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ASEANシリーズ【第6回】中国に接近するマレーシア経済の今後やいかに?

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 マレーシアは、イスラム教国でありながら英連邦の一員としての情報網を有し、その情報網と、国民の25%を占める華人のネットワークを活かした経済成長を実現し、今や1人当たりGDP が1万ドルを超えるASEAN 第2の経済大国となっています。

特に、1980年代よりマハテイール首相(当時)が導入したルックイースト政策により、個人よりも組織を重んじる日本的経営を導入し、工業化を進めたことが国家発展の背景となったと言えるでしょう。

またスズ、原油、天然ガスといった鉱物資源が豊富であり、特に天然ガスについては、日本の輸入の20%をマレーシア産が占めるなど、日本との密接な関係が続いています。

しかし、近頃のマレーシアは、日本語よりも中国語を学ぶ国民が急増しているように、国を挙げた親中路線を明確にし、対中輸出は総額の10%を超えるようになっています。

この結果、人民元の切り下げや上海株の下落に直撃されるなど、陰に陽に中国の影響を受ける場面が散見されています。さらに南シナ海では、ジェームズ礁(南シナ海の南沙諸島南方に位置するサンゴ礁性の暗礁。)を巡り中国との対立が深まっており、中国の政治・経済の影響に日々さらされる状況となっています。

それでは連載第6回目の今回は、マレーシア経済の現状と未来について考えてみましょう。

前回の記事はこちら

 

 

▼目次

ルックイーストの次は中国との関係強化

マレーシアは、複合国家と言われるようにマレー人(65%)、華人(24%)、インド人(8%)など、多民族から成り立っています。華人とは、中国から移住した華僑の子孫たちで、多くは広東語を使う中国南部の出身者が多いとされています。したがって、現在でも華人と中国人との関係は強く、ビジネスにおける両国間の緊密性が維持される要因となっています。

一方、マレー人は元来、華人やインド人に比べ社会的地位が低く、その状況から脱する為に導入されたブミプトラ政策(マレー系住民の経済的地位を向上させるため、経済、教育、就職面などで優遇する政策)により、社会的地位、そして経済環境が改善しつつあるところです。

このようなマレーシアの経済環境の改善をもたらしたものは、もともと農作物や鉱物資源が豊富に存在することに加え、ルックイースト政策により日本を手本に工業化を進展させたことだと言えるでしょう。

この工業化の過程で、1990年代にはクアラルンプール国際空港や、当時世界一の高層ビルといわれたペトロナスツインタワーが建設されました。そして、21世紀に入ってからは国内車が開発され、ITインフラの整備が進むなど、世界のハイテク化に備えた国内企業への支援とインフラ整備が進められました。

しかし、ここにきて労働コストの上昇が目立ち始め、海外企業にとってのマレーシアへの進出メリットが減少しているのが懸念事項と言えるでしょう。ただ、中国でも人件費が急上昇していることから、今後、マレーシアの労働コストの割高感が調整されれば海外からの進出企業の増加も期待されるところです。

 

通貨リンギットの急落の背景

通貨リンギットは、1ドル4.15リンギットと1998年9月以来の安値、つまりアジア通貨危機直後のレベルへと下落しています。

その背景にはマレーシア経済の減速があり、これまで年率5%成長を維持して来ましたが、原油価格が急落するなどの資源安を背景に、その水準を下回るようになりました。

特に、輸出総額の1割超を占める対中輸出の不振があります。中国への依存度の高まりとともに景気が不安定化しているのです。15年8月以降の中国人民銀行による人民元の対ドル基準値の引き下げは、マレーシアのリンギットを直撃しているのです。

また、経常黒字が一段と圧縮されるとの見方も根強く存在し、金融市場にはアジア通貨危機の記憶が蘇ってきています。同時にリンギット防衛の為にドル売りリンギット買いの介入が行われている模様で、外貨準備高も2013年の約1,400億ドルから昨年の7月には1,000億ドルを下回る水準まで減少しております。

それでも、外貨準備高は輸入金額の7か月分を上回る水準であり、「輸入金額の3か月分」が危機対応の目途とされることから、まだ緊迫した状況ではありません。

このように、米国の利上げの他にも様々な国内の不安要因が存在し、資本流出が進んだ結果、代表的な株価指数であるクアラルンプール総合指数が15年4月の高値水準から約1割近くも下落するなどの影響が出ています。

原油安など商品相場が下落傾向を辿り、中国経済の不安定化が増す中でマレーシア経済の不安定化は続くことになるでしょう。

 

まとめ

中国経済の悪化は、対中経済依存度の高い国々を直撃しますが、マレーシアはその代表的な国のひとつです。

15年7月以降、中国株式市場の暴落や、為替基準値を切り下げるなど、経済環境が悪化している感は否めません。したがって、その打撃を受けやすいマレーシア経済の今後は、要注意と言わざるをえないでしょう。

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