貿易取引において、決済条件は非常に重要です。決済条件は、取引先との力関係や慣行の違いなどにより、思い通りに進まない場合があります。
一度決済条件を決めてしまうと、後から変更することが難しいため注意が必要です。さまざまなリスクを回避するためにも、決済条件を設定する前にきちんと内容を把握しましょう。
ここでは、5分で分かる決済条件の仕組みと種類についてご紹介します。
▼目次
送金(前払送金・後払送金)
輸入者が銀行を通じて海外の輸出者に送金する場合、「前払送金」と「後払送金」の2つの方法があります。
前払送金とは、代金を受け取った後に商品を輸出する方法です。輸出者のリスクが少ない反面、輸入者にとってはきちんと商品が届くか分からないというデメリットがあります。
一方、後払送金とは、輸入者が商品を受け取った後に代金を支払う方法です。輸入者にとっては大きなメリットがありますが、輸出者にとっては代金が支払われる保証がないためリスクが高いと言えます。
送金による決済は、どちらかがリスクを負わなければならないため、信頼関係がきちんと築けている場合や決済の前に契約書を交わす必要があります。
L/C(信用状付荷為替手形取引)
貿易取引は取引先が海外にあるため、商品の引き渡しと代金の支払いとの間にタイムラグが生じます。そのリスクを回避する決済方法が「L/C(信用状付荷為替手形取引)」です。「L/C」とは「Letter of Credit」の略で「信用状」を意味し、輸入者の取引先銀行が輸出者に代金の支払いを確約する保証状です。L/Cにおいて輸出者は、荷為替手形を銀行に持ち込むことによって代金を回収します。
輸出者の場合信用状が付いている取引であれば、信用力が不明な取引先の場合でも代金回収のリスクを回避できるメリットがあります。
D/P ・D/A(信用状なし荷為替手形取引)
「D/P ・D/A(信用状なし荷為替手形取引)」とは、双方に信頼関係がある場合、信用状を必要としない決済条件です。
「D/P(手形支払書類渡し)」とは「Documents against Payment」の略で、荷為替手形を利用した決済条件の1つです。
D/Pでは、輸入者が取引銀行で船積書類を受け取る際に、荷為替手形の決済と引き換えに船積書類が渡されます。L/Cと比較して開設費用などがかからないメリットがありますが、商品を受け取る前に代金を支払うため輸入者にとってリスクが高いと言えます。
一方「D/A(手形引受書類渡し)」とは「Documents against Acceptance」の略で、輸入者が取引銀行に対し荷為替手形の支払いを引き受けることを条件に、銀行から輸入者へと船積書類が引き渡され、商品を受け取ることができる決済方法です。
後払いであるため、輸入者にとっては有利な決済条件です。また、万が一届いた商品が不良品だった場合でも、代金を支払っていないため有利に交渉を行うことができます。通常D/Aの場合、ユーザンス手形(期限付き手形)が使用されます。
L/C決済からD/A決済に変更する時の注意点は?
新規の貿易取引で利用されることが多いL/C取引。双方の信頼関係が深まることによって、D/A,D/Pなどの決済条件に移行される傾向があります。
ところが最近は、競合企業との比較条件として、取引先から条件変更を要求されるケースが増えています。
営業政策を優先するあまり、相手先が提示した条件に安易に譲歩してしまうことは、本来取れない与信リスクを取ることにつながりかねないため注意が必要です。
基本的には与信リスクが増大する変更のため、相手先の信用状態に応じた信用供与枠の設定と併せて、貿易保険を付保する等の対策をとることをお奨めします。
【ご参考:JETRO 貿易・投資相談Q&A】
「L/C決済からD/A決済に変更する際の留意点」
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おわりに
決済条件の種類によって、その特徴はさまざまです。決済条件によっては、自分がリスクを負わなければならない状況に陥る可能性もあるため、注意が必要です。貿易取引をする際は、事前に決済条件の仕組みや種類を確認しておきましょう。