保険会社の担当者からみた
①中国国内における邦人企業の取引状況の変化
②保険活用時の留意点
について、外資系保険会社の担当者にインタビューを実施いたしました。
前回の記事(前編)はこちら↓↓↓
【 対談 】中国国内における邦人企業のローカル取引と取引信用保険活用時の留意点を外資系保険会社の担当者に聞いてみた(前編)
(以下、インタビュー)
インタビュアー
「それでは、具体的に国内で付保する取引信用保険と中国国内で行う
取引信用保険の違いについて、いくつかポイントがあれば教えてください」
S氏
「基本的には日本国内で行う取引信用保険と海外(中国国内)で行う取引信用保険も
違いはありませんが、2つの点で留意したほうがいい点があります。
1つは信用保険に対する考え方です。
日本では外資系の取引信用保険の専門保険会社と日本の損害保険会社とでは、
同じ信用保険ですが、保険会社のスタンスが異なります。
中国を含めて海外では、前者がスタンダードとなりますので、
そちらのスタンスの差を理解するという言い方でもいいかもしれません。
例えば、日本の損害保険会社の信用保険は、
他の損害保険と同じように万が一の事故が起こった場合に保険金をお支払いする
というものですから、保証限度額が期中に減少するというケースは少ないかと
思います」
イ「そうですね。いわゆる根保証的に、担保の一手段という認識が強いと思います。
私が過去担当していた案件でも、国内損保会社が期中に限度額を下げたケースは
一回もありませんでした。
海外拠点が現地の企業に対して付保する場合は、
日本の保険会社ではなく、多くは外資系(欧米系)の保険会社、
コファス社やユーラーヘルメス社、アトラディウス社が保険会社となると
思うのですが、そこに違いがあるということでしょうか」
S「はい。そういった海外の信用保険を専業とする会社は、
取引信用保険を担保というよりも与信債権管理のサポートの手段と
位置付けているのが一般的です。
つまり、保険対象先に関して『業績が著しく悪くなった』、
『信用不安の情報が入った』という情報を契約者に提供し、
その情報を根拠として保証限度額を一部減額するといったことがあります。
保険会社としては、契約者が、その情報をもとに相手先と交渉してサイトを
短縮するとか、取引量をセーブするなどの何らかのアクションをとっていただく事で
損失額の減少に努め損失額の減少に努めていきましょうという事になります」
イ「保険会社と契約者で一緒に取引先の与信管理機能を担うということですね。
逆に言えば、この前提があるために契約時の枠の設定も柔軟な印象です。
保険料も一定の限度額に対してではなく、実際の取引量に対して保険料を
設定するケースが多いですね。」
S「保険会社と契約者で一緒に取引先の与信管理機能を担うということですね。
逆に言えば、この前提があるために契約時の枠の設定も柔軟な印象です。
保険料も一定の限度額に対してではなく、
実際の取引量に対して保険料を設定するケースが多いですね。」
イ「国内よりもより厳格にしておかなければという印象はありますね。
もう1つはどういった点でしょうか。」
S「これは日本国内と中国(海外諸国)の差ということなのですけれども、
日本国内であれば、国内の経済環境が悪化したことに起因して
日本の損害保険会社が保証枠(限度額)を絞るとか、
新規の引き受けを制限するといったことは現在の日本の状況では
考えられませんが、
海外においては、その国内の環境、保険事故となる支払遅延の発生状況等によって
既存の契約者に配慮をしながらも、新規の引き受け、
限度額等でスタンスを変更することがありえます」
イ「リーマンショックなどの時もそういった話を聞いたことがあります。
中国においても最近新規の引き受けを制限しているという保険会社がある
といった話を聞いたことがあります。
今回お話しいただいたどちらのポイントも保険のみで取引の意思決定を依存
してしまうことにリスクがありそうですね。
やはり与信管理と信用保険は両輪としてうまく使っていくべきということだと
思います。
今回は貴重なお話をどうもありがとうございました。またよろしくお願いします」
S「ありがとうございました。」