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(2)中国の仲裁機関の分裂と最高人民法院による司法解決について(弁護士 瀧澤渚)

      2016/09/21

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中国との取引契約書においては、紛争解決の手段として仲裁が採用される例が多くみられます。というのも、日本と中国の間では、一方の国の裁判所が出した判決を他方の国で執行することができない反面、仲裁判断については、一方の国もしくは第三国の仲裁機関で得た仲裁判断を他方の国で執行することが可能であるからです。

しかし、2012年、上記実務を揺り動かす出来事が生じました。中国におけるメジャーな仲裁機関である中国国際経済貿易仲裁委員会(CIETAC)には、北京に本部が、上海と華南に分会がありました。ところが、同年8月、CIETAC上海分会及びCIETAC華南分会が本部からの独立を宣言し、それぞれ、上海国際経済貿易仲裁委員会(CHIAC)及び華南国際経済貿易仲裁委員会(SCIA)として活動を始めたのです。

これにより、それまでに締結された契約における①CIETAC上海分会及びCIETAC華南分会を仲裁機関に指定する仲裁条項や、②仲裁機関としてCIETACを指定したうえで仲裁地を上海又は華南とする仲裁条項が、CIETAC、CHIAC、SCIAのいずれを仲裁機関に指定する趣旨と解すべきか不明確になりました。そして、仲裁機関につき合意がない場合、当事者は仲裁機関の管轄、仲裁条項自体の有効性を争うことが可能です。そのため、上記の場合に、いずれの仲裁機関で仲裁を行えば、有効かつ裁判所において執行可能な仲裁判断を得ることができるか混乱が生じたのです。

中国の裁判所は、2年以上の間、これについて明確な判断を示さず、実務の混乱が続きました。しかし、2015年7月、中国の最高裁判所にあたる最高人民法院が司法解釈を出したことで、混乱が終結しました(最高人民法院が出す司法解釈という文書は法的効力が認められており、下級法院は具体的裁判を行う場合にそれに従って判断をしなければなりません。)。

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2015年7月の司法解釈は、(i)仲裁合意がCIETAC上海分会及びCIETAC華南分会の名称変更前に締結された場合、CHIAC又はSCIAが管轄権を有すること、(ii)仲裁合意が名称変更以後に締結された場合、CIETACが管轄権を有すること、(iii)司法解釈の施行日時点で各仲裁機関にすでに継続している事件について、仲裁判断が出た後にその管轄の有効性を争い、紛争を蒸し返すことは認められないことを定めました。

比較的新しい記事等の中には、上記独立問題を理由に、契約上、仲裁機関は香港やシンガポールのそれを指定すべき等の指摘がされてきましたが、上記司法解釈により、そのような懸念が払拭されました。人民法院にはより早期の対応が望まれたところではあるものの、このように解決を見たことは、中国取引に携わる者にとっては朗報であるといえます。

 

<プロフィール>

弁護士法人堂島法律事務所(東京事務所) 弁護士 瀧澤 渚氏

慶應義塾大学大学院法務研究科修了。2014年弁護士登録。外資法律事務所勤務の後、2016年より堂島法律事務所所属。企業法務・労務を中心に、英米法等の海外法務にも精通。

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