南アフリカ共和国は、今世紀入り後の国際商品市況の高騰の過程で資源国としての頭角を現し、また、アフリカで初めてワールドカップが行われた国として、その潜在的な成長力をアピールしてきました。
BRICSは当初、ブラジル、ロシア、インド、中国の4か国でしたが、資源高を追い風にした成長力を背景に、南アフリカも含めたBRICS5か国として数えるようになりました。
はたして、BRICS5か国国目にカウントされた南アフリカは現在、他のBRICS諸国に遜色ない国として機能しているのでしょうか。一時の商品市況高の追い風がなくなった現在、南アフリカは世界の主要な新興国と呼べるのか、議論の分かれるところです。
新興国シリーズ第10回目の今回は、その答えを見つけるべく、日本から遠く、馴染みの薄い南アフリカの実情と潜在的な成長力を探ってみましょう。
▼目次
BRICSは4か国か5か国か
中国主導により設立されたBRICS銀行は、本店を上海に置き、総裁はインドから選出、資本金は将来的に1千億ドルとすることなどが決定されています。出資金の配分は、当面の500億ドルについて、各国が100億ドルを分担することとなっています。
この銀行設立や、BRICSサミットへの参加などに見られる通り、南アフリカは主要新興国から成るBRICS5か国の仲間入りを果たしているという見方も可能でしょう。しかし、2001年に、ゴールドマンサックスが主要な成長国をBRICSと命名した時には、ブラジル、ロシア、インド、中国の4か国が想定されていたのです。
南アフリカの人口は約5千万人。名目GDPは3,500億ドル(世界30位程)であり、経済規模は神奈川県程度に過ぎません。BRICSの4か国がそれぞれ世界でベスト10に入る大国であることから、アフリカの成長性を勘案しても、並列して語ることは難しいと言っても良いかも知れません。
アフリカは最後のフロンティア
国連人口予測によれば、欧州の人口は2020年以降減少を始め、アジアの人口の伸び率は、急速に鈍化すると見られています。しかし、現在10億人いるアフリカの人口は、当面10%前後の伸び率を示すと予想され、2050年には20億人に達すると見られています。
アフリカはこれまで、経済成長率を人口増加率が上回り、年々貧困化が進んでいると言われてきましたが、21世紀に入った後は、年5%程度とアジアに次ぐ経済成長を達成するに至っています。その背景には、人口ボーナスに加え、消費市場の成長、そして資源の存在があります。
このように、2050年に向け人口の増加が期待され、成長の可能性を秘めていることから、アフリカは「最後のフロンティア」と呼ばれるようになっているのです。
南アフリカを筆頭とするアフリカ地域への投資は、先進国よりも中国をはじめとしたBRICS諸国がよりその動きを強めています。近い将来、世界の主役が先進国から新興国へと変わることを予見させる動きと言っても過言ではないでしょう。この意味でもアフリカは、今後注目を要する地域なのです。
資源国・南アフリカ
南アフリカは、イギリスの植民地になる前はオランダの植民地でした。その後、オランダと英国間で起きたボーア戦争により英国の植民地となり、独立したのは1961年のことで、世界でも有数な資源国ながら、人種差別の国として孤立してきたと言っても良いでしょう。
鉱物資源については、世界で採取される金のおよそ50%が南アフリカで産出され、他にはダイヤモンド、プラチナ、レアメタルなどの貴重な天然資源が豊富に埋蔵されているようです。
一方、白人と黒人の人種差別を合法化させるアパルトヘイトについて、その人種差別政策に終止符が打たれたのは1994年のことです。今でも、その影響は深く残っており、所得格差が非常に大きい事や、殺人事件が頻発することなどが、社会問題化しています。
一方で、割安な人件費を求めて海外資本の流入が活発で、ナイジェリアと共に成長が期待される、アフリカの最有望国の1つと言って良いでしょう。
まとめ
南半球の資源国の中で、高金利国として南アフリカと並列的に挙げられるのはオーストラリアです。ただ、オーストラリアは、政情が安定しており国際商品市況下落に伴い一時的に通貨の価値が落ちたとしても、強い経済環境が整っていることから、その後は回復する傾向にあります。
一方、南アフリカの場合は、経済に安定感が乏しく、成長条件が未だ十分には備わっていないことから、通貨ランドは下落の一途を辿っています。この点は、投資を行う場合に事前に検討すべき、重要なチェック項目と言えるでしょう。