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港湾閉鎖の経済損失は1日20億ドルにも及ぶ
西海岸の港湾ストライキの原因は、29ヵ所の港湾施設を管理する太平洋海事協会(PMA)と国際港湾倉庫労働組合(ILWU)による対立です。西海岸では6年に1度、港湾労使交渉が行われています。
2014年5月に始まったこの労使交渉は、当初は平和的に行われていました。しかし、7月に労働協約の満期を迎えるも、合意には至りませんでした。
その後、労使間の緊張感が高まる中、港湾作業者は作業をわざと遅らせる「スローダウン戦術」を開始します。その結果、コンテナ荷役が通常の40~60%にまで低下する事態を迎えます。
西海岸はアジアとアメリカを結ぶ一大航路です。約40%ものアメリカの輸入品が西海岸を通過しています。そのため西海岸の港湾閉鎖は、アメリカ経済に大きな損害を与えました。その経済損失は1日約20億ドル(約2,466億円)にも及ぶと言われています。
港湾の混乱による日本経済に与えた影響
西海岸の港湾ストライキによって、日本でもファーストフード店が影響を受けたことはニュースでも報じられ有名です。しかし、日本経済に与えた影響はそれだけではありません。
日本の自動車メーカーにおいても、アメリカにある工場では自動車の減産を余儀なくされました。その大きな理由として、日本で生産した部品をアメリカで組み立てる「ノックダウン方式」と呼ばれる生産体制を取っていたためです。港湾閉鎖によって日本から部品を手に入れることができず、減産や生産停止を決断しました。
減産体制が取れなかった自動車メーカーの中には、部品の輸送方法を空輸に切り替え数十億円の追加コストを支払ったケースもあります。
またアパレル業界においても、港湾閉鎖により海上貨物の受け渡しが行えませんでした。そのため、輸送方法を空輸に切り替えてコストが増大した企業も存在します。
ストライキ解消後も問題は山積み
西海岸の港湾は、アメリカの国内総生産の約12.5%を占めます。経済の損失を食い止めるため、150以上の経済団体がオバマ大統領に介入を求めました。2002年に起きたストライキによる港湾封鎖で、当時のブッシュ大統領が強制解除に踏み切った前例があります。
2015年2月にペレス労働長官の立ち会いのもと、PMAとILWUが暫定合意することによって、9ヶ月にも及ぶストライキは決着を迎えました。しかし暫定合意後も、港湾には大量の貨物が滞留しており問題は山積みです。
9ヶ月もの間、機能が滞っていた港湾を平常化するためには、数ヶ月かかるとの見通しが立てられています。また、ストライキを回避するため、東海岸やカナダなどの迂回航路を使用している荷主がすでに約60%存在します。ストライキ解消後、以前通りの貨物量の水準に回復するためには、相当な時間を要するでしょう。
おわりに
アメリカ西海岸で起こったストライキは、アメリカ経済に大きな損失を与えました。日本でも、飲食チェーン店や自動車メーカーなど、多くの企業に影響が出ました。ストライキが長期化する背景として、アメリカ経済が回復するとともに、労働者の賃上げに対する期待が大きくなることが挙げられます。このような問題は、今後も定期的に発生する可能性があるため、日本企業も対応策を講じておく必要があるでしょう。