海外マーケティング支援を行っている合同会社トロの芳賀 淳です。
前回は、関税削減割合(%)がどれくらいになるのか、「EUから日本へのハンドバッグの輸入例」で調べ方を具体的に説明しました。
今回は、「日本からのハイブリッド車の輸出の例」をあげ、調べ方を具体的にご紹介します。
*尚、最終的にHSコードや関税率を決定するのは「輸入国の税関」です。日本に輸入する場合は日本税関、日本から輸出する場合は輸出先国の税関に(現地パートナーを通じて)事前教示制度(Advance Rulingと言います)などを利用して最終確認してください。
※しつこいようですが、関税率を決定するのは貴社ではなく輸入国税関です。
▼目次
日本から輸出する場合の通常の関税とEPA/FTA関税率を比較する
日本からの輸出例(日本から欧州にハイブリッド車を輸出する)
EUの輸入関税を調べるにはEU共通のTARICという関税検索サイトを利用します。https://ec.europa.eu/taxation_customs/business/calculation-customs-duties/what-is-common-customs-tariff/taric_en
- TARICのページから、【ACCESS THE DATABASE】 をクリックします。
- <TARIC Consultation>というページに移動します。
http://ec.europa.eu/taxation_customs/dds2/taric/taric_consultation.jsp?Lang=en - Goods codeにはHSコード上6桁870340を記載します(英数、小文字)。
HSコードが不明な方は、日本の税関から実行関税率表のページに移動して検索してください(この検索方法は、前回、前々回のブログに詳しいです)。 - Country of origin はプルダウン式です。Japan-JP を選択して、【Retrieve Measures】をクリックしてください。
- <TARIC measure information> というページに移動します。
この中の、ハイブリッド車で内燃エンジンのシリンダー容積1,000㏄以下、という【8703 40 10 10】 をクリックします。
EUでの輸入関税率が出てきました。Japan(JP)/Tariff preference(01-02-2019 – 31-01-2020)とあります。
日本から日欧EPA/FTAを利用した場合の関税率は、2019年2月1日から2020年1月31日の期間で8.8%です。
日欧EPA/FTAを利用しない場合の関税が10%ですから、1.2%の削減メリットがあります。
100万円のCIF価格だと1万2千円分の関税削減ができる、ということです。
日本からEUへの乗用車関税は日欧EPA/FTA発効前は10%でしたが、これを8年かけて(毎年約1.25%ずつ)削減するという決まりです(品目によっては、EPA/FTA発効と同時に関税撤廃するものや、10年かけて削減するものなど混在しています)。
日欧EPA/FTAの年度は、EU側が毎年2月1日から翌年1月31日、日本側の1年目は2019年2月1日から2019年3月31日、2年目は2019年4月1日から翌年3月31日、以降は日本の会計年度に従います。日欧で適用される年度がそれぞれ異なる時期が発生するので、そこは輸出なのか(EUの年度を見る)、輸入なのか(日本の年度を見る)、注意が必要です。
日本からの輸出例(日本からベトナムやカナダにハイブリッド車を輸出する)
日本がEPA/FATを結んでいる国や地域は欧州だけではありません。例えば、ベトナムやカナダにハイブリッド車(完成車)を輸出する時に現地の関税率の調べ方を説明します。
EUを含め全世界の輸入関税率を調べるには、ジェトロのウェブサイトからWorld TariffというFedExのサービスを利用するのが便利です。登録はジェトロのページから行うことができます。World Tariffを利用して関税率などの具体的データは、利用者ご自身で確認してください。
https://www.jetro.go.jp/theme/export/tariff/
World Tariffの使い方は次の税関資料(11/16~14/16)をご覧ください。http://www.customs.go.jp/osaka/news/news_pdf/20151202epa_shiryo4_4.pdf
登録を行うとWorld TariffのOnline Databaseのページにアクセスできます。
- Search OptionsのHS Number Searchをクリックします。
- 国のプルダウンからベトナムを選びます。また、HSコード(上4桁)を選び、右下のSubmitをクリックします。
- その後は、選んだ国やHSコードでの関税情報が掲示されます。通常の関税率はMFN(最恵国)の欄を参照します。
- 多くのカテゴリー分けがされていますが、該当する品目のHSコードを選び、適切なEPA/FTA税率を探します(上記税関資料13/16~14/16)。
World Tariffでは、TPP11で日本が新たにEPA/FATを結んだカナダでのハイブリッド車の輸入税率を調べることもできます。MFN税率、TPP11税率、共に確認することができます。
まとめ
日本からの輸出における、相手国の輸入関税率を調べる方法はTARIC(EU限定)やWorld Tariffというポータルサイトを利用するのが便利です。調べるにはHSコードが必要なことは日本への輸入の場合と同様です。日本と複数EPA/FTAを結んでいる国や地域の輸入関税率が複数存在することもあるので、それぞれの関税率を確認しましょう。
次回は、その国原産であるための条件(原産地規則と言います)について説明します。
▼バックナンバー
第1回 【TPP11・日欧EPA/FTA】今までのEPA/FTAとここが違う!
第2回 【TPP11・日欧EPA/FTA】重要な第一歩「HSコード」
第3回 【TPP11・日欧EPA/FTA】どれくらい日本の輸入関税が下がるの?(日本への輸入編)
【プロフィール】
合同会社トロ 代表社員 芳賀 淳(はが あつし)
大手総合電機、精密機械メーカーにてベトナム他での海外販路開拓や現地法人設立などの海外業務に携わった後、合同会社トロを設立。豊富な海外業務・貿易実務経験を活かしたコンサルティングサービスを、ジェトロや中小機構などの公的支援機関および民間企業向けに提供している。
URL: https://sub.toro-llc.co.jp/