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日本企業が直面するトラブル6:高品質の日本製品がなぜ売れないのか(公認会計士 野瀬大樹)

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▼目次

日本製が高品質であることは伝わっている

「家電製品なら、どのブランドが一番好き?」

とインド人に聞くと、まず間違いなく「Sony」と答えが返ってきます。

「では実際に買うのはどのブランド?」

と聞くと、中流家庭であればSamsungかLGとなるのでこのあたりはいつも不思議に感じます。

実はこういった「ブランド比較」は結構いい加減で、彼ら彼女らにとって各ブランドがどの国のメーカーであるかの認識も薄いのです。例えば、Samsungが日本発だと思っているインド人は多く、LGはインド独自のブランドだと思っている人もいるくらいです。テレビやラジオでのコマーシャル、店頭販売での広告戦略が、このような印象につながっていると思われます。

何かにつけ自慢をしたがる国民性

ところでインドは国土が広いので、北インドと南インドでは国民の性格も異なります。北インド、特にデリーの人はとにかく自慢が大好きで、他人と比べて良い暮らしぶりかどうかを気にかける人が多いです。

家に人を招待することも多いので、家電製品がすべてSony製であればそれだけで自分がいかに豊かであることを自慢することができるのです。他にも地下鉄の中で最新のiPhone7を使っている人がいれば、そのファッションや持ち物まで注目されます。

豊かさの自慢をする最たるイベントが結婚式です。インドの伝統的な結婚式は、白馬に乗った新郎が、ご近所に響き渡るよう賑やかさを出すための音楽隊を引き連れて豪華な馬車で新婦を迎えに行きます。ミドルクラスでさえ結婚式は1000人以上も招待する派手婚を行うのが通常で、数百万ルピーもの高額な費用を賄います。新郎側も新婦側からどれだけ高価な贈り物をもらえたかを、招待客に対して微に入り細に入り披露します。

なぜ日本製品が苦戦するのか?

さてここで不思議なのが「どうしてそんなに人気があるSony製品よりも、SamsungやLG商品のほうが圧倒的存在感を見せるのかということ、そこは商売上手なインド人、どんなに「いい」と思っているブランドであってもやはり財布の中身を見て「高い」と思い、購買を思いとどまってしまうのです。

私はよくインド人の友達に「Sony商品があと2割安かったら絶対に買う」というニュアンスのことを言われます。日本製品といえば「高品質で高価格」というイメージがあるのですが、インド人が求めているのは「中品質で中価格」。そのラインにうまく韓国企業がマッチしたと言えるでしょう。同じ理由からインドは世界有数のiPhoneが苦戦している市場でもあります。やはり「高い」ものに対する抵抗があるのでしょうね。

これは家電に限った話ではなく、その他の製造業やサービス業でも同様です。日本製品の品質がよいことは皆よく知っているのですが、「少しでも安いもの」を探す国民性から結果として日本製品は「ほしいけど選ばれない」という非常にもったいない結果になることが多いのです。

「見栄っ張りだけど、財布の紐は固い」というのがインド人中間層の特色なのかもしれませんね。

まとめ

 ①品質よりも値段の安さ、②値段よりも高く見えるパッケージ、③誰にでも一目で自慢できる商品認知度の高さ、④セール時期の通知がインド人に物を売るためのコツです。

<プロフィール>

野瀬 大樹(のせ ひろき) 公認会計士・税理士

大手監査法人勤務の後、NAC国際会計グループに参画、インドのニューデリーにて主に日系企業をサポートするコンサルティング会社NAC Nose India Pvt. Ltd.を設立し、同代表に就任。インド各地にて、会計・税務・給与計算に加え、各種管理業務に関わるコンサルティングサービスを提供している。

事務所HP:http://in.nacglobal.net/

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