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1年2年での転職は当たり前?インドの転職事情(公認会計士 野瀬大樹)

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弊社は人員を増やそうと今年の4月から採用活動を強化しています。具体的には従来の大手紹介会社を通して採用する方法ではなく、ローカルの人材募集サイトに弊社情報を掲載して募集をかけています。

結果…紹介会社さんの苦労がよく分かりました。自分で全てやると本当に大変です。このあたり人事の苦労はインドでよく聞く話ですので、少し特徴を取りまとめたいと思います。

▼目次

1年2年で転職は当たり前

お察しの通り途上国では転職は当たり前です。少しでもお給料や待遇の良い会社があればすぐに転職してしまいます。困ったことに「引き継ぎ」という文化がありませんので、ある日突然転職されて大変な事態になることが多いです。もちろん辞める場合は3か月前に通知するように雇用契約書に記載はしているのですが、それを守らない人が多いのも事実です。そのため、常に一つの仕事の担当を二人置いておいて、もし急にいなくなっても大丈夫な体制を築く必要があります。

強い昇給圧力

アンケートなどから分かる水準として転職なら20~25%程度、転職しなくても毎年15%程度の昇給を期待しているのが通常です。毎年1~2%程度の昇給しかない日本人駐在員と比べると天と地の差があるのですが、このあたりインフレの激しい国という印象があります。

ただ、すべての昇給圧力を飲む必要はなく、業績に応じてボーナスで対応する、不要な人材には断固として昇給しない(そうなると自然に辞めてくれる)などの対応が必要です。

給与以外の転職の理由

これは実際に私が採用面談の時に聞く話なのですが、給与以外ではどんな理由で転職をするのでしょうか?よくあるケースを以下に列挙しました。

・経験:とにかく経験を積んで次のステップに上がりたいので「一通り経験できた」と感じたら特にその会社に執着はない。キャリアのために「会社を利用する」という感覚が強い。

・休日:インドでは雇用契約書における休日の規定を曖昧にしている会社が多いので、大家族制のインドでは冠婚葬祭時にトラブルになりやすい。

・結婚:結婚適齢期が近付くとより条件の良い結婚がしたいので「誰でも知ってる有名企業」に形だけでも在籍したいという願望が働く。

転勤を極度に嫌がる

インドはまだまだ保守的な大家族制ですので、親と同居どころか親戚が同じアパートに住む傾向が強いです。そのように一族の結びつきが強いため基本的に転勤は拒否される傾向にあります。このあたりを踏まえ、長い目でみた人事採用戦略が必要になります。

上下関係は明確にしておく

これは私の失敗からなのですが、私はフレンドリーで楽しい事務所を作りたいと思ってスタッフともフランクに接していたのですが、どうも身分制度が色濃く残っているこの国ではその方法はマッチしないと最近痛感しています。採用したら初日から「俺がボスだ!」という態度で接したほうがよいでしょう。

私もインドで採用活動を続けて思い知ったのが「一喜一憂は不要」ということです。

いい人を採用しても半年でやめてしまうことがあるのと同様に、期待していない人が案外頑張ってくれることもありますので「悩み過ぎずかといって浮かれ過ぎず」が大切ですね。

 まとめ

 離職が多いインドでの採用戦略はとにかく難しい。理由は給与や家族の問題など多岐に及ぶ。特効薬はないので人は辞めることを前提として考え、そのための対処を用意しておくべき。

プロフィール

野瀬 大樹(のせ ひろき) 公認会計士・税理士

大手監査法人勤務の後、NAC国際会計グループに参画、インドのニューデリーにて主に日系企業をサポートするコンサルティング会社NAC Nose India Pvt. Ltd.を設立し、同代表に就任。インド各地にて、会計・税務・給与計算に加え、各種管理業務に関わるコンサルティングサービスを提供している。

事務所HP:http://in.nacglobal.net/

 

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