インド在住公認会計士の野瀬です。
ここ半年ほど、在インド日系企業からのご相談内容で劇的に増えているのが従業員不正です。手口は多岐に及び、小口現金のごまかし程度のものから、数千ルピーの巨額の横領まで様々です。
今日はそんな「従業員不正」について典型的な例を挙げたいと思います。
▼目次
①立替経費のごまかし
(手口):「業務のために必要だった」とタクシー代、メトロカードへのチャージを請求し、会社からお金をだまし取る。
(対策):正直、申請書の内容を見て上長が判断するしかない。ただ、金額的には大したことない不正なので、サンプル基準で精査する事後対策で良いと考えられる。
②会社備品を盗む
(手口):会社のパソコンや携帯などの備品を盗むケース。最近だとUSBメモリを盗むケースなどが多い。金額的には大きな不正ではないがメモリは顧客情報や機密情報なども入っている可能性が高いので注意が必要。
(対策):固定資産はきちんと固定資産番号を付して、抜き打ちで実査する必要あり。
③在庫の横流し
(手口):在庫を中古業者などに売却してそのお金を受け取り、会社には「棚卸減耗」「不良品」などと報告して処理する。
(対策):定期的な実地棚卸の実施。廃棄や不良品処理は口頭ではなく、必ず書面による承認が必要な統制を作る。
④ベンダーとの癒着によるキックバック
(手口):ベンダーから不当に高い値段で商品や備品を購入し、キックバックを受け取る行為。インドでは正直かなり多い。
(対策):金額が大きなものは必ず相見積をとる。また汎用品の購入先は定期的に変更する。
⑤売上金の横領
(手口):営業が売上金を現金で回収した際これを横領する行為。日本では売上金は期限内に満額振り込まれるケースがほとんどなので、未回収の売掛金が生じるとすぐに調査をするのだが、インドでは入金の意図的な遅れや支払い拒否などが多いため、未回収の売掛金が生じてもそれが横領から来るものなのか、顧客の支払い拒否なのかがすぐにはわからないこととが多い。
(対策):年齢調べや、回転期間による売上債権の管理は毎月行うべき。また可能であれば債権債務残高の確認を定期的に電話ででも行うべき。
債権管理となると途上国では「回収」ばかりに目がいってしまうのですが、従業員不正を防ぐという意味でも債権管理は重要ですのでご留意ください。
まとめ
・途上国で多い「従業員不正」を防ぐ意味でも、適切な債権管理は重要。
・年齢調べ、回転期間分析は四半期毎には実施するべき。
【プロフィール】
野瀬 大樹(のせ ひろき) 公認会計士・税理士
大手監査法人勤務の後、NAC国際会計グループに参画、インドのニューデリーにて主に日系企業をサポートするコンサルティング会社NAC Nose India Pvt. Ltd.を設立し、同代表に就任。インド各地にて、会計・税務・給与計算に加え、各種管理業務に関わるコンサルティングサービスを提供している。
事務所HP:http://in.nacglobal.net/