今後世界一の市場となると言われているインド。
そんなインドにおいて,2016年6月,新たに会社法専門に審判所が設立されました。会社法に関する紛争解決の改善を狙った新制度の概要を紹介します。
2016年6月1日,インド政府は,国立会社法審判所(National Company Law Tribunal)および国立会社法高等審判所(National Company Law Appellate Tribunal)の設立を表明しました。
これまで,インドにおける会社法関連紛争の解決機関は,高等裁判所,会社法委員会(Company Law Board),産業金融再生委員会(Board of Industrial and Financial Reconstruction)及び産業金融再生上告機関(Appellate Authority for Industrial and Financial Reconstruction)と複数存在し,申立て内容に応じて,申立機関が異なるものとされていました。そのため,会社法に関する紛争解決は複雑で,審理にも時間がかかっていました。これには,国内企業が不便を感じていたことはもちろん,外国企業にとっても参入障壁の一つとなっており,解決すべき課題の一つとなっていました。
新しい審判所は,国内11カ所に設けられました。場所は以下の通りです。
・New Delhi(2か所)
・Ahmedabad
・Allahabad
・Bengaluru
・Chandigarh
・Chennai
・Guahati
・Hyderabad
・Kolkata
・Mumbai
(参考)http://nclt.gov.in/about.html
今回,インド政府が新たに設置した審判所は,会社法関連の紛争(刑事訴追関連を除く)の解決機関を一本化するものとして設立されました。権限はまだ限定的なようですが,今後,通達により,拡大していくことが望まれており,会社法関連紛争の審理の簡素化・迅速化が期待されます。
このように,インドにおける会社法関連紛争の解決機関が整理され,手続きの明確性,迅速性が図られたことは,インド企業との取引やインド進出を行っている企業にとっては朗報と言えるでしょう。審判所の権限の拡大の有無・内容やその運営状況が,注目されるところです。
(プロフィール)
弁護士法人堂島法律事務所(東京事務所) 弁護士 瀧澤 渚氏
慶應義塾大学大学院法務研究科修了。2014年弁護士登録。外資法律事務所勤務の後、2016年より堂島法律事務所所属。企業法務・労務を中心に、英米法等の海外法務にも精通。