中国は経済成長に支えられ、通商・金融・外交・安全保障など各分野において米国に対する存在感を強めています。
また海洋権益を拡大させていることから、周辺諸国と領土問題を引き起こすなど、近隣に位置する日本においても、影響度は高まっています。
今回は、中国の存在感が高まる実情を見ながら今後のビジネスチャンスを探ってみましょう。
米中・2大国の時代が始まった
1978年の改革開放政策が始まって以来、中国の経済成長は国際分業体制に支えられて発展してきました。
典型例は、広東省東莞市(とうかんし)の工業団地に進出した台湾企業の例です。
中国内陸部から来たコストの低い出稼ぎ労働者(農民工)を使い、米アップル社の製品を作り輸出するモデルは大きな成功を収めました。
結果として、中国は「世界の工場」となり、今や貿易額では米国を抜き世界1位となっています。
また貿易収支黒字に加え、人民元レートの低位維持を目指したドル買い・元売り介入によって、外貨準備高も4兆ドルに達しました。
外貨準備高のうち1.3兆ドルは米国債に投資されていることから、中国は米国債市場へ様々な影響をもたらしています。
米国は、財政赤字のファイナンスを中国の投資に依存していることから、米国債の売却をはじめとした中国の投資動向を注意深く見守っています。
一方中国側でも、米ドルの為替動向が外貨準備の評価額を大きく変動させることから、常に米ドル下落を懸念しています。
以上のような動向から、金融投資の世界においても、米中双方ともに相手の存在が気がかりな状況といえます。世界はまさに米中2大国(=G2)の時代に突入したと言えるでしょう。
海洋権益を拡大させる中国とアジア諸国との増大する摩擦
国際金融制度には経済力、外交力そして軍事力が反映されます。
第二次世界大戦以降、現在の世界経済においては、米国を盟主とし、IMF・世銀を柱としたブレトンウッズ体制が維持されています。
中国が今後国際金融の盟主を目指すのか定かではありません。ひとつの試金石が、目下中国主導で進められているAIIB設立です。
AIIBがブレトンウッズ体制と協力するのか競合するのかというポイントからは、徐々に中国の意図が見えてくるのではないでしょうか。
(用語解説)AIIB(アジアインフラ投資銀行)
アジアにおけるインフラ整備のための資金需要は、ますます増大しています。
AIIBは、日米が主導するアジア開発銀行(ADB)では賄いきれないニーズに応えることを目的に、中国が設立を提唱した国際金融機関です。
中国が資本金の半分を拠出し、北京に本部を設置するほか、中国代表が総裁となって主導していくことになります。
英独仏を含む57ヶ国が既に創設メンバーに手を挙げたが、日米が参加を見送っているなど、今後の動向が注目されています。
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このように国際社会においてプレゼンスを高めている中国ですが、近年は特に本土を取り巻く重要海域、
とりわけ南シナ海や東シナ海などでの海洋権益つまり領土主張と地下資源確保にこだわりを強めています。
従ってアジア諸国の多くは通商的には中国への依存度を高めながら、安全保障上は米国頼みの傾向を強めています。アジアにおける米中対立の構図が鮮明となりつつあるといえます。
中国経済の日本への影響はますます拡大
中国は香港・シンガポールを巻き込んで「大中華圏」と言われる経済圏を形成してヒト・モノ・カネの動きを活発化させています。
この大中華圏は拡大を続けており、近隣アジア諸国そして日本にも強い影響を与えています。東京と北京とはわずか2,000キロしか離れていません。日本も「大中華圏」に巻き込まれつつあると言っても過言ではないでしょう。
側面①:「ヒト」ビザ発給要件の緩和
2015年の春節の訪日客がビザ発給要件の緩和により大幅に増加しました。
側面②:「モノ」日中貿易のビジネスモデル
日中貿易額は1990年代には日本の貿易総額の10%にも満たなかったものの、2009年以降20%水準となっています。
日中は政治的に冷え込んでおり経済への影響が懸念されています。
しかし日本から中国へ基幹部品を輸出し、逆に最終製品を輸入するというビジネスモデルは定着しており日中貿易の大幅減少の可能性は低いと言えるでしょう。
側面③:「カネ」非製造業ではいまだ増加傾向の対中投資
またカネの面について言えば、「政冷経冷」と言われるとおり対中投資は製造業においては低迷しています。しかし非製造業(=サービス産業)においては増加傾向を示しています。
中国はこれまで生産地として注目されてきましたが、今後はむしろ消費市場としての魅力が高まって行くことになるでしょう。
アジアにおける中国のプレゼンスの高まりはしばらく続くでしょう。特に中国の経済規模が日本の2倍近くへと拡大した現在、日本経済は中国経済に巻き込まれてゆくことになるでしょう。
今後中国は中間層の成長と共に、消費地としての魅力が高まると見られます。日本にとってはサービス産業において新たなビジネスモデル構築にチャンスがあるのではないでしょうか。
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●コラム筆者プロフィール●
名前:テムジン
リスクマネジメント界のチンギス・ハンです。
一言:迷える子羊たちに、世界各国のカントリーリスクを
分かりやすく説明します。
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