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仕事の間に見える「カースト」の問題(公認会計士 野瀬大樹)

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インドで商売をしていると必ずと言っていいほど日本人の方から聞かれる質問の一つが、「カーストって今でも本当にあるんですか?」というもの。「本当に毎日カレー食べてるんですか?」という質問と双璧の、この「インド質問あるある」なのですが、今回はそんなインドのカーストとビジネスについてお話したいと思います。

▼目次

カーストとは

結論から言いますとインドのカースト制度は「建前ではなくなったが、実際は厳然として存在する」というところでしょうか。

カーストとはインドの身分制度のことで、我々が学校や書籍で習った範囲ではバラモン、武士、商人、奴隷の4つに区分されているというぐらいの知識しかなかったのですが、実際はもっと細分化されており数千種類のカーストがあります。そして、このカーストごとに職業が設定されており、基本それらの人は親の代の仕事に就くことが多くなります。

たとえば、私のオフィスでは雑務をこなしてくれる秘書的存在のインド人を雇っているのですが、彼女は基本的に秘書業務しかやらず、来客時のお茶くみや机の上の雑巾がけなどは決してやってくれません。もし私がそんな指示を出したら、激怒して会社を辞めてしまうでしょう。「それはもっと身分の低い人のやることだ!」という具合です。

ですから、インドにおいては仕事の数だけ人を雇う必要があるのです。日本だと一人雇えば済むような仕事でも、秘書、ドライバー、お茶くみ、床掃除、トイレ掃除・・・といった形になるのです。インドの人件費は、日本から比べてみると確かにずっと安いのですが、トータルで考えると意外に賃料が安くならないのはそのあたりも原因の一つです。

私のような外国人はあまりカーストを気にすることはないのですが、インド人同士だと出身地の名前でカーストが分かるらしく、気をつけたいところです。実際に私も,従業員から「私は〇〇とは同じ席で働きたくない」と言われたことがあり、従業員同士のトラブルの種にもなりえます。

実際のビジネスへの影響

このカースト制度の実際のビジネスへの影響なのですが、私がいつも感じるのは「仕事の縦割りが酷い」という点です。前述のようにインドでは、カーストの影響で仕事が明確に細分化されているため、自分の担当している箇所以外の業務には全く関心がないというのが特徴です。

たとえば、日本であれば何か作業を行う時には、次工程の人のことを考えて、次工程の人がより仕事がしやすくなるようにするのが普通ですが、インドではそれは全くありません。自分の仕事が終われば自分の責任はそれで終わりである…というスタンスが通常です。私のようなコンサルティングの仕事をしていても、この傾向はかなり仕事のトラブルの種になる傾向がありますので、工程管理が大切な製造業であればなおのことです。

まとめ

・カースト制度はインドでいまだに実在。

・その影響で仕事の細分化・セクショナリズムの影響が大きいので、現地でのマネジ      

 メントにおいては注意が必要。

プロフィール

野瀬 大樹(のせ ひろき) 公認会計士・税理士

大手監査法人勤務の後、NAC国際会計グループに参画、インドのニューデリーにて主に日系企業をサポートするコンサルティング会社NAC Nose India Pvt. Ltd.を設立し、同代表に就任。インド各地にて、会計・税務・給与計算に加え、各種管理業務に関わるコンサルティングサービスを提供している。

事務所HP:http://in.nacglobal.net/

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