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新興国リスク【第7回】トルコ・エルドアン大統領の指導力に翳り

      2016/02/24

 

キリスト教世界とイスラム世界は、今後融合するのでしょうか?

東西文明が交差する街イスタンブールを首都とするトルコ。

2002年に世俗主義を掲げる公正発展党(AKP)が政権を握って以来、同党を基盤とするエルドアン大統領(2002~2013は首相)は、EUへの加盟を悲願としつつ高度成長を進めてきました。

しかし、近年、同国の経常赤字は拡大し、失業率の増加とともに景気が減速しています。

このような状況で6月に行われた総選挙では、与党AKPが過半数割れに追い込まれてしまいました。さらに、組閣に失敗し再度総選挙が行われる見込みと政局は混迷―

このように、エルドアン大統領の指導力に翳りが見られ、今後のトルコ経済の成長への不安が拡大しています。

今回は、キリスト教世界とイスラム教世界の「文明の融合」を進める上で象徴的な存在であるトルコの今後について考えてみましょう。

前回の記事はこちら⇒新興国リスク【第6回】ブラジル経済が再び盛り上がる日は?成長失速の最大要因2つ

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東西文明融合の地となるか?

西欧社会はトルコを受け入れるのか―?

サミュエル・ハンチントンは自著「文明の衝突」において、文明に着目して冷戦後の世界秩序を分析しました。

とりわけ、西欧キリスト教文明とイスラム文明が激突するエーゲ海に注目したことが特筆されます。

そのイスラム文明の西への窓口となっているのが、トルコの首都イスタンブールです。

かつてはコンスタンチノープルと呼ばれ、ギリシャやローマ帝国の植民都市として発展し、さらに東ローマ帝国の首都として繁栄しました。

その後はオスマン帝国の首都としてイスラム化し、ペルシャの影響も受けて現在に至っています。したがって、「文明の衝突」の街とも言われるのです。

このように、トルコは「文明の衝突」の地としての性格がありますが、「文明の融合」の国となる可能性も捨てきれないでしょう。

現在、トルコは(建国の父ケマル・アタチュルクの西欧化路線を踏襲して)政教分離を掲げEUへの加盟を希望しています。

EU加盟の是非がキリスト教とイスラム教の「文明の融合」への試金石として注目されるところです。

トルコの直面する民族問題と外交政策

中東諸国の中で政治的安定を維持し成長を促進させているトルコにおいて、(1)クルド人問題と(2)外交政策の行きづまりが国家の不安定化要因と言えるでしょう。

トルコの外交政策は欧州に対してはEUへの加盟を悲願とし、また近隣諸国とは「ゼロプロブレム外交」を掲げて穏便な政策を進めて来ました。

しかし、ここにきてクルド問題やISへの対応の不備など国内外からの不満の声も高まっています。

(1)クルド人問題

国を持たない世界で最大の民族と呼ばれているクルド人は、トルコのみならずシリア、イラク、イランにまたがって3000万人近くが暮らしていると推測されています。

トルコ国内では30年来非合法組織が分離独立を図っており、AKPはこれまでクルド人との融和策を図ってきました。

しかし、ISに包囲されたシリア北部のクルド人の救助にエルドアン大統領が渋ったことから、クルド人の反発が高まっています。

今回の総選挙において、クルド人系政党・国民民主主義党(HDP)が進出しました。

今後、クルド人が自治拡大を目指す方向を示すなど、トルコ国内において民族問題が不確実要因となる可能性が拡大しています。

(2)外交政策の行きづまり

また、これまで一定の友好関係を維持していたイスラエルやエジプトとも対立が深まっています。

今後、外交政策の見直しにより、シリアへの過激派の渡航禁止など周辺国からの期待に沿う動きが強まる可能性があるでしょう。

このように、13年間にわたり国家のトップに君臨し、(「エルドアン宮殿」と言われる豪壮な大統領府を建設するなど)権勢を強め、さらなる大統領権限拡大を狙って6月に行われた総選挙でしたが、AKPが敗退したことから、エルドアン体制の今後の変化が注目されるところです。

トルコ経済の行方

成長著しい新興諸国群MINTの一つであるトルコは、これからも投資先として注目されることでしょう。

特に、2000年代に入ってからの経済成長は著しく、エルドアン体制下において外資を誘致した経済政策により、2004年の時点で約4,500ドルであった1人当たりGDPは2010年には10,000ドル超えまで上昇しました(2014年の1人あたりGDPは約10,400ドル)

ただ、新興国ブームは去りつつあります。

実際、14年の成長率は2.9%に止まり、失業率は11%に達しています。

このような状況で、通貨トルコ・リラは過去1年で20%余りと大幅に下落しており、さらに経常赤字の赤字幅が拡大していることから、さらなる通貨安に見舞われ金融市場が混乱する可能性も否定できません。

まとめ

対立が激化するキリスト教世界とイスラム世界は、はたして今後融合するのでしょうか?

現在の世界は政治的・経済的に米国の一極構造であり、中東情勢(とくに過激派組織「イスラム国」(IS))の存在を見るにつけ東西文明の統合は難しいように感じられます。

その意味でも、文明融合への期待を持たせてくれるトルコ、そしてその首都イスタンブールの経済発展の行方には注目したいところです。

 

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