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英文契約書の構成(弁護士 瀧澤渚)

      2016/11/22

b4779a33543ca993589e3ffcf4c74297_s第5回の今回は、英文契約書の全体像を把握すべく、典型的な英文契約書がどのような構成になっているかを俯瞰していきます。

表題(Title)

‘’Purchase Agreement’’(売買契約書)等、契約書のタイトルが記載されている部分を言います。これ自体から法律効果が生じることはないが、内容にあった、分かりやすいタイトルをつけるといいでしょう。

頭書(Premises)

契約当事者と契約締結日が記載されます。契約当事者が法人の場合は、その所在地及び設立準拠法を記載します。

前文(Whereas clauses, Whereas Clause, Recitals)

‘’WHEREAS’’という見慣れない単語から始まる部分。Whereasとは、「~なので」と言った意味の古典的な表現であり、ここでは、契約に至る経緯や動機などを記載します。

本文・一般条項(Boiler-Plate Clauses)

本文の内容は、契約類型や、個々の事情によっても異なってくるので、ここでは、よく出てくる一般条項に絞って紹介したいと思います。

・定義(Definition)

冒頭部分に定義条項を置いて、当該契約書中で使う言葉の定義を行うことがあります。また、定義条項によらずとも、文章中で“(hereinafter referred to as “Abc”)’’などとして定義することも可能です。定義された用語は、通常、大文字から始まります。英文契約書を読んでいて、大文字から始められている単語については、どこかに定義がされていないか、定義条項をはじめ、契約書内をよく確認してください。また、逆に、強調の趣旨で、特に定義のない言葉について一文字目を大文字で記載することは混乱の元ですので、避けた方がよいでしょう。

・不可抗力(Force Majeure)

Force Majeureとは、フランス語由来の言葉です。当事者のコントロールが及ばない事由が生じた場合には、履行遅滞や履行不能について責任を負わないことが記載されます。コントロールが及ばない事由については、裁判所に認められやすいよう、具体的に、様々なものが列挙されるのが通常です。

・完全合意(Entire Agreement)

「本契約書に記載されていることが、当事者が合意した内容の全てです。」という趣旨の規定です。契約書記載外の当事者間のやり取り(口頭の合意や、Emailその他のレターに記載されたもの等)を契約の内容から排除することを狙いとしています。このような条項があることから、契約締結の際には、契約書の内容としたい事項については、すべて契約書に盛り込むようにしましょう。「契約書の内容は●●となっているけれども、××ということで口頭で合意ができているから大丈夫だ」というようなことは通用しないという前提で、契約書を作成してください。

・譲渡禁止条項(Prohibition of Assignment)

当該契約上の権利義務や契約上の地位の譲渡を禁じる旨の条項です。契約の相手方が知らぬ間に変更され、予期せぬ状況に陥らないために、このような条項を設けておく意義があります。

・可分性(Severability)

契約書の一部が無効であっても、他の条項が無効になるものではないことを定める条項です。選択した準拠法において無効となるような条項を意図的に挿入しておき、自らの義務を免れようとする行為を防止できることに意義があります。

・通知(Notice)

国際取引では、通信手段がさまざまであることや、郵便等については到達まで時間がかかったり、届かなかったりするリスクがあること等を考慮し、通知条項が一般的に挿入されています。通知の宛先、通知方法、到達されたとみなす期間等が取り決められます。

・権利不放棄(No Waiver)

権利を行使しなかったことや、不十分な行使を行ったことを捉えて、その権利や契約書上の他の権利を放棄したとみなされないために設けられる条項です。例えば、些細な契約の不履行について一度見逃したことを理由に、それ以後の不履行に関して、契約解除権を行使できなくなると解釈されてしまうとたまりません。このような主張を遮断するために意義のある条項です。

・準拠法(Governing Law)

多くの国においては、当事者自治原則により、当事者が合意した国の法律を当該契約の解釈に用いることを認めています。一般論としては、裁判管轄と揃えるのが望ましいといえます。

・紛争処理(Jurisdiction / Dispute and Arbitration)

紛争が起こった際、裁判で解決するのか、仲裁で解決するのか、裁判であればどこの裁判所を管轄裁判所とするのか、仲裁であれば仲裁地等をどこにするか等が記載されます。詳細は各論で触れることにします。

結語・署名(Closing / Signature)

‘’ IN WITNESS WHEREOF~’’から始まる部分。「上記の内容の契約を締結したことの証として、この契約書を作成します。」、といったような内容が記載されます。

署名については、法人であれば、法人名および署名者の肩書も記載しましょう。なお、署名は判読が困難なので、手書きの署名の他に、タイプしたものも記載しておくと後々わかりやすいでしょう。

おわりに

英文契約書の大まかな構成はつかんでいただけたでしょうか。次回以降は各論として、少し掘り下げた内容に触れていきたいと思います。

☆契約書英語レッスン☆

英文契約書を見ていると「shall」という単語が多用されているのが目につきます。

「shall」という言葉は、普段は、「~するでしょう」という意味や、疑問文で「~しましょうか」という意味等に訳されるのが一般的です。しかし、shallは、英文契約書で使われるときは、「~しなければならない」という義務を意味する単語になります。「~be required to…」といった表現も同様の意味になります。逆に、「~してはならない」という意味での「must」は契約書上ではあまり使われません。また、最近では、同様の意味で「will」も使われるようですので、覚えておきましょう。

 

<プロフィール>

弁護士法人堂島法律事務所(東京事務所) 弁護士 瀧澤 渚氏

慶應義塾大学大学院法務研究科修了。2014年弁護士登録。外資法律事務所勤務の後、2016年より堂島法律事務所所属。企業法務・労務を中心に、英米法等の海外法務にも精通。

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