これから新興国に進出しようとしているお客様から時々受ける質問に「駐在員を一人置くことによるコスト」というものがあります。このあたりのコストを読み誤って、何年たっても赤字を続ける日本企業が多いのも事実なので、このあたりのシミュレーションは精度を高めておきたいところです。
実際どれくらいの負担になるのか?…税金など交えた難しい話は次回に回して、今回は少し柔らかい「駐在員の実際」について私の住んでいるインドを例にお話したいと思います。
▼目次
①駐在形態
年齢はかなりばらつきがありますが、概ね20代後半から40代前半が多いでしょうか。ただ、最近はインターンの学生や、技術職の方が定年後に嘱託で来る…という形態も増えています。
また、インドはその生活がハードだと思われているので、単身赴任の方が他の国よりも多い印象です。やはり大気汚染や水質汚染がひどい国ですので、小さなお子さんをお持ちの方は躊躇するようですね。
任期は従来4年が多かったのですが、最近の大気汚染を踏まえて大手企業中心に3年に短縮するところがポツポツ出てきています。やはり、駐在員の方の健康状態は日系企業の関心が高いようです。
②衣食住
1)衣
インドは大きな国なので都市によって気候は違うのですが、主要都市では高地にあるバンガロール以外は基本日本よりずっと暑いです。そのため、とんどの日本人はノーネクタイのビジネスカジュアルです。
2)食
首都であるデリーならクオリティの高い日本食レストランがたくさんあるのですが、それ以外の都市は1つあれば良い方なので、どうしても日本食が恋しくなります。ただ、ローカルのマーケットなどに行くと野菜はビックリするぐらい安いので、自炊をするとコストはかなり抑えることができます。またベジタリアンが多い国なので、チキン以外の肉は基本手に入らないと考えたほうが良いです。
お酒は一部禁止されている州がありますが、日本人駐在員が多い都市は概ね飲めます。ただ、まだ高齢者中心に「不道徳だ」と考えるインド人が多いので注意が必要です。
3)住
家はなかなかコストがかかり、デリーだと駐在員の方は基本月10万ルピー(16万円)以上、ムンバイだと月15万ルピー(月24万円)以上が目安かなと思います。海外駐在だとお客様やお友達を招いてのホームパーティもありますので、あまりコストにこだわって狭いところや不便なところに住むのも問題があります。よく私がコンサル時に言うのですが、「駐在員の方はインドのインド人社会に住むのではなく、インドの日本人社会に住まれるので、家賃は東京と同レベルか、場合によっては東京より高くなります」という覚悟が必要です。しかも、東京と違って日本基準だとほとんどすべてが欠陥住宅なのですが…。
③治安
インドだとよく女性を中心に治安の問題も質問されるのですが、これは上記のような高い家賃のエリアに住んでいる限り問題はないと思います。基本、そういったエリアは門と塀で囲まれていますし、入口にはしっかり守衛もいます。インドは確かに貧富の差が激しいですが、銃社会ではないので、その点治安は途上国の中では良いほうです。
④交通手段
完全な車社会です。駐在の方も基本的に移動はすべて車になります。また、他の新興国の場合、道路事情が劣悪(渋滞やインフラ)なので、基本運転はドライバーが行うことになります。このあたりも駐在コストが高まる理由です。
まとめ
インドの生活を一言で言うと、「不便だけど事前情報から恐れるほどではない」ということ。健康面はお子さんがいれば不安だが、治安や住環境は悪くはない。ただ食事は制約が多く、インド料理が苦手な人はつらいかもしれません。
<プロフィール>
野瀬 大樹(のせ ひろき) 公認会計士・税理士
大手監査法人勤務の後、NAC国際会計グループに参画、インドのニューデリーにて主に日系企業をサポートするコンサルティング会社NAC Nose India Pvt. Ltd.を設立し、同代表に就任。インド各地にて、会計・税務・給与計算に加え、各種管理業務に関わるコンサルティングサービスを提供している。
事務所HP:http://in.nacglobal.net/
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