第0章の前回では、そもそも与信管理とはどういうもので、なぜ必要なのかということを学びました。今回からは、いよいよ本連載のメインテーマである海外における与信管理について触れていきたいと思います。まずは、国内の与信管理と海外の与信管理の違いとは何かについて、そのあとに具体的に情報収集について見ていきましょう。
▼目次
国内と海外の与信管理の違いとは何なのか。
海外取引先の与信管理は、国内企業の場合と何が異なるのでしょうか。国内取引も海外取引も基本的には同じですが、海外固有の状況として、①法・商習慣・言語が異なる、②取得できる情報が限定的、③為替リスクの影響を受けやすい、④カントリーリスクの存在といった違いがあります。国内与信管理でおさえておくべき項目に加え、海外特有の注意すべき項目が増える分、海外与信管理は国内与信管理の応用編と言えるかもしれません。
本連載では、この国内与信管理の応用編とも言える、海外与信管理に関して学んでいきます。上記の国内与信管理との違いに関しても、連載が進むにつれしっかりとふれていきますので、楽しみにしていて下さい。
本連載を学んでいくことによって、ゆくゆくは安心して海外企業と取引ができるようになっていただけたら、大変うれしく思います。それでは次に、海外与信管理の第一ステップとしての「情報収集」について見ていきましょう。
直接情報を活用した企業情報収集とそのポイントの把握
取引先の与信リスク分析が正確にできるかどうかは、取引先に関する情報(信用情報)を網羅的に、かつ正確に把握できるかどうかにかかっています。信用情報には、自社や取引先企業から直接取得する「直接情報」と、それ以外の「間接情報」の2種類があります。まずは「直接情報」を見ていきましょう。
- 決算書(監査済みのもの)(Audited Financial Statements)
取引先の過去の業績や財務内容を把握するという点で、最も重要な情報源になります。
会計監査がされていない場合には、情報としての信頼性は低下します。
ポイント
→リスク要因把握の精度を高めるためには、決算書そのものだけでなく、勘定科目ごとの詳細を解説した詳細説明部分(notes)も合わせて取引先から取得する!
- 事業計画書(Business Plan)
通常取引における事業計画書の取り付けは困難ですが、大口かつ長期の与信をおこなう際には非常に重要な存在になります。次期計画だけでなく、3~5年の中期計画も入手することが望ましいでしょう。
ポイント
→取引先の抱えるリスク要因の把握のためには、計画値と実績値を対比することが重要!
- 自社との過去の取引の記録
自社との過去の取引の記録とは、例えば「与信限度額」「決済条件」「債権残高」「契約残高
」「過去支払履歴」などのことを言い、取引先のリスク要因を、自社との取引関係推移から把握するための情報源です。自社保存記録であるため、情報としての信頼性・希少性は高く、以後の与信方針策定の重要な判断材料になります。
ポイント
業界平均の数値などと比較することにより、リスク要因がより明確に!
まとめ
信用情報の収集においては社内・社外の情報を集め、総合的に判断するようにこころがけましょう。
次回は、情報収集の内の「間接情報」について学んでいきます。
次の記事はこちら→第1章(2)信用情報の収集について(間接情報編)