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インド債権回収の実際【日本企業の直面するトラブル12】(公認会計士 野瀬大樹)

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インド在住公認会計士の野瀬です。
最近、債権回収手続きを立て続けに数件やっています。
以前「インドでの債権回収は難しい」という内容のコラムを書きましたが、今もってその通りだと思います。(過去記事はコチラ

継続した取引先の場合だと、次回以降のサービスを停止するとか、次回の支払い時に調整するなどの融通が利くのですが、問題はやはり一期一会の「単発取引」です。特に海外からの請求の場合は、相手も「どうせ交通費までかけて回収にはこないだろ」と最初から支払いの意思が無い悪質なケースもあるからです。
今日は実際、私が依頼を受けたケースで弁護士対応になるまでの流れをまとめました。

▼目次

まずは、電話・メールで督促

大変地味ですが、最初は電話及びメールにより先方に連絡を入れることになります。
メールだと返事が来ないことが多いですので、あわせて電話でクライアントからの依頼を受けて債権回収のサポートをしている旨、場合によっては訪問する旨をお伝えします。

先方が悪質でないケースであれば、意外にこれだけで回収できることもあります。ポイントはイザとなったら訪問というオプションを見せることで本気度を示すことです。

実際に訪問

メールも返事なし、電話でも「忙しい」「担当者がいない」という反応の場合、もしくは電話メールで「振り込みます」と言ったにもかかわらず振り込まれない場合、実際に訪問することになります。もちろん、訪問したものの「急に忙しくなった」「親戚に不幸があった」などと会ってもらえないケースもありますが、幸運にも会えた場合、粘り強く説いてその場で小切手を書いてもらいます。

「あとで振り込みます」となることもありますが、その場合、経験上7割くらいは振り込まれません。そのため先日付でも良いのでその場で小切手を切ってもらうほうが良いでしょう。

弁護士を起用しての裁判

それでも会ってくれない、払ってくれない場合、弁護士を通しての訴訟になります。正直、国際間の取引まで対応する弁護士の場合、インドであっても決して報酬は安くないのでこのあたりは債権金額との兼ね合いが必要です。逆に言うと100万ルピーに満たない小さな案件の場合、相手も「どうせ訴訟するよりは安いだろ」という態度をとるケースが散見されます。

相手側に資金がそもそも無い場合、回収は難しいですが、資金があるケースであれば弁護士マターにまで持ち込めばある程度の回収は可能です。インドは司法に関しては比較的フェアです。

 そもそも「取り立て」をしなくて済むのがベスト

インドも他の途上国と同様、債権回収に関しては手間がかかる国です。特に単発取引の場合は、上記のような手続きを踏む必要がないように下記のような事前の準備をしておくことが王道です。

1)相手先情報を取得(登記、決算書、信用調査レポート)
2)契約書において支払条件を明確に詰めておく(前払いはいくらか、税込みか、期日は?)
3)契約書やインボイスに不備や誤りがあると難癖をつけられやすいので注意
4)未払になった場合も、現地にエージェントがいる旨をちらつかせておく

まとめ

・インドで未回収債権が出た場合も、いくつか方策はある。
・但し、回収コストも安くはないので、事前に情報収集をしっかり行い、書類に不備が無いように努める。

【プロフィール】
野瀬 大樹(のせ ひろき) 公認会計士・税理士

大手監査法人勤務の後、NAC国際会計グループに参画、インドのニューデリーにて主に日系企業をサポートするコンサルティング会社NAC Nose India Pvt. Ltd.を設立し、同代表に就任。インド各地にて、会計・税務・給与計算に加え、各種管理業務に関わるコンサルティングサービスを提供している。

事務所HP:http://in.nacglobal.net/

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