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第1章⑦海外取引における与信限度額の考え方

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今回は、与信設定の方法について、日米の違い等を交え解説します。

▼目次

国内と海外の与信環境の相違

与信設定の方法に国内取引先、海外取引先の差は本質的にはありません。与信金額の算出方法も国内のそれと同様になります。

気を付けなければいけないのは与信環境が国内と海外で違うということであり、そのことを踏まえた判断を行うようにすることでしょう。

<例>

・決済手段の違い:そもそも手形決済があるのか、現金払いのみなのか

・決済条件:与信期間の違い

・担保取引:担保取引が多いのか少ないのか

<ご参考:日米の与信環境の相違点>

日本 米国
資金調達手法 銀行に依存した間接金融 直接金融が多い
 決済期間 (ユーザンス) 通常90日から180日 通常30日から60日 (販金分離)
決済条件  (締日) 締日設定が一般的 (月末締切など) 出荷日(請求書発行日)起算が一般的
決済手段  (手形) 手形決済は減少するも未だ残る   (銀行取引停止処分あり) 期日現金払 (手形決済なし)
期日管理 手形の場合あまり重要でない とても重要
与信判断 相対的に安定性を重視 相対的にキャッシュフロー、 流動性を重視
担保 相対的に多い (不動産を重視) 相対的に少ない (動産担保(売掛金/在庫)中心)
個人保証 減少するも未だ残る きわめて少ない

適正与信額を考える際の重要なこと

適正与信額を考える際に最も重要になることは、取引先のバランスシートから読み取れるAsset conversion Cycle(ACC)に基づいた与信金額の判断になります。ACCとは取引先が原材料購入から製造、販売し売掛代金回収までに要する期間のことで、通常の取引ではこの期間を超える与信は行わないのが一般的となります。

売掛金期日管理の重要性

恒常的に入金遅延に目をつぶって取引を継続していると、同期間の信用を与えたものとみなされ契約違反を主張できなくなる可能性が高まります。厳格な債権の期日管理は当然のことながら、入金遅延が解消されない場合には、新たな出荷は差し控えるといった対応の検討を行った方が良いでしょう。

通常与信から一歩踏み込んだ与信管理とは

取引を継続していると、どんなに優良な企業であっても、業績の悪化に伴い決済条件の延長や、滞留がちな古い債権のリスケジューリングといった要請が行われることは十分に考えられます。

このような場合、まずは取引先の財務情報を確認し、担保の取付け等の対応策の検討をした方がよいでしょう。

その際には以下の3点について注意しましょう。※例:米国の場合

  1. 最も一般的な売掛金、商品在庫等の動産担保設定の際、米国では登記(UCC Filing)が必要になること。
  2. 不動産担保は土地・建物の換金性の低さから、通常の与信取引においてはなじみが薄い点。
  3. 個人保証の取付けもあまり例を見ない点。

担保を取る場合、換金性を常に考慮しながら担保価値の掛け目設定を行う等の工夫も行うと良いでしょう。

与信と取引先自己資本の関係

先述のACCの考え方に基づく適正与信額が、その取引先の自己資本の額の何%を占めているのかという視点も重要になります。企業の体力や抵抗力という観点では、キャッシュフローや自己資本を見ることが重要になるからです。仮に取引先の企業に問題が発生しても、キャッシュフローと、自己資本が充実していれば、すぐに企業の状態が急変する可能性は相対的に低くなると考えられます。

とはいえ、相手がいかに優良な取引先だったとしても、過度に取引が集中することはリスクになりますので、与信額に上限を設けることはやはり重要です。

まとめ

今回は与信設定のポイントについて学びました。Asset conversion Cycleという小難しい言葉が出てきましたが、与信管理業務の中で少しでも活用いただけると幸いです。海外与信管理レッスンの第1章は本記事が最後になりますが、第2章(貿易取引のチェックポイント)や専門家コーナーも是非ご参考ください。

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