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日銀によるマイナス金利導入の背景とその功罪とは? 

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1月29日、黒田日銀総裁は、金融機関が日銀に保有する当座預金に適用する金利の一部を、マイナスとすることを発表しました。マイナス金利政策は日本では初の導入で、なじみの薄いものであることから、日本の金融市場の混乱はしばらく続く見込みです。

このマイナス金利は、デフレ脱却を目指すアベノミクスの「第一の矢」である、大胆な金融政策の一環と位置付けられるものです。そして、その功罪について現在のところでは議論が分かれていますが、実体経済への影響が判明するにはしばらく時間が必要と思われます。

はたして、マイナス金利導入は経済的効果を発揮して景気浮揚の起爆剤になるのか、それとも日本経済に混乱をもたらすだけで、その効果は限定的にとどまるのか、本コラムにおいてマイナス金利導入の背景とその功罪について考えてみたいと思います。

 

 

▼目次

マイナス金利導入の背景

2013年3月に就任して3年、黒田日銀総裁はデフレ脱却を目指して量的・質的緩和策(QQE)を打ち出し、株高・円安を演出してきました。その過程で日銀は、金融機関が保有する長期国債を大量に買い上げてきましたが、その結果、「17年央には市場に流通する国債が枯渇するのではないか」との量的限界懸念が浮上するなど、期待に働きかける黒田日銀による金融政策の限界が指摘されるようになってきました。

一方、QQEの効果については、当初予定したように資金が個人・企業に回らず、当初2年でインフレ2%達成と言っていた目標も、日銀は先延ばしを繰り返し、今や早くても17年度ということになってしまいました。

そして、年初来①原油安、②中国不安、③米国景気懸念などから株安・円高の流れが強まり、市場は日銀の追加緩和を待ち望む状況となったのです。これに対して、黒田日銀はマイナス金利を導入し、これまでの質的・量的手法に加え金利操作を行う、つまり、ありとあらゆる手法を駆使することとなったのです。

マイナス金利政策はこれまでスイス、デンマーク、スウェーデン、さらにユーロ圏(ECB:欧州中央銀行)において導入されています。しかし、メソポタミアに始まる金融史において、お金を借りれば金利を払うのが常識とされてきたことからすると、この政策は超デフレ経済という異常事態への対応であり、劇薬であることは明らかでしょう。欧州においてもその歴史は短く、また日本において導入されて間もないことから、その功罪についてはしばらく時間をかけて検証する必要があるというのが実情です。

 

マイナス金利の功罪

マイナス金利の効果については、借入コストの減少に伴い資金需要が増え、経済活性化につながることが期待されています。また、企業のみならず、個人についても住宅ローン金利の低下のメリットを受け、住宅投資が活発化することなどが期待されています。

また、日銀の狙いにはポートフォリオ・リバランス、つまり資産の入れ替え効果もあります。金利の低下により、機関投資家や個人投資家が国内での低利の国債・預金での運用から、海外投資や株式投資を増やし、円安・株高の実現を図るというものです。

一方、マイナス金利の問題も多々あると見られています。「預金金利はマイナスとならないだろう」と黒田総裁が繰り返すように、今後預金金利は、貸付金利に比べ下がりにくい状況が続くことが予想されます。つまり、金融機関の利ザヤが縮小することから、金融機関経営への負の影響は否めないのです。すでに、金融株が下落して株式市場に下押し圧力を加えているように、マイナス金利は金融機関を弱体化させることとなり、金融システムを不安定化させるリスクを秘めているのです。

一方、マイナス金利がさらに進むと、国が国債を発行すれば利息を稼げ、そして個人が住宅ローンを借りれば利息を受けとれることが現実化するのです。つまり、官も民も財政規律を忘れ、モラルハザードを起こすことなど、そのデメリットが目立ってくるのにも要注意です。

 

まとめ

黒田総裁はマイナス金利政策に関して、マイナス幅の制限はなく、これからいくらでも緩和できると語っています。はたして、このような金融常識を覆したマイナス金利の世界で、国民の経済生活が担保され、 経済成長が実現されるのか、今後の動きを注視すべきでしょう。

また、黒田総裁は、これまで第一弾においてQQE導入、第二弾でハロウィーンの追加緩和(2014年10月のハロウィーンの時期に行われた追加緩和策のこと)、第三弾のマイナス金利導入と、市場にサプライズを与えてきました。まだまだ新たな緩和政策が打ち出される可能性は高いのですが、今回は円安・株高効果は3日ももたず、円高・株安へと市場は反応しました。いよいよ黒田日銀の金融政策は,その真価が問われる正念場を迎えたと言えるでしょう。

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