注目のインドの「予算案」の注目ポイント
インドで日本企業の進出支援を行っている公認会計士の野瀬大樹です。
2月は毎年インドの「予算案」が発表される時期です。予算案では、インドの今後の主な政治上の方針が決まるので、会計や税務を生業にしている私はいつも注目しています。
前回の予算案がでた2020年2月から丁度1年なのですが、この1年はまさに「コロナの1年」と言え、インドもロックダウン含め経済的に大きな打撃を被りました。その痛手を被った経済立て直しのための大きな一手が発表されるかと期待感がありましたら、基本的には小幅な変更ばかりで肩透かしをくらったというのが正直な感想です。
日本企業に影響ありそうなのは「税務監査」の要件緩和くらいです。
インドでは売上規模に応じてインド勅許会計士の税務監査を受ける必要があるのですが、現状それは現金取引が少ないことを要件として売上5000万ルピー超の企業とされていました。これをさらに緩和して1億ルピー超にするとの発表がされました。
コロナによりこの1年日系企業も管理周りが混乱しており、また従来のように対面で企業を訪問しての監査手続きもまだ従来通りは行えない状況が続いていますので、その状況を鑑みての判断かと思います。
事務負担が軽減されるので日本企業には吉報ですね。
期待した政策による大きな景気対策はなかったのですが、インド経済自体は昨年10月~12月の第三四半期以降回復傾向にあります。実際、ロックダウンやそのあとの市民活動の制限に皆が「疲れた」感もあり、またそもそもコロナの影響が懸念される高齢者の割合が低いことも相まって、コロナを「気にしない」方向に全国が舵を切ったようです。町はもうすべてが通常通り動いています。唯一再開されていなかったセクターである学校も4月から再開が決まりました。感染者はまだ少なくない数が出ていますが町の雰囲気はもう「アフターコロナ」です。
私もまだ日印間を頻繁に移動していますが、日本に到着したら空港で陰性と判明してもまだ2週間の隔離が必要ですが、日本からインドに行っても陰性証明さえ提出すれば事実上隔離はなし、経済を回すという意味ではインドのほうが非常に助かっています。
政府からの具体的な支援や対策は乏しいものの、結果的に「気にしない」という方針で徐々に力強さを取り戻しつつあるところにインド経済の底堅さを感じました。
ワクチン接種もスタートしましたし、本年度の後半のインド経済にはようやく希望の光が見えてきたように思います。
まとめ
・インドの予算発表も大きな政策変更はなし。
・経済はようやく回復傾向の兆し、2月にワクチン接種もスタート。
【プロフィール】
野瀬 大樹(のせ ひろき) 公認会計士・税理士
大手監査法人勤務の後、NAC国際会計グループに参画、インドのニューデリーにて主に日系企業をサポートするコンサルティング会社NAC Nose India Pvt. Ltd.を設立し、同代表に就任。インド各地にて、会計・税務・給与計算に加え、各種管理業務に関わるコンサルティングサービスを提供している。
事務所HP:http://in.nacglobal.net/