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英文売買契約書(Sales Contract)の基礎と実務  ~第4回 売買の合意(売買の予約)と商品の特定~(弁護士 江藤真理子)

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今回から、実際のSales Contract(英文売買契約)中の重要な条文を取り上げていきたいと思います。第4回(第1回第2回第3回はコチラ)は、売買の合意(予約であることもあります)と商品の特定に関する条文を見ていきます。

売買契約の場合、商品、仕様、数量、価格、引き渡し時期などが決まっているときもありますが(この中には、引渡しが1回だけのものだけでなく、一定期間にわたって継続的に引渡しが行われるものもあります)、一定期間に行われる見込みである個々の売買契約が実際に発生したときに、共通して適用される売買条件を取り決めておくためのものであるときもあります。

まずは、前者の商品、数量等の条件が決まっている場合についてお話しますが、具体例があるとわかりやすいので、次の設例に沿って話を進めます。

***
【設例】
MM物産(「売主」/“Seller”)の生活用品流通課の三井さんが担当となって、MM物産はシンガポールのスーパー(「買主」/“Buyer”)コーヒー用マグカップ(「本商品」/“Products”)を1000個販売することになりました。
***

▼目次

売買の合意条項(Sale and Purchase)

Article XX. Sale and Purchase(売買の合意)

Seller agrees to sell the Products to Buyer and Buyer agrees to buy the Products from Seller in accordance with the terms and conditions under this Agreement.

(本契約の定める条件に従い、売主は買主に対し本商品を販売することに同意し、買主は売主から本商品を購入することに同意する。)

上記は、ごく一般的な売買の合意条項です。MM物産とSSスーパー間で本商品の売買をします、というものです。

通常は、「Seller」、「Buyer」、「Products」という大文字で始まる語については、契約書の前文や最初の方に設ける定義条項(Definitions)において、たとえば以下のように定義がなされます。

Article XX. Definitions(定義)
“Products” means coffee mugs made in Japan.
(本商品とは、日本製のコーヒー用マグカップをいう。)

商品の仕様・数量(Specifications/Quantity)

Article XX. Specifications(仕様)

The Products to be delivered under this Agreement shall conform to the following specifications. 

(本契約に基づき引き渡される本商品は、以下に定める仕様に適合していなければならない。)

 

Article XX. Quantity(数量)

The quantity of the Products to be delivered under this Agreement is one hundred (100). 

(本契約に基づき引き渡される本商品の数量は100とする。)

商品の特定の条文は、少し慎重にならなければなりません。仕様についても、本件の設例では単純ですが、正確な記載が大事になります。上記の条文例では、「以下に定める仕様」としていますので、この条文の直後に、具体的な仕様(色、サイズ、材質など)を列挙することになります。

仕様の内容について、たとえば成分表示等が多く、複雑であるときには、別紙で特定する方法もよく使います。以下にそのような場合の条文例もご紹介します。別紙のよいところは、商品の仕様が変更になるときに、別紙だけ変更する覚書を締結すればいいという点もあります。

Article XX. Specifications(仕様)

The Products to be delivered under this Agreement shall conform to the specifications set forth in the exhibit attached hereto. 

(本契約に基づき引き渡される本商品は、本契約に添付される別紙に定める仕様に適合していなければならない。)

数量についても、上記のように慎重を期し、文字と数字の両方で記載することも多いところです。

今回の条文例はあまり難しいものではないかと思いますが、Seller、Buyer、Products、Specifications、Quantity、deliver(引渡す)など、用語に慣れていくだけでも、英文契約へのハードルも下がるのではないかと思います。

⇒第5回 商品の価格と支払条件

▼バックナンバー
第1回 Sales Contract(英文売買契約)の特徴
第2回 Incoterms(インコタームズ)とは
第3回 ウィーン売買条約にご注意を!

<著者プロフィール>

TMI総合法律事務所 弁護士 江藤真理子氏

東京大学法学部卒業。三井物産審査部海外審査管理室勤務を経て、2003年弁護士登録。企業法務を専門としており、国内・海外取引関係(海外進出の助言、契約書作成から紛争時の対応まで)以外にも、企業側からの雇用契約関係の助言にも対応している。

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