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英文契約書の構成(各論①準拠法)(弁護士 瀧澤渚)

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▼目次

はじめに

前回の記事では,典型的な英文契約書の条項を俯瞰的に列挙しました。そこで,本稿以降は,数回に分けて,いくつかの条項を取り上げ,それぞれ注意点等を見ていきたいと思います。

準拠法(Governing Law)

例:

Article● Governing Law

The provisions of this Agreement shall be governed by and construed in accordance with the laws of Japan.

この契約の条項は,日本の法律に準拠し,それに従って解釈される。

provision=条項

construed=解釈される

in accordance with=~に従って

※いずれも頻出用語なので,覚えておくと便利でしょう。

契約を締結すると,当事者は基本的にその内容に拘束されます。そのため,基本的には,契約は,契約書に記載された内容通りの効力を持つことになります。これだけをみると,どこの国の法律を準拠法とするかは,契約の内容にあまり影響がないように思えます。

しかし,法令の中には,強行法規といって,当事者の合意内容にかかわらず,そのルールが適用されるという効力を持つものがあります。つまり,契約書に強行法規違反の条項を定めても,その条項には効力がないことになるのです。

また,契約書は,必ずしも,あらゆるストーリー・あらゆる場面を想定して作られるものではありません。そのため,契約書に書かれていないことが起こった場合,どのように対処すべきかが問題となりますが,そのような場合でも,適用のある法令の規定が契約の内容を補充するものとして,適用される場合があります。

このように,適用される法律がどの国の法律になるかで,当該契約に基づく権利・義務の内容が変わってきます。

その意味で,準拠法がどこになるかは,当事者にとっては,重要な関心事なのです。

当事者が準拠法を契約書で定めておけば,裁判所はそれを尊重してくれるので,予測可能性を担保する意味でも,英文契約書ではこれを合意しておくことが一般的です。

上記に加え,売買契約の場合には,ウィーン売買条約(国際物品売買契約に関する国際連合条約)の適用についても考慮ができるとなおよいと考えられます。

同条約は,当事者が明示的に適用を排除しないと,自動的に適用がされてしまいます。そのため,ウィーン売買条約の適用を排除するか(全部・一部)を検討し,契約書上ケアをしておくことが必要です。

例:

No provision of the United Nations Convention on Contracts for the International Sale of Goods shall apply to this Agreement.

国際物品売買契約に関する国際連合条約のいかなる条項も,この契約には適用しないものとする。

なお,ウィーン売買条約の内容についてここでは触れませんが,概要は以下のJETROのウェブサイトに記載がありますので,そちらをご確認ください。

https://www.jetro.go.jp/world/qa/04A-010709.html

☆契約書英語レッスン☆

前回の「shall」と同様、「may」という単語も、英文契約書ではよく見られる単語です。

通常、「may」は「~してもよい」という意味や、「~かもしれない」といった意味で使われることが多いと思います。しかし、英文契約書においては、「may」は「~することができる」といったように権利があることを意味します。その意味で、「~be entitled to」という言葉でも置き換えることができます。逆に、普段私たちが「~することができる」という意味の単語として真っ先に思い浮かべるであろう「can」という単語は、「~することができる」という意味では、英文契約書においてはあまり使われません。

<プロフィール>

弁護士法人堂島法律事務所(東京事務所) 弁護士 瀧澤 渚氏

慶應義塾大学大学院法務研究科修了。2014年弁護士登録。外資法律事務所勤務の後、2016年より堂島法律事務所所属。企業法務・労務を中心に、英米法等の海外法務にも精通。

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