海外マーケティング支援を行っている合同会社トロの芳賀 淳です。
前回20問のクイズを出しました。トライした感じはいかがでしょうか?
https://blog.conocer.jp/haga-overseas-sales31/
最初の10問についての答え合わせと解説は次の通りです。
Q1 間接貿易も直接貿易も、見積りには消費税を加算する。
A1 「違います」
間接貿易は日本国内の商社に品物を販売し、その商社が輸出者となって外国に販売する形態です。日本国内在の商社に品物を販売する行為は通常の国内取引なので消費税を加算します。一方、皆さんの会社が輸出者となって外国に販売する形態を直接輸出と言いますが、輸出では消費税が免除されます。したがい、輸出先への見積りや請求書(Invoice)に消費税を加算しません。仕入れた品物に含まれている消費税は手続きを行うことで還付されます。手続きの詳しいことは国税庁のサイトで確認ください。https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6551.htm
Q2 ホームページを見た海外の業者から引合いがあった。当社工場渡し条件(EXW)で見積りした。
A2 「誤りではありませんが、親切ではありません」。
逆の立場で考えましょう。皆さんが外国からモノを買う時、相手国の内陸輸送費、梱包費、輸出手続き費、海上(あるいは航空)運賃、貨物保険費が分からなかったら買い値の試算ができませんね。したがい、少なくとも輸出する国の船積みが整った条件や保険費用を含んだ条件で見積りします。そのためには通関業者(フォワーダー)と日頃からよく連絡をとることが大切です。
Q3 初めて取引する海外の業者向けに、当月末締め翌月末払いの決済条件で見積りした。
A3 「日本独特の決済条件です。他の条件で見積もりましょう」。
外国では月ごとにまとめた決済はほとんど見られません。通常は品物やサービスを提供して引き換えに代金を得るか、その日を起点にしてx日以内の支払い請求書で決済を行います。決済時期についてはこちらの記事を参考にしてください。
https://blog.conocer.jp/haga-business-practices01/
出荷後に決済を完了する場合、事前に取引相手の信用調査を忘れずに行います。
Q4 輸出港から輸入港までの輸送費を買主が負担するインコタームズは次のどれか?
A4 BのFCAが正解です。インコタームズ2020の各種条件について次の記事で復習しましょう。
https://blog.conocer.jp/haga-incoterms02/
Q5 インコタームズは、費用負担、品物の危険(リスク)負担の範囲、および所有権の移転、について規定したものである。
A5 「違います」。
インコタームズは、費用負担、品物の危険(リスク)負担の範囲について規定したものですが、所有権の移転については何も規定していません。所有権は買主が代金を全額支払った時点で移転します。
Q6 CIF Bangkokという条件では、保険証券はタイで発行される。
A6 「違います」。
CIFという条件は売主が買主側の港湾までの諸費用を負担する(品物に費用を含んだ値付けをする)ということです。CIFでは貨物保険を支払うのが売主ゆえ、日本からタイへの貿易ならば保険証券は日本で発行されます。コンテナ輸送に適したCIP条件の場合も同様です。
Q7 CIP条件での売主の危険(リスク)負担は、品物が本船の船上に置かれた時点である。
A7 「違います」。
CIP条件での売主の危険(リスク)負担は、品物が運送人(フォワーダー、船会社・航空会社。通常はフォワーダー)の手に渡った時点、と定められています。海上コンテナの場合、売主国のコンテナヤードに品物が運び込まれた時点で危険(リスク)は売主から買主に移ります。次のブログ記事も参照ください。
https://blog.conocer.jp/haga-incoterms04/
Q8 外航貨物海上保険の保険金額は一般にインボイス価格と同額である。
A8 「違います」
輸送途上に発生した物損の保証金額はCIFまたはCIP価格の110%です。インボイス価格はFOB、FCA、CFR、CPTということもあるので、これら価格に輸送費や保険料を加えてCIFまたはCIP価格を計算します。
Q9 FOB条件の品物が船積み前、日本の港湾施設(コンテナヤード)にて保管中、台風による影響で破損した。保険補償を求め保険会社に連絡をとった。
A9 「CIF条件ならば支払われますが、FOB条件では保険金は支払われません」
FOB条件下での保険は買主が掛けますが、あくまで「外航」での物損が対象ゆえコンテナヤードでの物損は対象外です。船積み以前の物損に対する保険は「FOB保険」というサービスがあるので、売主が必要に応じて手配します。「FOB保険」の詳細は損保会社に問い合わせください。
Q10 前受け金取引なので信用調査を行っていない。
A10 「間違いではありませんが、お勧めしません」
将来もずっと前受け金100%の取引を継続するならば信用調査は不要かもしれませんが、そのような決済条件は非常に稀です。取引を継続する中で掛け売りの話が買主から出てくることは十分考えられます。その時になって回収リスクの調査をするのではなく、前もって取引先(買主)の信用調査は済ませておきましょう。
Q1からQ10までの各クイズは下の図で黄色い箇所の業務に対応します。日々の業務で理解が怪しいところがないか、この機会に再確認しましょう。
さて、皆さんの答えはどうでしたか?
次回は後半のQ11からQ20までの答え合わせと解説をします。
まとめ
信用調査、インコタームズ、保険、決済、という貿易実務の理解に問題ありませんか?みんなの海外取引ブログの過去記事にもお役立ち情報が満載です。この機会に理解度を確認してみましょう。
【プロフィール】
合同会社トロ 代表社員 芳賀 淳(はが あつし)
大手総合電機、精密機械メーカーにてベトナム他での海外販路開拓や現地法人設立などの海外業務に携わった後、合同会社トロを設立。豊富な海外業務・貿易実務経験を活かしたコンサルティングサービスを、民間企業およびジェトロや中小機構などの公的支援機関向けに提供している。これら機関向けセミナー実績も多数あり。
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