引先をカバーする包括保険があります。

まとめ

以上のように、海外取引における代金回収リスクを回避するための様々な制度がありますが、当然ながら、いずれも一定のコストがかかります。また、貿易保険のようにカバーできるリスクの範囲が異なるものや、輸出者、輸入者の信用力により利用できないものもありますので、輸出企業は、自社の取引への利用可能性とコストを考えて方法を選択するということになるでしょう。

▼バックナンバー
「海外事業のリスク管理」シリーズ
第1回 #01 準拠法と裁判管轄

<著者プロフィール>

外海法律事務所 弁護士 外海周二氏

東京大学法学部卒。2003年弁護士登録。米国ボストン大学ロースクールにてLL.M(法学修士)を取得し、米国ニューヨーク州弁護士の資格を保有。シンガポールの現地法律事務所で1年間勤務した経験を持ち、日本企業の海外進出支援及び海外取引契約の作成などに数多く携わっている。
http://www.tonogai-law.com/

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