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新型コロナより深刻?続くデリーの暴動

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bBearさんによる写真ACからの写真

インドでのコロナウィルス騒動の取り扱い

インドで日本企業の進出支援を行っている公認会計士の野瀬大樹です。

収まる気配のない今回の「コロナウィルス騒動」。インドに住んでいますと日本から「コロナウィルスはインドではどうですか」という質問をよく受けます。

少なくともこの原稿を書いている3月1日、日本ではかなりの混乱が報道されているようですが、インドでは患者数が3名と少ないこともあって混乱は生じていません。

もちろん私のように日本と頻繁に行き来する人間に対しては、たまにインド人から「お前は中国人か?」と町で質問を受けたり、またそもそもデリーの国際線イミグレ窓口では日本や中国・韓国からの渡航者のみ特別カウンターを通ったりする必要があり、サーモ検査や問診などを受けます。
ただ、そうであっても規制が「厳しい」というイメージはなく必要な手続きを踏めばさほど時間をかけず入国できる…そんなイメージです。

お世辞にも日本より防疫体制が充実しているとはいい難いインドにおいて、驚くほど感染者が少ないことに対して「そもそもほとんど検査をしていない」「平均寿命が日本より短く、重症化する老人は外を出歩かない」などの理由が現地では囁かれています。一部では、「今回のコロナウィルスは『何でも食べる中国人』だから生じたことで、ベジタリアンである我々は感染しない」などという少しオカルトに近いデマも存在しており、患者数が少ないからかまだ対岸の火事のニュースとして感じている人が多い印象です。

3か月たっても収まらない首都デリーの暴動

この「対岸の火事」としての受け止め方が多いのにはもう一つ原因があります。
インドではまだコロナウィルスによる死者はゼロですが、この3か月くらい続く暴動での死者は数十名に及び、実際の「目の前の危機」としてはこちらのほうが皆の関心が高いのです。

昨年12月にインドの国会で新しい法案が通り、パキスタンやバングラデシュからの難民に対して一定年数をインドで過ごすとインド国籍を付与する法案が可決されました。しかしこの対象となる難民からイスラム教徒は除外されるという条件付きであったため、インド国内のイスラム教徒から大きな不満や抗議活動が生じ、それが保守層であるヒンドゥー教徒との衝突に発展した次第です。

この宗教を原因とする対立は、3月に入っても収まらず首都デリーでは大学などを中心として大規模な抗議活動が継続的に続いています。一部小競り合いから暴動に発展するケースもあり、特にデリーの北東地域では小売店などが安全のために一部閉鎖に追い込まれているケースも散見されます。

現在のモディ政権はかなり保守的なヒンドゥー至上主義と言われる面が従来よりあったため、政権発足時よりたまっていたイスラム教徒の不満が今回の法案成立で爆発したとの見方があります。

景気低迷が続いておりその経済運営におけるマイナスイメージを払拭したいモディ政権が、強固な支持層であるヒンドゥー至上主義者の手前この暴動に対して弱気にでるわけにもいかず、事態の収束にはまだまだ時間がかかりそうです。

まとめ

・インドではまだコロナウィルスは日本ほど大きな問題にはなっていない。
・移民法の改正により、ヒンドゥー教徒とイスラム教徒の対立が激化しており、首都デリーでは今でも抗議活動や暴動が起きている。

【プロフィール】
野瀬 大樹(のせ ひろき) 公認会計士・税理士

大手監査法人勤務の後、NAC国際会計グループに参画、インドのニューデリーにて主に日系企業をサポートするコンサルティング会社NAC Nose India Pvt. Ltd.を設立し、同代表に就任。インド各地にて、会計・税務・給与計算に加え、各種管理業務に関わるコンサルティングサービスを提供している。

事務所HP:http://in.nacglobal.net/

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