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外国企業との合弁契約その2(合弁会社運営に際しての法的問題点)

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こんにちは、弁護士の外海周二です。

合弁契約2回目の今回は、合弁会社の運営についてお話ししたいと思います。

▼目次

合弁事業の運営方法

合弁会社は、現地で設立された会社ですので、現地の会社法の規定に基づいて運営されます。すなわち、通常、株主総会で会社の基本方針を決定し、取締役会が通常業務を決定し、代表取締役その他の執行役員が業務の執行を行います。

合弁当事者は、株主総会においては自らの持株について議決権を行使することにより、取締役会においては自らが指名した取締役に議決権を行使させることにより、その意思を会社の意思決定に反映させます。その場合、当然ながら、会社の意思決定においては、持株比率が高く、多くの取締役を指名できる合弁当事者の意思がより強く反映されることになります。

ある事項が株主総会で決議すべき事項か取締役会で決議すべき事項であるかは、国によって異なり、また、定款によって決定機関を変更することが可能かどうかもその国の会社法の規定によります。また、株主総会の特別決議の数的要件も国によって異なり、例えば、シンガポールでは、特別決議は議決権の4分の3の賛成が必要ですので(日本では3分の2)、これらの点を踏まえた持株比率の決定、意思決定権限の分担を決めておく必要があります。

取締役会については、日本の合弁当事者が指名する取締役が現地国に滞在せず、日本にいながらビデオ会議等で取締役会に参加するぐらいしか経営に関与しないケースもあります。その場合、日本の取締役は、会社の日常業務にまで目が届かないことが多いので、現地合弁当事者の指名する取締役が、合弁相手に知らせずに重要な取引をしたり、時には不正行為を行うような事態も起こり得ます

そのようなことから、日本の取締役も、定期的に現地を訪れ、会社の内情を視察したり、現地合弁当事者の取締役と会合を持つなど、一定の関わりを持つことが重要となります。

少数株主の保護

株主総会及び取締役会における意思決定に際しては、合弁契約の規定にしたがい、各合弁当事者の意思を反映する決議がなされますが、前回もお話ししましたように、少数株主となる合弁当事者の意思が無視されないように、全当事者が合意しなければ決議できない事項を合弁契約に盛り込むことが一般的です。

この全当事者合意事項については、対象事項を多くすればより少数株主保護が強くなり、対象事項を少なくすれば少数株主保護は弱くなるという関係にあります。どこまでを対象事項にするかは、各当事者の利害や経営円滑化の観点から、しっかり交渉する必要があります。

デッドロックに陥った場合の処理

ある事項を決議するにあたり、両当事者の意見が異なるために議決できない場合(全当事者合意事項で合意できない場合を含みます。)には、デッドロックに陥ってしまい、この場合には、合弁会社の経営は停滞し、ビジネスチャンスを逸してしまうことにもなりかねません。このような事態を避けるために、デッドロックの解決方法を合弁契約に規定する必要があります。

解決方法としては、第三者の仲裁人を選任するというケースもありますが、一般的なものとして、各合弁当事者の代表取締役レベルの役員同士が協議し、一定期間内に解決するという決め方があります。

しかし、そのような方法でも、デッドロックが解決しないことがあり得ます。そのような場合には、最終的には、一方当事者が他方当事者の株式を購入することにより、または会社を解散することにより、合弁を解消するという方法を取らざるを得ません。

合弁契約では、デッドロックが解消しない場合の合弁の解消方法について、一般的な契約解除の場合とは異なる決め方することもあります。デッドロックは、契約解除の場合と異なり、いずれの当事者にも帰責性がないからです。

まとめ

以上のように、合弁会社では、それぞれの合弁当事者の利害を調整しながらいかに合弁会社の運営を円滑に行うか、という点が重要です。そのため、円滑な意思決定ができるような機関設計をした上で当事者にとって譲れない点につき拒否権を確保しつつ、デッドロック等の望まない事態が生じた場合の処理方法を、きちんと想定した上で決定しておくことが必要だと思います。

▼バックナンバー
第1回 販売代理店契約その1
第2回 販売代理店契約その2
第3回 製造委託契約
第4回 外国企業との合弁契約その1

<著者プロフィール>

外海法律事務所 弁護士 外海周二氏

東京大学法学部卒。2003年弁護士登録。米国ボストン大学ロースクールにてLL.M(法学修士)を取得し、米国ニューヨーク州弁護士の資格を保有。シンガポールの現地法律事務所で1年間勤務した経験を持ち、日本企業の海外進出支援及び海外取引契約の作成などに数多く携わっている。
http://www.tonogai-law.com/

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