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ラオスは貧困から脱却することができるのか?ASEANシリーズ【第9回】

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ラオスは、2010年に一人当たりGDPが1,000ドルを超えたばかりで、東南アジアではミャンマー、カンボジアと並んで国連に後発開発途上国(LDC:Least Developed  Country)に指定されています。

近年のラオスの経済は、8%近い成長をしており、2020年にはLDC、および貧困から脱却することを目指しています。しかし、内陸国で山岳面積が70%に達していることから来る交通の不便さは、社会インフラの整備や国民生活の向上を妨げています。

中国を源とするメコン川が交通・物流の手段として活用されているものの、国内の物流の悪さは特に際立っています。保健・教育などのソフト面、そして水道・道路などハード面でのインフラ整備はこれからと言ったところです。

ラオス国内においては、タイとの関係が深いことからタイバーツが流通し、経済的には水力発電によるタイ向け売電が行われるなど、金融・経済両面において、タイへの依存度を高めています。

ラオスの経済発展に不可欠な工業化については、道路や橋梁など、インフラ整備による物流の改善が課題です。そのような背景のもと、アジア開発銀行(ADB)やアジアインフラ投資銀行(AIIB)などからの援助によるインフラ整備、そして外資誘致による製造業の発展が模索されています。

それでは連載第9回の今回は、東南アジア地域で最も貧困な国のひとつであるラオスが、どのように発展し貧困から脱しようとしているのか、その実情を探ってみましょう。

前回記事はこちら

 

 

▼目次

貧困測定の定義

貧困についての定義として、「相対的貧困」と「絶対的貧困」のふたつの概念が挙げられます。

「相対的貧困」とは、先進国の貧困を定義する概念で、世帯所得の中央値(データを並べた時に中央に位置する数値のこと)の50~60%を貧困基準と定め、所得がそれ以下の世帯を「貧困」と定義しています。日本に当てはめれば、一人世帯で122万円、二人世帯で173万円とされています。また補完的な手段として、「1日3回の食事(ができない)」、「2足以上の靴(を持っていない)」、「医者に行く(ことができない)」などの具体的生活項目も、その判断基準として援用されています。

一方、「絶対的貧困」とは所得・栄養・健康・教育などの水準が著しく低く極めて貧困な状態を指し、最低必要条件の基準が満たされていない状態、つまり、最低限必要な食糧と、最低限の非食糧支出ができない状態を言います。世界銀行は、「1日1.25ドル未満で生活する人々」と定義しています。

ラオスの「絶対的貧困者」、もしくはそれに近い人は、人口670万人の過半を超えるとされています。このように、ラオスは開発途上国の中でも特に貧しい国である「後発開発途上国」に分類されています。果たしてラオスは、このような状況から脱出することはできるのでしょうか。

 

ラオスは貧困から脱することが出来るのか

メコン川は、中国・雲南省からカンボジア・ビエンチャンまで交通や物流に活用されています。同時に、中国はインフラ整備に向け、ダム工事などへの投資意欲を高めており、中国から多くの建設・土木業者や労働者が流入しています。

特にラオスは、ボーキサイトやカリウムなどの鉱物資源が豊富で、積極的に資源外交を展開する中国にとり、その資源は垂涎の的(すいぜんのまと、何としてでも手に入れたいと思う貴重なもの)と言ったところです。

これまで、ラオスはタイへの売電を行っていたことから、「東南アジアのバッテリー」と評されてきました。従来、アジアのインフラ投資はアジア開発銀行(ADB)を主体として推進されてきましたが、今後、中国を主体としたアジアインフラ投資銀行(AIIB)が動き出せば、二つのエンジンを持つこととなり、アジアの開発が大きく進むことになるでしょう。

AIIBの投融資については、環境に配慮しない案件を取り上げることになるのではないかと懸念されています。しかし、ラオスにとって開発投資が積極的に行われることは、経済発展の起爆剤として歓迎されるところです。

ただ、ラオスのGDPの4割は農業で、国民の80%近くは自給自足的な農業に従事しています。はたして、現在の農業主体の国家運営から、外資導入による工業化を進め、教育・保健などの向上を目指すバランスの良い発展を遂げ、貧困から脱することが出来るのか、注目されるところです。

 

まとめ

LDCが集中するのは、サブサハラ(サハラ砂漠以南)とアジアの国々です。これまでも、様々な国が開発援助を受けて経済的な離陸を試みました。しかし、現実的には開発援助で貧困から脱することは難しいのが現状です。多くの国において、開発独裁により一部の政治指導者や、その取り巻きが富を蓄積する一方で、国民生活は貧困状態から脱するには至らないケースが散見されてきました。

このような例から、ラオスにおいても経済発展とともに国民生活が向上し、貧困から脱することができるのか疑問が生じます。とはいえ、ADBとAIIBによる開発援助が功を奏する可能性がある点については、付け加えておきたいと思います。

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