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2018年世界の5大リスク (エコノミスト斉藤洋二)

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▼目次

③ユーロリスク

17年の欧州は英米発の自国第一主義が押し寄せる中で各国では議会選挙が相次ぎ、ユーロリスク拡大が懸念された。しかし実際は5月にフランスでマクロン大統領が選出されて独仏の二大国が安定したことで、欧州の政治リスクが一気に縮小した。さらに経済が好調ぶりを示し、さらに欧州中央銀行(ECB)による脱金融緩和策への流れも加わって通貨ユーロの上昇と経済成長の好循環がもたらされた。

このように年初には、世界でもリスクの高い地域のひとつと見られた欧州だったが結局好パフォーマンスを示す地域として越年することになりそうだ。ただ欧州で最も安定度の高いメルケル政権が9月のドイツ議会選で第一党を確保したものの議席数を減らした。そして以来2か月を超えても連立協議がまとまらず組閣できない状態が続き、欧州の政治空白が懸念再されるところとなっている。

もともとメルケル首相率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)は第2党の社会民主党(SPD)ともども議席数を減らしたように既成二大政党への国民の不満が高まっている。これまで環境保護を党是とする緑の党やビジネス界を代表するFDP(自由民主党)との3党連立協議を進めてきたが、移民問題で寛容と拒絶との二分する国論を受けた両党と政策一致することはできずもの別れに終わった。

果たして再選挙をするのか、CDU・CSUが少数与党内閣を発足させるのか、それともSPDとの大連立を組み直すのか。どちらにしてもメルケル政権はこれまでの12年とは異なり指導力を減少させることになる。

そもそもメルケル首相は自由主義、民主主義、寛容の精神と言った伝統的な西洋の精神を代表するリーダーだ。またG20でみてもプーチン大統領の次に長くトップにあり、欧州安定に向けての象徴的存在ともいえる。ここでメルケル首相の政治的空白が長引けば、欧州の政治リスクが市場の注目を集めることになるだろう。

18年はイタリア総選挙、英国との離脱交渉、ギリシャの債務問題など難題が控えている。また自国第一主義の流れはいったん小休止したように見えるものの極右勢力とのせめぎあいは続くことになりそうだ。欧州統合に向けて求心力と遠心力が綱引きをする状況が続くことから、ユーロリスクは今後も欧州そして世界を覆うことになる。

④中東リスク

建国85年のサウジアラビアでは内政・外交両面で緊張が高まっており、今後の中東情勢流動化の震源地になる可能性が高まっている。そもそもサウジアラビアは人口増大と石油価格下落で経済状況が悪化しているが、この状況に危機感を強く感じているのが32歳のムハンマド皇太子だ。

同氏は就任以来脱石油を目指すなどトップダウンで一気に国家改造を図っておりサウジアラムコの新規株式公開(IPO)を進めている。この環境下において改革の反対勢力と言われる11人の王子はじめ、閣僚、実業家など200人ほどが汚職の嫌疑で拘束された。今後国内の改革をめぐる動きは新たな火種となり国内政治情勢の不安定化を呼ぶ可能性が大きい。

そもそもサウジは初代国王アブドル・アジズ国王以降2代目から現在の7代目サルマン国王(25番目の王子)まで第2世代の王子たちが継承してきた。現在のサルマン国王が即位したのは2年前だがすでに81歳。したがって国政は自らの息子ムハンマド皇太子に任せており、国王は第3世代のトップを切って皇太子に禅譲するつもりだと見られている。

このように王子と呼ばれる人が数百人もおり、また王族は1万5千人に達すると言われるだけに、その王位継承や国家経営などにまつわる内紛は国家の運営を一層難しくしそうである。

一方目下の中東情勢はIS問題がほぼ一段落したものの、対IS作戦でシリア、イラク、さらにはヒズボラなどと連帯を深めたシーア派大国のイランの存在感が巨大化した。したがってイランに対しスンニ派の代表であるサウジアラビアは緊張を高めている。

同時にイランの影響を受けるレバノンやイエメンさらにはカタールなどとの外交関係の対立が表面化している。17年は北朝鮮リスクに明け暮れたが、18年は中東における地政学リスクが一気にクローズアップされることになる。同時にこの地域の紛争は原油供給に直接影響を与えることから油価の乱高下を通じて世界経済に大きな影響を与えるだろう。

⑤クロダリスク

安倍政権が12年12月に誕生して5年。この間の右肩上がりの経済はいざなぎ景気を越えて長期化し、同時に株高・円安が進み株価は8千円台から今や26年ぶりの2万3千円台、為替も70円台から110円台となっている。実際のところリーマンショックから9年が経過して世界景気の好循環の影響もさることながら、日本経済の好調ぶりは黒田日銀の超緩和政策のお陰といえよう。

とはいえ日本経済は人口減と低成長率に直面していることは確かで金融緩和政策というカンフル剤が効いているだけとの見方もある。したがってその副作用も無視できず、第5のリスクとして日本は経済・金融リスク(=クロダリスク)つまりいつ何時円高デフレに逆戻りするかもしれないリスクに直面していると言っても良いだろう。

黒田日銀の金融緩和策はマイナス金利と銀行経営の悪化をもたらした。一方で国債を乱発する政府にとっては都合の良い政策であることも明らかで、当面この緩和政策から抜け出すことは政府も日銀も二の足を踏むだろう。

とはいえ肝心要の黒田総裁の任期満了が18年4月に迫っておりその後任人事が大詰めを迎える。つまり金融緩和路線が今後も同様に継続されるのか、それとも米国や欧州のように出口戦略への議論が活発化されるのか。今後黒田路線がどのように継承されるかが注目されるとともにその成り行き次第では金融市場が混乱する。

18年は金融政策の連続性が維持されるか否が注目され、その懸念が増大すれば5年にわたった円安・株高の勢いが消え、円高・株安というリスクの顕在化とともに日本経済は大きなショックを受ける可能性がある。

(2017年12月4日)

【プロフィール】
ネクスト経済研究所代表 国際金融アナリスト 斎藤 洋二氏

大手銀行、生命保険会社にて、長きに渡り為替、債券、株式など資産運用に携割った後、ネクスト経済研究所を設立。対外的には(財)国際金融情報センターにて経済調査ODA業務に従事し、関税外国為替等審議会委員を歴任した。現在、ロイター通信のコラムを執筆、好評を博している。

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