去年から今年にかけて弊社のお客様にも何回か税務調査が入りました。税務調査の対応は時間をとられることも多く、なかなか骨が折れました。
今回はそんなインドの税務調査でよくある指摘ポイントについてお話したいと思います。
▼目次
外資系企業は狙われる?
「途上国では外資系企業が税務調査で狙われる」という都市伝説はどこの途上国でもあると思います。ただ個人的には外資系企業というよりは
①お金がある≒現金預金残高が多い
②海外取引が多い
企業が狙われる傾向にあるような気がします。特に②は見解の相違により課税額が変わりますので、税務署としても主張しやすいようですね。
業務に関係あるかないかの指摘
これは間接税に関する指摘ですが、特定の支出について「これは会社のビジネスのためではなくて従業員の個人のための支出だから関連する間接税の支払いの相殺を認めない」という指摘です。
正直、個人的には実にくだらない指摘だし、仮にそうだとすると所得税・法人所得税との整合性が取れなくなると思うのですが、管轄の部署が違うらしいのでOKという認識です。ただ、その性質上指摘金額も大きくはなりにくいのであまり気にしなくてよいかと思います。
業務の行われた場所に関する指摘
サービス業の場合目に見えないので、そのサービス提供地がインド国内であったか国外であったかにより間接税の課税関係が変わってきます。そのため、書類上その提供地が曖昧であった場合には、とれる限りの最大限の課税を主張してくる可能性があります。そのため、注文書からインボイスまでしっかりサービスの提供地が分かる形で書類を作成しておく必要があります。
PE認定による指摘
会計事務所をやっていると一番恐ろしいのがPE(※)認定です。今までの話は全てインド法人の利益や取引量の範囲内でしか課税されないのですが、このPE認定された場合には親会社や関連会社の利益や取引規模に応じて課税されます。そのためケタ違いの指摘を受ける可能性があります。
※Permanent Establishment:支店や事務所、工場といった事業を行う一定の場所のこと。
具体的には「子会社が親会社のために動き、本来インドに落ちるべき利益が不当に海外に落ちている」とみなされる場合この指摘がなされます。勘のいい方は気づいていると思いますが、実に曖昧なものなので指摘されやすいのです。
インドの税務訴訟
当局の指摘に納得いかない場合、税務訴訟になりますが、私の経験上インドの司法はしっかりしていて、税務訴訟までもつれるとほぼ100%正しい主張のほうが勝っています。となると、あとは税務訴訟にかかるコストと税務署から指摘されている追加納税額との兼ね合いでの判断ということになります。
まとめ
インドの税務調査で気を付けたいのはPE認定の有無。請求書や契約書、雇用契約書に入れる文言の違いである程度そのリスクを小さくすることができるので、専門家との事前協議が必要。
ただし、もし不当な主張がなされたとしても税務訴訟まで持ち込めば勝てる可能性が高い。
<プロフィール>
野瀬 大樹(のせ ひろき) 公認会計士・税理士
大手監査法人勤務の後、NAC国際会計グループに参画、インドのニューデリーにて主に日系企業をサポートするコンサルティング会社NAC Nose India Pvt. Ltd.を設立し、同代表に就任。インド各地にて、会計・税務・給与計算に加え、各種管理業務に関わるコンサルティングサービスを提供している。
事務所HP:http://in.nacglobal.net/