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コロナ第二波の日系企業への影響

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8割の日本人が消えたインド

インドで日本企業の進出支援を行っている公認会計士の野瀬大樹です。

5月、日本でこれほど「インド」という言葉を聞くことはなかったのではないでしょうか?

これが良い意味なら嬉しいのですが、4月後半から5月半ばまでの1か月の間インド全土で猛威を振るったコロナの第二波は悪い意味で日本において非常に有名になってしまいました。

現在は私が住んでいる首都デリーや西部のムンバイでは感染者数の増加はピークを越えた感があり一息ついた印象です。バンガロールやチェンナイがある南部はまだピークの最中ですが、強力なロックダウン措置をとっているためデリーやムンバイ同様あと1週間ほどでのピークアウトが期待されています。

現地日本人社会でも一時日本へ退避をするかどうかの議論が起きていたのですが、5月3日にデリー在住の邦人女性がコロナでお亡くなりになったニュースにより状況は一変、一気に退避への流れとなりました。

5月中頃には、荷物もそのままに日本へ退避する駐在員及びその家族が殺到し、現地でPCR検査が間に合うのかどうかなども大きな問題になりましたが、商工会の協力でなんとか事なきを得て順次日本へ帰国が進んでいます。

統計上、約1万人いた在インドの日本人はおよそ2000人になったと言われており、これは現地に残っている私の体感とも一致します。帰国される方と色々メッセージ交換もしましたが、再びインドに戻ってくるタイミングは「不明」だという方がほとんどでした。

インドで予想される第三波、日本でのワクチン接種状況、五輪時の渡航の状況など、不確定要素が多すぎて判断がつかない状況とこのことです。一部の人は「年内にインドに戻れないのは覚悟している」と考えているようで、前例のない事態の中での苦労が見てとれます。

そんな「駐在員不在」の状況が続くインドの日系企業においては今後どのような事態が想定されるでしょうか。

① 「居住取締役」問題

インドでは、会社において最低1名の「インド居住者」が必要となります。この場合の居住者は4月~3月に183日以上インドに滞在する人(国籍は問わない)を指すのですが、このコロナ騒動において取締役を務めている日本人駐在員がその要件を満たさなくなる可能性が高くなります。

この問題は昨年もあったのですが、コロナという仕方ない理由であるため2020年3月期、2021年3月期はその要件が免除されました。この状況だとおそらく2022年3月期も免除される可能性が高いですが、昨年も免除の発表がされたのは会計年度が残り183日を切ったあとだったので、今年も発表が遅くなる可能性は高く、安心はできない状況です。このあたり今のうちから信頼できる居住者を手当てしておく必要があるでしょう。

② 課税ステータスの問題

これは去年こちらのコラムでも書きましたが、日本での居住期間が長くなると、給与に関して日本でも課税される「2重課税」の問題が生じます。ただこちらは昨年に皆さん一度対応されているのでそれほど大きな問題にはならないと思います。

最終的に確定申告する国で外国税額控除をとって終わりになります。

③ 内部統制不在による不正の増加

こちらが今回私が懸念していることです。

今回は皆さんあまりに急に帰国されたため、現地法人における権限移譲などが完全に終わらずに離れ離れになってしまい、現地の内部統制の仕組みが不明確になっているケースが散見されます。

もちろん遠隔でもウェブで会議や確認はできますが、相互監視の目が行き届きにくくなるため、この状況が長引いた場合、不正などが生じるリスクが高まることが予想されます。

弊社のような外部のコンサル会社に不正調査などを定期的に依頼されるケースもありますが、今回のようなロックダウン状態が再び生じると、現地のコンサル会社であっても物理的な訪問が不可能になるので、その実効性も100%とは言い難いのが現実です。

以上のような懸念が存在するため、日系企業においては一刻も早いインドのコロナ禍からの回復が期待されます。幸いにしてインドでも徐々にワクチン接種は進んでおり、現時点でおいて1億人を超える人が接種を終えています。第二波の状況がかなりひどかった反動でワクチン接種に皆積極的である点も影響しているようです。

日本と同じく、一刻も早い状況改善が期待されます。

まとめ

・インド在住日本人は約8割が日本に緊急帰国
・急な帰国であったため、現地での内部統制の問題が懸念される。
・ワクチン接種は比較的順調。

【プロフィール】
野瀬 大樹(のせ ひろき) 公認会計士・税理士

大手監査法人勤務の後、NAC国際会計グループに参画、インドのニューデリーにて主に日系企業をサポートするコンサルティング会社NAC Nose India Pvt. Ltd.を設立し、同代表に就任。インド各地にて、会計・税務・給与計算に加え、各種管理業務に関わるコンサルティングサービスを提供している。

事務所HP:http://in.nacglobal.net/

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